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魔道具使いの物語  作者: b
~始まりの物語~
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13/33

第12話 分かりやすい男

総合評価が1000Ptを超えました!

ありがとうございます!

 許可証を貰える目途が立った湊たちはある場所を目指して歩いていた。


 ルナはどこに向かうのかわかったようで何も言わずについてきたが、巾着袋から顔を出していたナクは分からないらしい。近くに人がいない時を見計らって湊にだけ聞こえるように話しかけてきた。



「なぁご主人。わいたちはどこに向かってるんや? 後、あの少年て誰なん?」

「ん? お前も知ってると思うぞ。ロムカス君だ」

「誰や?」

「……お前がからかってた少年だよ」

「おお! あいつか!」



 ピコン! と頭の上にびっくりマークを浮かべて納得するナク。しかしすぐに疑問を浮かべた顔になった。



「でもご主人、いつの間にそのロムカスいうやつの家の住所知ったんや? ハッ、まさかストーキン──」

「雑巾のように絞るぞナクさん」

「サーセンしたッ!」



 一瞬で巾着袋の中に潜り込むナクにため息をつく。しばらくするとナクがひょっこり顔を出した。



「……怒ってへん?」

「変な事を言ったら怒るかもな」

「だいじょぶだいじょぶ、言わへん言わへん!」

「どうだかなあ……」



 調子のいい事を言うナクに苦笑しながら知っている理由を話す。



「昨日の依頼があったろ? その依頼をした人の息子がロムカス君だったんだよ」

「そうだったんか」

「まあ昨日、執事さんに参加した人の名簿を見せてもらった時に気づいたんだけどな。さてついたぞー」



 湊は立ち止まり、斜め上を見上げる。目の前には巨大な門が立っていた。



「見るのは二度目だが相変わらず高い門だな」

「……首が痛くなる」

「じゃ、わいは中で待ってるわ。出番になったら呼んでや」

「分かったよ」



 そう言って巾着袋の中に戻っていくナク。完全に中に入ったとき小さく、『あれ? わい起こされた意味ないような……』と呟いたが湊が袋の口を絞めてしまったのでその声は誰にも聞かれなかった。


 湊が門についていた呼び鈴を鳴らすと数秒もかからずあの執事が出てきた。



「どちらさま……おや、あなた方は昨日の。どうしましたかな?」

「いえ、実は……」



 ひとまず門の中に入れてもらい玄関前まで移動する。そして事情を話すと、執事は軽くうなずき「少々お待ちください」と言って中に戻ってしまった。


 待つことしばらく。玄関の方向から扉が開く音がしたので、新しい魔道具の設計図を考えていた湊と空を見てボーっとしていたルナがそちらを向くとそこには執事とロムカスが立っていた。



「おお、昨日ぶりだな」

「ええ、昨日ぶりですねミナトさん。要件は聞きましたよ、これから僕も学院に行くところだったですからね。ちょうどよかった」

「そうだったのか。じゃあ?」

「はい。大丈夫ですよ」



 そう言ってロムカスはいつの間にか玄関前に来ていた馬車に乗り込んだ。どうやらこれでいくようなので乗せてもらう。


 湊とルナが乗ったのを確認すると、ロムカスは運転手に声をかけ馬車を走り出させた。



「二人とも、馬車の乗り心地はどうですか?」

「ああ、大丈夫だ。あと無理して敬語使わなくていいぞ? 疲れるだろ」

「……もっと楽にしていい」

「いいんですか?」

「別にそんぐらいで怒ることはないから気にすんな。名前も呼び捨てでいい」

「そうで……、そうかい。そう言ってくれると僕も助かるよ、さっきのしゃべり方は疲れるのでね」



 ロムカスは首を竦めほっと息をつく。どことなく緊張していた空気も収まり、湊としても居心地が悪かったので助かっていた。


 しばらく馬車の窓から流れていく風景を見ていると、ふとロムカスが思い出したように「そういえば」と話しかけてきた。



「ミナトはどうして学院の図書室へ? 確かにあそこは多くの書物を貯蔵しているが君ほどの人物なら新しい知識なんて必要なさそうなものだけれど……」

「ちょっと作ってみたい魔道具があってな、俺のいた場所にあった資料だけじゃ作れなかったんだよ」



 ロムカスが納得した表情を見せ頷いていると、馬車の速度が落ち始めた。そろそろ到着するようだ。完全に馬車が止まるのを確認し、湊たちは馬車を降りる。


 降りた先にある校門には大きく『リカラーム国立魔法学院』と書かれてあり、校舎もどことなく風格がある。周りにはちらほらと他の生徒たちの姿もあって、その生徒たちはロムカスと一緒に出てきた湊たちが気になるのかチラチラとこちらを見ているように感じた。



