第二十八話
「メガネ掛けているから、誰に声を掛けられたのかわからなかったわ」
「一応の変装のつもりだ。
だが、ここは優勝、おめでとうと言っておく」
「ふん、別に大した事じゃないわ」
そう言いながら、セルフィは平静を装うが少し顔を赤く、レフィーユは事情を説明しているとやはり気になったのだろう。
「ゼジとは知り合いなのか?」
「ああ、あれ…」
するとセルフィはもういないゼジが去った後を見て。
「ゼジ・クリフトフでしょ。
私のいた機構の中では有名なのよ」
「ほう、ゼジもインテリジェンス出身なのか?」
レフィーユのこの質問にセルフィは、ため息をついた。
「『毎年、いつも試験を受けている』と言えばわかる?」
その一瞬、セルフィの言った意味がわからなかったが、
オルナ「あっ」
アラバ「ああ…」
二人が意味を理解する頃、気まずくなるのを避けようとして、
「どうしてお前達は、こういう時に私の意見を待つ?」
打ち合わせでもしているような動きを見せた。
「でも天才機構の試験を受けようするのも、さすがゼジだ」
「だが、その度に試験に落ちていたら格好はつかんだろう」
「それを努力で何とかしようとしているんだろ?
ゼジは心理学だけじゃなくて、武道でも昔、この地区の大会にも出てたし、努力家なんだぞ?」
「そういう問題じゃないわよ」
しかし、セルフィのため息は深くなっていた。
「セルフィ、あまり良く思っていないようだな?」
「言っては悪いけど、あの人は絶対に合格出来ないからよ」
「酷い言い様ですね。
だからこそ、受かろうと努力をするモノだと思うのですが?」
すると、レフィーユは言った。
「ふっ、インテリジェンスに努力は必要ない…か?」
「どういう事ですか、レフィーユさん?」
「説明するより、セルフィ、インテリに出るテストをこの男にやらせて見たらどうだ?」
「え、私がですか?」
「そうね、やらせた方が早いわね」
そう言って、先ほどの集合場所に集まり、3対1の席順で座っているとセルフィは携帯を突付いて言う。
「そんなに難しい問題じゃないわ。
でも、問題を用意する前に、一つルールを決めておくわね。
本来なら10分以内で結構な量の問題が出るけど、そんなに用意は出来ないから、一つ問題に対して10秒以内で答えて」
「なるほど、ですがどうして、そんな問題を用意出来るのですか?」
「テストの採点方法には、インテリの生徒がランダムで数名、選ばれるからだ。
セルフィも選ばれた事もあるらしい」
「レフィーユさんは、やった事があるような言い方ですね?」
「まあ、興味が沸くものだからな」
「それで、その結果は?」
「とりあえず受けてみたら、セルフィの言わんとする事が解るさ」
そう言っている間に、セルフィが用意出来たのらしく。
「準備は良い?
いくわよ…」
そして、セルフィは携帯を見せた。
そこには普通の野球のボールの絵が描かれており、
「ここに野球のボールがあります。
さて、このボールは今からどこに転がるでしょう?
転がっていく方向と、その根拠を述べよ。
なお、このボールは平面、地面に置かれているモノとします」
突然、ワケのわからない問題が出る。
「え…」
「空欄は埋める、とりあえず答えてみなさいよ」
「そ、そんな事を言われましても…」
「第二問…」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」
問答無用とばかりにセルフィは、次の画像を見せる。
今度は数字の『16』と描かれているだけで、また、セルフィは問題を言う。
「答えは16である。
どんな数式を使っても構わないので、この数字になるように数式を書け」
こんな問題が続いていき、ほぼ答えられないでいた。
「なさけないわね…」
アラバのあたふたとしている様を、セルフィはそう表していたが、他の視線は同情的なのは言うまでも無かった。
「何か最後に答えたのは、勢いでとりあえずって感じがしたな」
「だが、その反応は間違いでは無い。
こんな答えの無い問題ばかりが、インテリのテストなんだ」
「ふん、さらに実際には、この問題をやる前には簡単な国語と、数学ではない算数を一時間ずつやらされるわ。
それで採点者には、私たちがランダムで数名選ばれるというワケよ」
「でもどうして、採点するのに生徒が選ばれるのですか?」
するとセルフィは呆れていたので、
「ええと、姉さんも同じ様な事を言っていたと?」
「何でアンタ、私の思考が読めるのよ。
IQを数値化するだけなら、誰でも出来るという事よ。
人間は30ピースのパズルでも、一日一回、同じ作品のパズルをばらしては完成させる作業を続けるだけで、最終的には10分以内で作り上げる事が出来るような生き物なのよ。
つまり鍛え上げる事が出来るという事よ。
今や、IQを計るテストなんて、ネットで調べれば検索できるわ。
そこで鍛練された人間が、単純にテストを受ければ、高い数値をたたき出すのは当たり前じゃない。
でも、その行為で表された結果は、才能ではなく鍛練というモノよ」
「だから、インテリジェンスには、鍛練は必要ないという事ですか…」
だから、最初の二科目のテストを行う上で、その人間の考える思考の骨組みを見て、さっきの問題で素質を見ているワケよ」
「確か少ない言葉で、座標を正確に伝える能力ですか?」
「そうだ、セルフィの作った足場を短時間に仲間に伝え、戦術幅を大幅に広げるのは、セルフィ独特の能力と言っても過言ではない」
「ふん、それでも姉さんの指揮能力の高さには、足元には及ばないわよ。
話は戻すけど、採点方法、テスト内容、そんな事もネットで調べられる事でもあるのよ。
特にあのゼジは採点方法の対策を講じようとして、心理学を学んだそうじゃない。
そして、毎年、私や、インテリの人間に交流を持とうとするのはどういう事か、私の口から言うつもりは無いわ」




