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第二十九話

 「でも、治安部なんて入るもんじゃない、危険過ぎる」


 「ふん、心配してくれるのはありがたいけど、その必要はないわ。


 誰かさんが叩き上げてくれたお陰で、周りの人は優秀だし、何とかやっているわ」


 そう言って『誰かさん』を、肩を竦めて見ていると、


 「ふっ、天才のお褒めに預かり光栄だ」


 ワザと気どった態度で、姉は妹に微笑み返していた。


 だが、


 「そういう問題じゃない、お前達の地域には、あの魔導士がいるんだぞ!!」


 オルナの一喝が、ゲームセンター全体に響いていた。


 「どういう事よ?」


 「実はオルナさんの個人的な事情ですから伏せていたのですが…」


 店員が『何事か?』とやって来る頃、セルフィにオルナの事情を話し終えたが、彼女は不思議と落ち着いていた。


 「…妹さんがね、気持ちはわからないでもないけど、それは少し、おかしいわね」


 セルフィの態度が、物凄く落ち着いていたので、クールダウンしたのかオルナは聞くだけだった。


 「なんだよ…」


 「漆黒の魔導士は、子供には手を出さないのよ」


 するとオルナは半ば呆れ気味に、セルフィに言う。


 「そんな事は嘘に決まっている」


 「どうしてそんな事が言えるのよ?」


 「確かに資料だけだ。


 でも、私はアイツをテレビで子供であろうと、女であろうと手を上げているトコロは見ているから言っているんだ」


 「だが、そのルールは、きっちり守られている」


 レフィーユの一言は、オルナの嘲笑を吹き消して、セルフィは頷きながら言った。


 「そうね、さすがに姉さんもそこには気付いているようね。


 アレが子供に手を上げるのは『敵と見なされて』からよ。


 つまり相手に『敵』だと思われて、抵抗してるだけ、単純な敵意に抵抗してるだけにすぎないのよ」


 「でも、それは、どこまでを『子供』と線を引いているかによるかだ。


 二年前、ジーナは当時15歳。


 それだけで年齢は、判断する事は出来ないだろ」


 『わざわざ、貴方は何歳だと聞いているのか?』と聞いて来たトコロで、オルナは妹の事を思い出したのか憎悪が場を包む。


 おかげで空気がさらに重くなるが、セルフィはこう答える。


 「それに関しては、同情するわ。


 でも、こちらとしてはまだ、おかしな点があるのよ」


 「おかしな点?」


 「二年前、その頃はまだ魔法使いが、世間的にも名前が上がってない…」


 レフィーユのいう事にセルフィが頷くが、オルナは当然、納得出来るわけもない。


 「なんだよ、それ、まるで魔導士の犯行じゃない言い方をするんだな?」


 ただの悪態だったが、セルフィはそれに反応する。


 「そう思われても構わないわよ」


 「なに…」


 意外にもセルフィは、オルナに対して呆れていた。


 「でも、アンタ、そう頭ごなしに全部をアイツの所為にして、全て解決するとホントに思っているの?」


 「どういう事だ?」


 「別にアイツの事を擁護する気は無いけど、今まで私がアイツの関わった事件の多くは、一筋縄で解決するような問題じゃなかったりするのよ。


 だからこそ貴女に聞きたいのよ、本当に魔法使いの犯行なのかって?」


 年上だろうがセルフィは構わず睨み、オルナはそれに答えるように睨み返していた。


 「……」


 だが睨む事しか出来ないのだろう、何も言い返す事はなかった。


 そのオルナの顔を見て、セルフィは言った。


 「ふん、会って見るしかないわね」


 「会って見る?」


 「そのままの意味よ。


 魔法使いに会って、話を聞いてみるのよ」


 「どうやって?」


 そして、セルフィは、何故か自分を見ていた。


 「ここに良い、釣り道具があるのよ」



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