第二十三話
レフィーユには妹がいる。
今、腕を握っているオルナにも妹がいた。
よく自分はレフィーユの妹を見ると、仕草なりに似ている箇所を垣間見る事があるが。
オルナの視線は、自分にある『物語』を思い出させるには十分だった。
物語には、いつも始まりがあるのだ…。
「ねえ、こんなトコロで何をしているの?」
振り向くと彼女は、そう自分に聞いて来て、自分はそっけなく答える。
「何もしてません。
ただ、景色を眺めていただけです。
貴女の方こそ何をしているのですか、ここは待ち合わせをするにしては不恰好ですよ?」
「キミも言えたモノじゃないでしょ?」
彼女は笑いながら、そう言い返した。
おかげで夕暮れ時のビルの屋上にて、気の晴れずにいた自分は、ようやく吹き出してしまう。
「ここ、見晴らしが良いからさ。
疲れた時とか私は気分転換にいつもここに来るんだけど、キミは同い年?
苗木町じゃ、見かけないよね?」
そう聞いて来るが、その質問に答えるのは抵抗があり、黙り込んでしまう。
「どうしたの?」
「そうですね、考え事をしながら、ここまで歩いて来ましたからね」
「考え事?」
「…数日前、両親を失いましてね。
どうして良いのか、わからなくて…」
彼女は自分に起きた不幸を、じっと聞いていた。
そして、自分の説明の中、白鳳学園の少し町外れにある自分の家から、こんなトコロまで来たのだから。
「山を迂回してきたの!?」
最短の交通手段が、電車しかないのを知っている彼女は驚くのも無理もない。
「正直、どうやってここまで来たのか覚えてないです」
息を吐くと、自分はぐったりと座り込んでしまっていた。
『ぐ~』
朝から何も食べてない身体の悲鳴も上がる。
「……」
脱力でもう声も出したくない状態の自分に、彼女は笑顔だった。
「待ってて、何か買って来てあげる」
そのまま出て行き、自分は取り残されたが、下界を眺めて探していると、彼女は手を振っていた。
それに笑顔になるが、それは自分を悲しくさせていた。
彼女には話なかった事が一つあったからだ。
両親を亡くし、この3日前の事。
自分の西方術が『闇』である事を知ったのだ。
『不幸な事』から起きた『特別な事』は自分を増長させる事を選ぶ事は無く、自分を路頭に迷わせていたのだ。
最初に相談すべく相手もいない状況は、自分を簡単に追い詰めていた…。
……。
「ところで、レフィーユさん…」
「どうした、アラバ?」
次の日、彼女と捜査の協力をする事になったのだが、少し気になる事があった。
「なんだよ?」
「…どうして、オルナさんがいるのですか?」
「私は誘ったつもりはないのだがな…」
「別に良いだろう、お前達がどういう調査をするのか見させてもらいたいだけだ」
するとオルナは、こうとも言う。
「白鳳学園のレフィーユはともかく、お前がヘキサグラムのメンバーだとは思いもしなかったからな。
これからの調査を見せてもらいたいだけだ」
「ふっ、なるほど確かに目立つほどではないが、元リーダー、ガトウを筆頭に、戦闘のイワト、サイト、運搬、通信係のキリウ、シリウ。
そしてアラバが加わったチームはいい働きをしてくれるからな」
「レフィーユさんのノリで、自分が加わっているだけじゃないですか?」
「謙虚な事だ。
お前が加わってるというのは、何かしらの能力があるからだろう。
捜査能力とか、何か秀でた能力が…」
「とんでもない」
オルナの言葉は、少しトゲがあるような言い方をするので、釘を刺すことにした。
「あれはペンタグラムであって、ヘキサグラムでなんですよ。
私はそんな集団の中にいるのだと、思えた事は一度もありませんよ」
遠まわしに『自分は魔法使いである』という意味を込めた言い方をしたのが、レフィーユにもわかったのか、
「素質は十分あると思うのだがな?」
ため息を一つして、自分に資料を手渡していた。




