第0話 全ての始まり
初の連載、どうなることやら。
※7月6日少し修正
「さて、残りはこれを押してコレを起動させるだけである!」
そこは深い森の奥に佇む屋敷にある地下室のとある部屋の中。
地下ということを感じさせないほどの光り輝く照明に照らされているたくさんの機械が、異様な空気を醸し出している。
「苦節十数年……頑張った、よく頑張った吾輩!」
『エエ、よく頑張りましたネ、ご主人サマ。ワタシも感動で目から何か垂れ流してしまいそうデス』
その中で二人──実際には一人と一機だが──地面に両膝を着け、胸の前で握り拳を作って顔にはダラダラと涙を流すボロボロの白衣を着た老人と、キャタピラの下半身に執事服のようなスーツを着た赤いレンズが特徴的なロボットがいた。
老人はしばらくそうしていたと思いきや、急に立ち上がると右人差し指を高く掲げ、左手を腰に当てると高らかに笑い出した。
「ハァーッハッハッハ! 吾輩にかかればこんなもの、針に糸を通すことくらい簡単だったわ!」
『確かご主人サマ、裁縫は苦手じゃあありませんデシタ?』
首をかしげながら言ったロボットのその言葉に老人は高笑いを止め固まってしまう。
「……い、いや違うぞ? 本当は酒を一気飲みするくらい簡単だと──」
『前に一度、お酒を飲んでいるのを見ましたガ、確かその時──』
そういうとロボットは自分の腕をリモコンに変形させるとスイッチを押した。
ピッ
“苦い! もう二度と飲むかこんなもん!”
ピッ
『ト、仰られていましたガ……』
「う、うるさぁぁぁい!」
ロボットの容赦のない質問を老人は大声で遮った。
「なんじゃいなんじゃい、人がいい気になっているときに! というかいつの間に録音したんだそんなもん!」
『ご主人サマがお酒を飲む時に運んできたのはワタシだったじゃないデスカ。ト言うより、ソノ歳になるるまでお酒を飲んだ事、無かったんデスカ?』
「昔に飲んだらまずかったから、この歳になれば飲めるかなと思ったんじゃ!」
両手を振り上げながら怒る老人に、やれやれとでも言うように肩を竦めるロボット。その姿を見て老人はさらに怒りを募らせる。
「いいか、吾輩はなぁ──」
『ハイハイ、分かりましたカラ。デ、起動はいつ行うんデスカ?』
「おお、そうじゃった。よし、いまからでも始めるとしよう」
ロボットの言葉に我に返ったのか老人の顔は科学者のそれになる。ロボットはその切り替えの早さに呆れた目で見ていたものの、軽くため息をつくとすぐに老人の横に並んだ。
老人がキーボードを叩くと目の前に幾つものデータが表示され、それらすべてに“異常なし”の文字が書かれていた。
「最終点検も終了。では起動!」
『上手くいきますカネ?』
「当然じゃ! 吾輩を誰だと思っている! 稀代の天才、トマソン・メイハーツじゃぞ!」
エンターキーを押すと音を立てて動き出す機械。そして機械から出ているコードに繋がれていたのは円筒状のカプセルだった。
そのカプセルは大人が数人くらいは入れそうなほどの大きさで、中には刻まれた模様によって発動する魔法が変わる“魔法陣”と呼ばれるものが模様を辿るように光を放っていた。トマソンは順調に魔力が流れていることを確認するとニヤリと口角を上げる。
「その天才の吾輩が──」
魔法陣の光がだんだんと強くなってくる。
そして一度大きく閃光を放つと次第にゆっくりと光が収まってきた。
するとその光の中に少年と青年の間くらいの年齢であろう子供が一人、あぐらをかくように座って何かを取ろうとするように前に手を伸ばしたまま呆然としていた。
「──異世界人の召喚など手こずるわけがないだろう?」
『マァ、十数年かかりましたケドネ』
「うるさいわ!」
この三年後、異世界から来た少年は青年となりこの世界を巡る事になる。その時、青年は何を見るのか。
“魔道具使いの物語”始まり始まり──。




