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第三十九話

 屋上で独特の緊張が走り、やがり気になるのは、ムカイが左に手にした木の棒だった。


 最初は木刀にも見えて『二刀流か』と思いもしたが、


 ゆっくりと…。


 「コレを使うのも、久しぶりで…」


 「手製の鞘か…」 


 東方術には鞘はない、だが、その刀は見事に納められ、少しムカイは自慢げに話す。


 「年代モノでさ…。


 本身なかみは旧世紀にどっかいったらしいのでやすが、試しにやってみたらこの通りなんで…」


 納刀した刀を、自分の帯に差して一歩下がる。


 それは身構えたのだ。


 「居合い抜き、か?」


 その時、私は出来る限り、情報を集めていた。


 相手との距離、体格、武器の種類、長さ、それだけを知るだけでも私は間合いを計る事が出来るが…。


 自分の身体が両断される錯覚に襲われ、一歩下がった。


 「さすがにわかりますかい?


 時代錯誤の技でも、バカに出来やせんぜ?」


 その瞬間、まるで素振りをするようにムカイは軽く居合い抜きを披露する。


 「ふっ、早いな…」


 私も居合い抜くような構えで、切りつけるような事はした事があるが、あちらは段違いだった。


 目視するのが、精一杯だった。


 こうなると私は経験から、弱点を探る事に徹する。


 戦闘回数から、日常生活、世間話から、


 ふざけてはいない。


 『刃物ぶき』を前に誰でもする思考だろう。


 そしてムカイは、あえて。


 私がそんな事を考えたのを読んだのか、


 もう一度の居合いには、上段。


 納刀は無く二撃目があった。


 「踏み込めますかい?」


 「見えないではないか、誰だ『居合い抜きは一発が勝負』と言ったヤツは?」


 これでさらに東方術者の付加能力があるのだから、私は不愉快にもなる。


 「そういえば古風な着流しでその居合い抜きを見て思い出したが、そんな殺し屋がいたな…。


 何も『無』い着流しの背を見るものは、死の世『界』。


 それを略し…」


 警戒しながらゆっくりと移動して、残像ミラーを作る。


 「ただの昔話でさ…」 


 『無界』は、じっとりと間合いを詰めて来るのは、私の動作が気休めでしかないのを見抜いているからだろう。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?・・・・・・・・・・・・・・・。


 だが『来る』と思えたのは素振りを見せたのが、幸いだった。


 受け止め、反撃…。


 出来ない。


 上段の切り付けが私の攻撃より早いので、受け止め、つばぜり合う。


 「離れれませんぜ…」


 後にして思えば、アドバイスだろう。


 「ぬっ!!」


 ムカイは組み合う事で、私で居合い抜きの型を完成させていた。


 この状態でも、私の反撃は、ムカイより後になるのがわかった。


 「噂のレフィーユさんも、大した事はありやせんね?」


 「何?」


 「かつてあっしにも、正義の味方を見た事がありやす…」


 「……」


 「あっしは悪党です、レフィーユさん。


 それを踏まえた上で聞きやすが、アンタ、もしあっしに困った事があったら、協力してくれやすか?


 あの人はね、何も言わず、協力してくれますよ。


 あんたに出来ますかい?」


 見え透いた挑発、だが、言葉の端々に本気で私を嫌う気持ちが見えた。


 「笑わせますねい、やっぱお嬢様なんでさ。


 もしかして、そんな甘い覚悟でアラバさんに協力しようして、今までを償えるなんて、バカな事を考えていたのですかい!?」


 押し込む力が、強くなってくる。


 「私にとって…。


 今回の事がどれほど屈辱だとわかっているのか?」


 私も同じだった。


 「あの男は、何度、悪者にさせたと思っている…」


 この町に来て、最初の騒動を思い出し、さらに力が入る。


 「確かにアラバは、正義の味方だ。


 だが、私が出来た事は、何だった?


 何がレフィーユ・アルマフィだ!!」

 

 屈辱と自分の無力さが、私に押し返す力を与えていた。


 「今もそうだ、あの男が苦しんでいるのもわかるのに、何もしてやれん女の屈辱がお前に、わかるか!!」


 戦略も無かった、ただ渾身、感情任せに思い切り振るうサーベルは、


 空を切った。


 相手は私より力量ちからが上だったのもあるが、当然の結果だった。


 振り切った体勢の私の首筋に『ピタリ』と刃物が当たり、『負け』を知らされていた。


 「口だけなら、どうでも言えるんでさ。


 でも、残念ながら、あっしの勝ちでさ」


 これ以上、ムカイは何も言わなかった。


 しばらく小休止したのを見て、


 「あっしの願い、聞いてくれますかい?」


 そして次の日、ムカイは取調べ室に呼ばれた。


 アラバの携帯での最後に会話した者として…。

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