第一話
休憩時間、いつもの光景、その時に限って、私はユカリを含めた数名の女子と談笑をしていた。
「そういえば、レフィーユさん、昨日のドラマをご覧になりましたか?」
「すまないが、ユカリ。
どうも私はドラマを見ると、現実の事件や環境を照らし合わせてしまうクセがあってな。
あまりドラマを見ないようにしてるんだ」
「そうでしたの、ですが、恋愛モノですのでおすすめいたしますわ」
そういうと話は恋愛話になり、他の女子がこう言った。
「…そうそう、初恋と言えば私はお父さんだったかな。
『大きくなったら、私、お父さんのお嫁さんになる』って…。
今、思えば、恥ずかしい事、よく言ってたな~」
「ふっ、恋愛と家族に対する愛というのは、似てるらしいな。
恋愛の感情に気付くまで、恥ずかしい事ではないだろう。
私の身近だったら、セルフィもそうだったよ」
すると周囲に笑いが起こる。そんな中、ユカリが聞いて来た。
「レフィーユさんの初恋の相手は、誰なんです?」
そうユカリが私に聞いていたので、私はある相手を見つめて言った。
「決まっているだろう?」
華やかになる空気と、ユカリの殺気に似た感情を感じながら、その視線の先に。
シュウジ・アラバがいた。
この時、ユカリのように『どうしてこんな男が』と感じたモノもいるだろうが、彼にはもう一つの顔があった。
『漆黒の魔導士』
魔法が使えるようになって、世界で唯一の西方術『闇』の使いこなす男。
闇という性質のために、世間は誤解し、かつて私が追い込んだ過去もある男。
だが、全てを知った時、自分の中にある感情が何なのか知ってしまった。
周囲はユカリの感情の高ぶりを危険と感じたのか…。
「で、でさ、昨日…」
周囲の女子は話題を変える。
するとアラバも男子で集まって、何やら携帯のアプリで対戦をしていたようだが、そこで歓声が上がった。
「負けた…。
どうして、あそこで会心が…」
「アラバはん、コイツのラッキーを侮ったようやね」
サイトが勝ち誇っていたので、ついため息を付くのだが、
「敗者、アラバというワケで罰ゲームやな?」
「確か、初恋の相手を言うでしたか…」
自分でも、少し耳が動いたのを感じた。
「もしかして…」
サイトは私に視線を送るが、気付かぬフリをして、私はアラバの答えを待っていた。
私だと嬉しかったのだが…。
「ち、違いますよ」
アラバの答えに、テンションが下がる。
「レフィーユさん?」
周囲の女子には、男子達の会話が聞こえてないのだろう。
「えっ、え、誰なん?」
だが、徐々に、反するサイトの様にテンションが上がっていた。
全聴力がアラバの方向に向き、この時にはもう、私は周辺の女子の会話など聞こえてなどいなかった。
サイトの追求に期待していると…。
キンコ~ン♪
チャイムが鳴った。
「はい、チャイムがなりました。
この話は、ここで終わりです」
「ええ~、良いやろ、別に~」
「人様の初恋話なんて、脅迫のネタにしかならないのですよ」
上手い具合に、アラバは逃げていた。
しかし、今にして思えば、今回の物語はここから始まっていたのだろう。