「ようこそ我が母校へ、とでもいえばいいのかな。ここで少し待っていたまえ、すぐに許可証を貰って来よう」

「すまんな、ここまでしてもらって」

「いやいや僕は命を助けてもらったし、昨日のアレもミナトだったらしいじゃないか。これぐらいするのは当たり前だよ」



 そう言って校舎のほうへ向かっていくロムカスを見た後、湊は校門に背中を預け上を見上げる。ルナは変わらずボーっとした表情で湊の横につき同じように背中を預けた。


 すると急いで走ってくるような足音が聞こえたので、湊とルナがそちらを向くと、こちらに向かって走ってくる金髪の少女がいた。


 その少女は湊たちの前まで来ると話しかけてきた。



「ミナトさん! ルナさん! どうしたんですの、こんな場所で?」

「君は……確かバーニアさんだっけ?」

「ええ、そうですわ。先日は本当にお世話になりましたわ」



 そう言って頭を下げてくるバーニアに、笑いながら「気にするな」と声をかけるとバーニアも笑って「はい、分かりましたわ」と言ってこちらに顔を向けた。



「ところで先ほどの質問の続きなのですけれど……」

「ああ、それはな──」

「はぁ、はぁ、はぁ、バーニアちゃん、行くの早すぎるのですよ~、はぁ、はぁ……」



 理由を話そうとした時、バーニアの後ろから桜色の髪の毛をした少女が走ってきた。話しかけられたバーニアは少しばつの悪そうな顔をして頬を掻いていた。



「も、申し訳ありませんわミーユ。つい……」

「はぁ、はぁ……ふぅ~。それにしてもなんで急に走り出したりしたのです~? ……ん?」



 少し息を整え顔を上げる。そこでようやく湊たちに気づいたようで慌てて後ろを向き身だしなみを確認すると、湊たちに向き直る。



「コホンッ……。どうも初めまして、ミーユ・スカイウィングと申します。どうぞお見知りおきを」

「お、おう……、俺はミナト・サクライ。ミナトって呼んでくれ」

「……ルナ・メイハーツ」



 何事もなかったかのようにお嬢様然とした様子で自己紹介をしてくるミーユに面喰いながらも、湊たちも自己紹介を返す。ミーユのその姿にバーニアはため息をつきながら頭を振った。



「……ミーユ、もう手遅れですわよ?」

「バ、バーニアちゃん、そこは言わないでほしいのですよ~……」

「ま、まあ別に変に構えなくてもいいぞ? 俺はそういうの特に気にしないからな」

「……私も」



 湊とルナがそう言うとミーユは少し考えて笑顔を向けてきた。



「そういう事なら遠慮はしないのですよ~! よろしくです、ミナトさん、ルナさん!」

「ああ、よろしく」

「……よろしく」



 握手を交わした後ミーユはバーニアの方を向き、にやぁ……と笑みを浮かべる。その笑みにバーニアはビクッとなるが気にせずミーユは声をかけた。



「あの堅物バーニアちゃんにも春がきたということですかね~?」

「ミ、ミーユ!? 違いますわ、この方々は……!」

「分かってますですよ~、そんな照れなくても大丈夫です~……パロウ君は残念です~」

「ち、違っ……!」



 なにやらバーニアは顔を真っ赤にしてミーユに何か反論しているが、湊は何の話かいまいち分からなかったので頭の中で新しい魔道具をイメージするなどして暇をつぶしていた。


 と、そこでようやくロムカスが帰ってきた。



「いやぁ、申し訳ないね。思いのほか時間がかかってしまったよ……ってバーニアじゃないか!」



 ロムカスはバーニアの姿を見ると急にテンションが上がりだした。湊はそれを見て、「ああ、惚れてんのか」と呟いてしまった。それを聞いたロムカスは本当に驚いた様子で湊を見る。



「ど、どうして分かったんだい!?」

「いや、見りゃわかるというか……」



 ちなみにロムカスがバーニアの事が好きということは同じクラスの人間全員が周知の事実だったりする。嫌味を言ったりしているのも見ているが、バーニアがいなくなった後ロムカスが頭を抱えて「どうしてあんなことを言ってしまうんだ……」と嘆いていたのも見てしまっているので、バーニア以外はロムカスのことを純情少年として応援していたのだった。


 慌てているロムカスを宥めて本題に入る。



「落ち着け落ち着け。それで、許可証はとれたのか?」

「え、ええ許可証は僕名義で取ることが出来たよ。……僕は分かりやすいのか……?」

「よし、じゃあさっそく案内を……と思ったが、授業の時間は大丈夫なのか?」

「え? うわ、もうこんな時間じゃないか! す、済まないミナト、案内はできそうにないよ」

「大丈夫だ。後は俺らでやるさ」



 ロムカスはそう言うとすぐに走って校舎の方へ向かっていった。湊は未だに話をしている二人に声をかける。



「おーい、お二人さんも。時間、大丈夫か?」

「はい? ……もうこんな時間ですの!?」

「は、走らないと間に合わないですよバーニアちゃん!」

「ええ、行きますわよ! ミナトさんたちもまた後で!」



 二人も慌てて校舎に向かって走っていくその姿に苦笑しながら、湊はルナに声をかける。



「とりあえず許可証ももらったことだし、行きますかね」

「……わいもうしゃべっても大丈夫なん?」

「小さい声でならな」

「よっしゃー! やっと暇から解放されるで!」

「声がでかいわ!」

「あふん!」





「……いかないの?」



 ルナは呆れたように二人をみてそう呟いたのだった。



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