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第三十一話

 「ここは歓楽区でしたね…」


 「そうだな?」


 「忘れてましたよ、当然、治安が悪いワケですよね。


 当然、こんな雰囲気の悪いところを歩けば、いますよね?」


 見ると、そこには人相の悪い三人に囲まれてしまっていた。


 「なあ、兄ちゃん、俺たち、お金ないんだわ、貸してくれないかな?」


 「あの…」


 「はっ、何!?」


 何かを言おうとすれば、突然、話を被せて脅す常勝パターンで主導権を握ったつもりなのだろうか、


 「情けないわね…」


 「何か言い返せよ」


 女性陣営が騒がしくなるが、まず無理な話である。


 後方の一人が武器を作り上げて、刃物の部分で太陽を光をワザと反射させて目に入れようとさせるので、無理な話だった。


 時代が変われば、犯罪も変わるというのはよく言えたモノだと思う。


 「今、向かっている、もう少し粘ってくれ」


 レフィーユのそんな通信もあるのも知ってか知らずか、胸倉を掴んでいた。


 「ねえ、兄ちゃん。


 俺たち、漆黒の魔導士の友達でもあるんだ。


 素直にお金、貸してほしいんだ。


 聞いてる、ね、ね?」


 明らかに『はったり』である事は、自分だからわかった。


 「……」 


 が、それは自分の視線が後ろを指すには十分な力だった。


 「あん?」


 彼女はただ呟く。


 『漆黒の魔導士は、自分を利用するモノは許さない』



 ただ、この男の振り向いた動作の中の『少女』は自分を見ていた。



 「あまりにもタイミングが良いとは思うのですがね?」


 自分のその問いは『彼女』に向けてではあるが、それは誰にもわからなかった。


 「う、うわあああ」


 後方の一人が、地面から伸びた黒い蔦に足を取られていた。


 「お、おい、何だ、ありゃ!!」


 助けようとしたのか引き剥がしに掛かるが、巻き込まれてしまう。


 「アラバ、何が起きている!?」


 「レフィーユさん、彼が現れたのですよ」


 「魔法使いか!?」


 オルナの答えを待たず、


 「待て、アラバ!!」


 レフィーユの静止も無視して、三人を引きずり始めた『闇』の蔦を追いかけていた。


 そして、女性陣の三人が空きビルの入り口付近に駆け寄った頃だった。


 「ちょっと、しっかりしなさい!!」


 解放されて腰を抜かした男にセルフィは話しかけていた。


 「アレは、どこ?」


 「ア、アンタらは?」


 「治安部だ、状況を説明して欲しい」


 「そんな事をしている暇があるか、さっさと行くぞ?」


 「オルナ、待て…」


 「何で待つ必要があるんだよ!!」


 「この男は、ワザと解放された」


 「だったら、望むところじゃないか?」


 「こういう時こそ、冷静に事を運べ!!」


 レフィーユは状況を整理するために、オルナを怒鳴りつけ男から状況を聞いた。


 「お前達の残りはどうした?」


 「わからねえ、オレは柱に引っかかって…」


 「もう一人、学生がいただろう?」


 「あ、あいつは、この中、追いかけて行った…」


 男のしどろもどろな説明に、オルナはさらに苛立つが、セルフィがハルバートを作り出したのを見た。


 「何をやっているんだ?」


 「追いかけるのに、決まっているでしょう?」


 「危険だ!!」


 「ふん、提案したのは私よ。


 一応、『全力を持って助ける』と約束したのだから、救出に向かうのは治安部の人間として、当たり前でしょう」


 「だからって…、レフィーユ、お前からも何とか言ってやれよ」


 「セルフィ、自分の身は自分で守れるな?」


 そんな事を言う、姉としての態度にオルナの苛立ちは頂点に達していたのか、彼女は先頭を突き進む。


 その際に、二人目、三人目と襲われたであろう男を目撃するたびに、レフィーユは警戒を強めるが、やはり誘い込まれている感じが拭え切れなかった。


 だが、構わずオルナは突き進むので、それは止めようもなく。


 「おや、団体様のご到着でしょうか?」


 歪んだ声のアラバのもう一つの姿に、さらに警戒を強めていた。

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