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第二十話

 「了解しましたわ、お姉さま」


 通信を切り、歓楽区の入り口前に立つユカリは、先にある決戦に神経を尖らせていた。


 「ーこちら歓楽区反対側入り口、閉鎖完了」


 そんな通信がありもしたが、もう彼女には聞こえているのかはわからない。 


 その原因は決戦の相手、シュウジ・アラバにある。


 「あの授業での侮辱を倍にして返してあげますわ」


 彼女は嬉々として、未だ来ぬ宿敵を待ち構えるのには、言うまでも無くレフィーユ絡みである。


 彼女はレフィーユのFCにおいては二ケタを誇り、


 彼女を近くで見たいがために自らも寮で生活する事を選ぶほど熱狂的で、


 より近くにいたいがため、彼女と一緒にいたいがために自らを省みず治安部に入った。


 見方を変えれば少し怖さを感じるほど、レフィーユを崇拝する彼女である。


 が、ここまでで見られるレフィーユを思って発せられる彼女の行動力は、大したものだろう。


 しかし、その原動力を錆び付かせる…。


 言ってみれば『敵』がいたのである。


 シュウジ・アラバ。


 普段、ぼんやりとしているこの男、それが彼女の障害になるとは思いもしなかったのである。


 学園生活においては、ワケ隔てなく接する事が多いレフィーユだが、この男とは何かしらの縁があるのか、レフィーユはあの男に話しかけてくる事が多い。


 「私ですら、こんな事はないのに…」


 他にも一緒に昼食を取る事や、市内に出かける事も多々あるらしく。


 「私『達』ですら、お誘いを受けた事ないのに…」


 そして、二人が楽しく談笑する姿は、ユカリの前では見たことがなく、


 「キィィィー!!」


 それは彼女だけでなく、白鳳学園に住まう女生徒達の嫉妬の炎を燃え上がせていた。


 「掛かってきなさい、ぶっ〇してやる…」


 もうユカリは、女子といえる発言すらなく。


 主人公は、語る…。


 「誰が、そんな危険人物、相手に出来ますか!!」


 「お前は突然、何を言っとるんじゃ?」


 歓楽区へのわき道を、通りながら吠える主人公の気持ちをイワトは知らずに聞いて来たのだろうが、この時のイワトは、こっちが気がかりだったらしい。


 「じゃが、ホントにお前の作戦は大丈夫なんか?」


 「重要なのは閉鎖されている事にありますからね。


 向かって来ると相手だと思われているから、私達はあえて、歓楽区に潜入しておくのですよ。


 監視の目はいつまでも外に向いているわけですから、内側に視線が向く可能性は低いでしょう?」


 サイト達と別れた自分達は全力疾走のかいもあり、なんとか歓楽区に辿り着いていた。


 入り口付近にはもう警備が布かれ初めていたので、自分達はすぐさまわき道に入れたのはギリギリのタイミングといえるだろう。


 自販機の前で、ジュース片手に潤いを取ったイワトは言う。


 「でも、ワシらの本来の目的はどうするんよ?」


 「イワトさん、そんなに懲罰受けたいのですか?」   


 まだ、懲りてないのかという意味を込めて言うと、イワトは首を横に振っていたが。


 「どっちみち、同じ目にあうじゃろ、お前に考えがあるって言うんか?」


 「ですから、ここでたむろする事が大事なんですよ」


 「どういう事よ?」


 「私達は、自販機の前で休憩をしているワケです。


 そして今、その様子を通行人は見ているのですよ」


 「それがどしたんよ?」


 「私達には、こんな言い訳が出来るのですよ。


 『私達は、いざ歓楽区に入っていたが、どこの店にも寄らなかった』


 とね」


 イワトはそれで納得したのは、もうこれは先生達にも及び知るほどの騒ぎになっているのがわかっているからだろう。


 「それにこの騒ぎは、レフィーユさんにとっても、都合が良かった『意図』でもありますからね」


 「意図?」


 「実は…」


 ここで自分はレフィーユの行動の『意図』を、イワトに言うとさすがに驚いていた。


 「ホントかそれ?


 じゃあ、こういう事が、わかってたというと…。


 まさか、お前?」


 ちょうど目の前にはゲームセンターがあり、その中の様子を眺めていたが、それは否定した。


 「言っておきますけど、裏切ってはないですよ。


 ですが、何かしら騒ぎを起こすのが、私達『ヘキサグラム』なんですよ。


 私達、六人が一斉に外出。


 それを感じた彼女は、さぞこれを利用しない手はないと考えたのでしょうね」


 イワトは苦虫を噛み潰すような顔をするが、


 「レフィーユさんといい、ソレを見抜くお前も凄いのう」


 笑っていた。


 「まあ、ここにおればわからんじゃろ。


 幸い近くに、コンビニがある…んっ?」


 その時、イワトの携帯がなり響いた。


 「あっ、サイトからじゃ」


 次の瞬間『ゾッ』としたのは、自分である。


 「出たら…っ!!」


 慌てて止めるが、こういう場合、先に手で叩かないとイワトの行動は止めれないだろう。


 「お、切れた…」


 イワトが自分の顔を見たとき、自分が何かいけない事をしたのかと気まずくなる。


 「イワトさん、どうして携帯の電源を落としておかないのですか?」


 「何か、不味かったか?」


 「GPS探知ぎゃくたんち、多分、さっきのレフィーユさんですよ?」


 気まずさがさらに味わい深くなり、段々、人が少なくなるのは何かの前触れだろう。


 「イワトさん、あっち…」


 「お前、こっちか…」


 イワトが二手に分かれ、角を曲がった途端だった。


 「うおっ!!」


 驚いた彼と治安部の女子が、まずい事に目があってしまう。


 追いかけ始めたのをみたので、慌てて先ほどの自販機前で、アラバと別れた道を走る。


 まだ、アラバがいると思っていたのだろうが、彼の姿はどこにもなく。


 「お前も早いのう…」


 一台の車がイワトの横を通過する中、人ごみの混じりの何事もなかったかのような大通りを眺めていた。


 「見つけましたわ!!」


 そして、その方角からユカリが彼を指差して、こっちに向かってきた。


 イワトは彼との付き合いが長い所為か、何となく、


 「ホント、アイツ、早いのう!!」


 捕まってない事を感じ取っていた。


 だが、実際、早いというワケではない。


 「あれ、お前のトコロの治安部だろ?」


 車の中で、オルナは聞いて来た。


 「いえ、大した事はないのですが、助かりましたよ。


 貴女が、パトロール中でして…」


 逃げ込んだ先は、フォード学園の治安部車両の中だった。


 「一体、何をやったというのです?」


 イワトが逃げる様をゼジとオルナは見て、さすがに自分を不振そうに見ていた。

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