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第三十話

 人間か、魔神か?


 人類初の『闇』の西方術者の出現と言う、衝撃的な話題ニュースは、テレビや新聞の、その一面トップを飾った。


 人々から『漆黒の魔導士』と呼ばれ、恐れられている西方術者とは一体何者か?


 苗木町、その奥地に『漆黒の魔導士』は存在した!!


 「そして、我ら探検隊は漆黒の魔導士に出会うべく、苗木町の市内奥地に挑むのでありました」


 「ちょっと、何、このナレーション、真面目にやりなさいよ」


 アラバは通信機越しに、私の妹、セルフィに怒られていた。


 「ですけどセルフィさん、茶番にも程がありますよ?」


 だが、この男は怒られているというのに、この態度なのも無理も無い。


 セルフィは何を彼にさせようとしているのか、私から説明を事にしよう。


 この男は、良く漆黒の魔導士に出会う事がある。


 …まあ、実際は彼が魔法使いなのだから、その話は無理があるのだが『出会う』という表現を使う事によって、私たちに度々、情報提供をしてくれる事がある。


 セルフィはそれを利用して、魔法使いをおびき出そうとしているのだった。


 「セルフィ、さすがに無理があると思わないか?」


 実際、私たち三人は、アラバを魔法使いが現れそうな場所にあえて歩かせ、それを後方から見守っていたが、これは正論だろう。


 「ふん、私だって単純にこんな事をしているワケじゃないわ。


 アイツが、この人に良く接触を図るのは、単純に姉さんの知り合いだからという理由だけじゃない事くらい、姉さんは知っているでしょう?」


 オルナが食いつこうとするが、そこは制しながら、その問いに答える。


 「無害さか?」


 「そうよ、私達は戦闘能力があるから、アイツは敬遠するけど、アンタにはその戦闘能力は無いから、アイツは接触して来るのよ」


 自信満々にセルフィが答えると、さすがにアラバは振り向いて言う。


 「それって、身を守る術がないと言う事では?


 私にしても、結構、あの人を前に現れたら、ビビッてるのですがね…」


 アラバは自分自身の事をまるで二人称のように言うのは、どんな気持ちなのだろうと思いもした。


 だが、そうやって自然な態度で話す事で自分から魔法使いとの接点を遠ざけるのは、毎度の事ながら見事な対応である。


 おかげでセルフィも遠くからではあるが、


 「でも、この町にアイツがいるという事は、少なくともアンタに接触を図るかもしれない可能性は排除しきれないわ。


 心配する必要はないわ。


 出会ったらアンタは、その通信機を地面に置いて離れて、逃げて良いのよ…」


 アラバを励ましていた。


 「セルフィさん…」


 「治安部じゃないアンタを囮のみたいに使う事になるけど、もし、襲い掛かられたりしたら、私たちは全力を持って阻止する事は約束するわよ」


 「……」


 意外と真剣なセルフィに、アラバは静かになり。


 「ですがやっぱりコレ、茶番ですよ?」


 やっぱり、この心境は拭え切れてなかった。


 「うるさいわね、大体、さっきのナレーション、姉さんはバラエティ番組は嫌いなのを知ってるでしょう?」


 ここでセルフィは、意外な事を言ってくれる。


 「私はお笑いや、バラエティ番組は見る方だぞ?」


 「えっ、そうなの。


 でも、ドラマとか見ないし、前にバラエティの特番とかあったけど、チャンネル変えてたじゃない」


 「ふっ、そんなに驚く事か?


 私は確かにドラマは現実と照らし合わせてしまうから嫌いだが、バラエティに限ってはスペシャル特番だけが嫌いなだけだぞ?」


 「それはまた、随分と偏食な嫌い方ですね?」 


 「ワケもある、昔『女学生の今をせきららに語る』という特番があってな。


 素人の現役女学生が、大人の芸能人たちに向かって自分達の流行を話して理解を求め、大人たちはそれに反発するのを笑いにするという番組だったのだがな…。


 その中に、一人とんでもない格好をした、女子高生がいたんだ」


 「とんでもない格好というのは?」


 「同姓である私たちが『喜んで避けるような服装』を『ファッション』と呼ぶ女といえば想像できるか?


 体格も大柄で、当時の流行で顔を黒く塗りつぶしていたから、あまりにも特徴的過ぎて、私も字幕で表示されている名前、まあ、匿名のための『あだ名』も覚えてしまったんだ」


 「そういえば、レフィーユさん、出会った人間の顔は基本的に覚えてますね?」


 「ふん、職業病ね」


 「確かに職業病と言えば、格好は付くかもしれん。


 だが、そのクセもその時ばかりは悪い方に向いた」


 「悪い方?」


 「その数ヵ月後だ、市内の大型ビジョンやら、映画館で近くで良くPVを流す事があるだろう?


 そこに彼女がいたんだ。


 驚いた私の心境を尻目に、多数の出演者の中に『あだ名』付きで、映画だから言わせてもらうが、爆死していたよ」


 「うわあ、それは衝撃的ですね」


 「確かに衝撃的だった。


 私は帰ってすぐ衝動的に、その女を調べて見るほどだからな。


 そして、彼女は二十歳を超えていた事がわかった。


 普通、数ヶ月の内に二十歳を超えるという事はありえない。


 という事は、その番組は『やらせ』という事になる。


 あれ以来、その手の番組は信用出来なくなった」


 「でも、アレは素人だけだとやはり進行に問題あるから『その解消』を狙いとしてやっているわけであって、


そこで『笑い』は確かに起きているワケですから、お笑い番組として対して違いはないとは思うのですが?」


 「いや、全く持って別なものだ。


 芸人のやるお笑い番組というのは、年々禁止事項が増えていて、限られたルールの中で『笑い』をとらなければならないという、ある意味、手腕が問われる行為だ。


 あれは素人に混ざった芸能人が話を進めるためとは言え、笑いを取って、『キミ、面白いね』と芸能人が芸能人を褒める場面を実際に見てみろ、痛々しいにもほどがある」


 「姉さんが、熱く語ってるわ…」


 「普通の人は、素人を調べようとは思いませんよね」


 そう言うアラバを遠くから見ていると、


 「ですが…」


 少し足を止めていた。


 「前にレフィーユさん、一緒にお笑い番組を見ていた事があったでしょう。


 正直に言いますと、レフィーユさんが私に合わせているのかと思ってましたが、それを聞いて安心しましたよ」


 つい笑ってしまうのは、失礼だろうか?


 当ても無く何となく歩き始める、この男を見る目が軟らかくなるのを自分でもわかった。


 「まあ、妹の茶番ではあるが、魔法使いをおびき寄せる演習だと思って付き合ってもらえんだろうか?」


 「付き合いますよ、何事もやらなければ、何も得られませんからね」


 するとオルナが呆れ気味に言って来た。


 「頼むから真面目にやってくれよ…」


 その時だった。


 「セルフィさん、不味い事になりました…」


 アラバは少し振り返りそうになり、先ほどの位置に視線を戻すので、それがかえって『不味い事』という真実味を伝えていた。


 「もしかして、ホントに見つかった?」


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