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第三十三話

 「やはり、こうなりますか、こんな予感はしていたが…」


 目を見開いて、オルナの目の前に何本も闇の柱が立ち並ぶ。


 しかし、それを苦にする事無く、オルナは走りながら拳で打ち抜いて進んでくる。


 「こんなので、止まるかぁ!!」


 打ち砕いた柱で彼女の視界を塞ぐのが、本来の狙いだったのに気付いていなく、


 「ですが、視界が狭まれば、人間、動物は速度を落とすように出来ているのですよ」


 あっさりと攻撃を合わされる。


 腹部を狙った膝打ちが、彼女の身体をくるりと宙を舞う。


 「止めろ、オルナ!!」


 「今まで!!」


 『止めろ』という単語には、自分も含まれているであろうが、レフィーユの静止に口を挟む。


 「私はたくさんの復讐心を抱く人間を見てきました」


 球体を飛ばし、オルナの首を掴み立ち上がらせた。


 「自分の力では復讐を果たせないと、殺し屋を雇われた事もありました。


 私を殺すためには、魔力増強剤の薬物を使ってまで、西方術の暴走で消し炭になった人もいました」


 オルナの背後に少女は立っていたおかげで、思わず操る手に力が入る。


 「ぐぐ…」


 その様がオルナにも、伝わり彼女は苦しそうな声を上げた。


 「そんな人から見たら、貴女の復讐心は子供だましにすぎませんよ」


 宙に浮き苦しむオルナを、少女は見ていた。


 「ビルの上で、黒い人影を見たから?」


 「くぅ…」


 「私の活動し始めた時期が前後してましたから?」


 そして、オルナにも見えたのだろうか…。


 「それだけで私を犯人に仕立て上げられたら、たまったモノじゃありませんよ」


 横目で見たのは一瞬だったが、


 「ぐううう!!」


 球体を引き裂いて振り解き、倒れ込みながらも呼吸を整える。


 「じゃあ、何でだ…。


 何でお前は私の前に現れなかった!?」 


 当然の問いかけが返って来た。


 「確かにお前には、この事件は関係なかったかも知れない。


 でもな、潔白なら…。


 潔白ならこそ、どうして私の前に現れなかった!!


 魔法使いは、偽者、利用する者を許さないのだろう?


 でも、お前は現れなかった…」


 ようやく軽い酸欠から、解放されたオルナはうつぶせたまま吐き捨てた。


 「関係があるからだろう!!


 関係があるから、私の前に現れなかった!!」


 そして、そんな彼女に自分が言えたのは。


 「そんな事件があったなんて、知らなかったのですよ」  


 滑稽な一言だった。


 おかげでレフィーユの視線が突き刺さる。


 「馬鹿な…」


 だが、オルナには衝撃的だったらしく、傍線として自分を見ていた。


 「ふん、あまりにもローカル過ぎたのね」


 セルフィは冷徹にそう介錯し、レフィーユは頷く。


 「ありえない話ではない。


 当人には、忘れられない『事件』であっても、他の地域が違ってしまえばの人間にとっては所詮、他人事だ」


 「ふざけるな!!」


 「オルナ、お前とて今までの人生の中で起きた事件を、全て覚えているワケではないだろう?」


 少し強い口調で、オルナを問い正すので、彼女は一旦止まるが、感情のままに彼女は叫んだ。


 「お前は、こんな戯言を信じるのかよ!?」


 「信じられる訳がないだろう!!」


 自分にも言われた気がした。


 「ちょっと、二人とも落ち着いて…」


 呆れも入ったセルフィの制止で、先に落ち着きを取り戻したのはレフィーユの方だった。


 「魔法使い、『関係がない』と言ったな?


 では、捜査に協力をしてもらえないだろうか?」


 「レフィーユ!!」


 オルナは驚くが、彼女の狙いをなぞる。


 「今は、無駄な敵を増やすより。


 目の前の事件を解決させた方が良い、という事ですか?」


 「そうした方が今は、得策だとは思わんか?」


 「『今は』ですか…。


 生憎、私は後ろから刺される味方は持たない主義でしてね」


 再び睨みつけられた。


 「珍しいわね…」


 口を挟むのは妹の方である。


 「自分の潔白を証明させるためには、たとえ敵であろうと協力する人だと思ってたのだけど?」


 「それも時と場合によりますよ。


 確かに今のレフィーユさんの提案は、こちらとしてもありがたいですよ」


 「だったら、断る必要もないわよね?」


 「ですが、完全に『敵』と認識されてる人が入っている陣営に入り込んでまで、協力しようとは思わないだけですよ」


 「ふっ、今まで、変わりない環境だとは思うがな?」


 そんなレフィーユの言い方に、


 「それもそうでしたね」


 おどけて見せ。


 「ですが…」


 ゆっくりとオルナを見て、距離を取った。


 「こうなると、どうなりますかね?」


 「おい!?」


 今度こそ、身構えた自分を止めに間に入るレフィーユに言った。


 「貴女は、どう解釈しますか?」


 左の軽いジャブ放ち、ボクシングの構えで、オルナを見る。


 「邪魔をするなよ…」


 それが挑発に取れたのか、オルナも同じく構えた。


 セルフィも止めに入るが、姉に止められ、様子を見る。


 「もっと早く、こうするべきだったんだ」


 ステップを踏み、オルナはジャブを放つ。


 十分に距離を取っていたので、それは届かない。


 「逃げなくて良いのか?」


 その代わり、挑発を届ける。


 そて、自分をジャブを放って、


 「貴女の方こそ、脱がなくて良いのですか?」


 それはおそらく、ここが会場か何かだったら、ゴングが鳴っていただろう。


 『カーン』


 少女が、どこから持ってきたのか、ゴングを鳴らす。


 「貴女が鳴らしますか…」


 「でええぇ!!」


 間髪いれず、オルナは懐に潜む。


 「何ぃ!!」


 しかし、そのまま体当たりを体をぶつけてそれを防ぐ、自分の姿にオルナは驚く。


 それもそうだろう、コレは純粋に。


 「ボクシング、貴女しか知らないと思わないでください」


 逆に腹部を狙って拳がオルナに命中する。


 悶絶するより、攻撃出来るのは場数がそうさせたのだろう。


 それで距離を取り、彼女は距離を詰めるのをやめない。


 単純な戦法だが、有利そうに見えて、不利なのは自分の方だった。


 攻撃を放つ、すると彼女の身体から想像できないほどの重量感が拳から伝わってくる。


 「厄介な能力ですね…」


 防御に体重のコントロールにまわしているのだ。


 自分の攻撃はほぼ効いていない感じすらしていた。


 「熟練度は、貴女の方が上のようですね…」


 賞賛をする。


 しかし、そのわりに完璧な右ストレートを避けられてしまうのだから、


 「なめるなぁ!!」

 

 オルナは苛立つ。


 もう一度、今度はアッパー。


 「来ましたか…」


 それも避け、そこから攻撃が荒くなったのが合図だった。


 「くそっ!!」


 今までの事があったからか、頭痛は強かったのだろう。


 「ジーナ…」


 かすむ目が少女を捉えたのか、彼女は倒れ気絶した。

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