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School Game  作者: @マイナスイオン
Fools Dance
3/3

深夜、噴水広場にて

 結局その日は何事もなかった。

 まあ強いていうなら、一葉のメールアドレスと電話番号を入手した。


 ぼくはその日の晩、なかなか寝付けなかった。

 さながら、遠足前日の小学生のように。

 明日の晩。

 具体的には明日の午後7時30分から、新入生と上級生の親睦を深めるためのパーティーが催される。

 ぼくはそれが楽しみで楽しみで目が冴えていたのである。

 この興奮を共有しようと思い一葉に電話をかけた。

 一葉は毎日10時には寝るほどの睡眠大好きっ子なので電話に出るかどうか心配だったのだが、なんとか電話に出てくれた。

 眠たそうな口調で。

 案の定、一葉は通話中に寝落ちしてしまったが。

 そして訪れる暇。

 ぼくは気分転換に寮を出た。











 昼間の暖かさとはうってかわって、外の冷たい空気がぼくを覆う。

 天気予報では明日は雨だそうだ。

 雨は嫌いだ。

 外へ出ると全身を叩き、家にいても一定のリズムで刻まれる雨音が虚無感を生み出す。

 雨はこの世界に恵沢をもたらすだろう。

 雨はこの乾いた大地を潤すだろう。

 だが、そんなことはぼくの知ったことじゃない。

 どんなに有益でもどんなに便利でも、嫌いなものを好きにはなれない。

 益虫であろうが虫は虫。それと同じだ。

 だからぼくは、好き嫌いを無くせと叱る父親が嫌いだった。


 月は薄雲に覆われてその輝きを弱まらせていた。

 まだ慣れない校内を、直感に任せて歩く。

 しばらく歩くと広場に出た。

 おそらく正門前のバルコニーだろう。

 バルコニーというか、もう中庭に近い広さだ。

 広場の中心には噴水がある。

 ぼくはふと気づく。

 バルコニーには、人がいた。

 体躯からして男だろう。

 男は手摺てすりに体をゆだね、月を眺めていた。

 薄く弱く光る、月を。

 「奇遇だね、秀作」

 ぼくはその男に声をかけた。

 理由は2つ。ひとつは、友達だったから。ひとつは、この感覚を誰かと共有したかったから。

 それだけだ。

 そこにいたのは紛れもなく、我がクラスの副委員長である真川秀作だった。

 「ん?ああ、夏月…。どうしたこんな時間に?」

 今朝も似たようなセリフを吐いていたような気がする。

 「…眠れなくてね。秀作は?」

 「俺もそんな感じだ」

 秀作の視線は、ぼくを介して月から噴水へと移動する。

 「やっぱり明日が楽しみ?」

 「ふっ…、その様子だとお前もか……」

 このクラスの委員長副委員長は、揃いも揃って子供みたいだ。

 そこからぼくたちは30秒程度笑いあっていた。


 まあ、30秒程度の事で一度区切る必要はなかったが。

 「はぁ…。で、秀作はなんでこの場所を知ってたの?」

 「ん?いや、別に知ってたわけじゃないよ。適当に歩いてたら見つけただけだ」

 「……なんかぼくたちってとことん似た境遇だね…」

 「夏月も?」

 「うん、そんなとこ」

 「…。運命を…感じるな……」

 「…。その台詞、男が言うとすごく気持ち悪いな……」

 まあぼくはそんな台詞言わないけど。

 秀作は苦笑いを浮かべる。

 今日知り合ったばかりで『気持ち悪い』等と言えるのだからすごい。

 言ったのはぼくだけど。

 「ところで夏月。ひとつ訊いていいか?」

 突然秀作がぼくの方を向いたので、少しどきっとした。

 「な、なに?」

 思考を張り巡らせる。何か過失があっただろうか。

 まったく記憶にない…。

 「あのさ、それって、夏月の寝巻き?」

 「は?」

 秀作はぼくの体を指さした。

 秀作の人差し指の先にあるものを見る。

 ぼくは、灰色のパーカーにフリルスカートというスタイルだった。

 「う、うぇ!?何か変かな!?」

 本当はスカートはあまり好きじゃない。だって動きにくいんだもの。

 だが寝巻きに使えそうなものがこれしかなかったのだ。

 「別に変ではないよ。でも、女子の寝巻きって普通はパジャマとかネグリジェかなぁ…と」

 「うー…。あんまりヒラヒラしたのは苦手なんだよ……」

 フリルスカートを穿いている人の言う言葉じゃないなこれは。

 拗ねるぼくを見て、秀作はニヤニヤとしている。

 そんな秀作の表情を見るとさらに恥ずかしくなっていく…。

 でも、自然と居心地はよかった。


 外の空気に触れていると、いつの間にか眠たくなってきた。

 「うー……ん」

 ぼくは大きく伸びをする。

 眠くはなくても、案外疲れは溜まっているものだ。

 1日中知らない人間ばかりの部屋にいたんだ。無理もないか。

 溜まっていた疲れが一気に全身へと押し寄せる。

 「さて、もうさすがに眠いや…。ぼくはもう寝るよ」

 「そうだな、さすがに俺も…」


 そこまで言いかけて、秀作の体はピクリと止まる。

 「秀作?どうしたの?」

 「し…。静かに」

 ぽむ。

 突然ぼくの頭に秀作の手が乗っかる。

 「ぇ…えぇ……?何やって…」

 秀作はぼくの頭に右手を乗せたまま、左手人差し指を自分の口元に添える。

 『静かにしろ』のポーズだ。

 噴水をまじまじと眺める秀作の表情は、とても真剣な表情だった。

 と、噴水後ろの草影がかすかに揺れる。

 誰かいる…?

 ぼくも秀作と同じように噴水に目を向ける。


 次の瞬間。


 その影が大きく蠢く。

 「伏せろ―――!!!」

 秀作は叫び、ぼくの頭を上からぐいっと押さえつけた。

 膝の力が一気に抜け、僕はその場にしゃがみこむ。

 同時に秀作もしゃがみこんだ。

 

 ヒュン―――――。


 僕の頭上を何か・・がかすめる。

 風切り音からして、その何か・・が刃物であることは明白だった。

 なんとか顔を上げ、その襲撃者を見上げる。

 身長は180cm超え。体格から男だと推測する。薄めのコートを羽織っており、そのフードを眼深く被っている。

 顔はフードで見えず。右手には刃渡り20cm程度のナイフ。

 そして悟った。

 こいつはぼく達を殺すつもりだ…!

 


これを書いたのは夜中だったので、少し文章力が落ちていると思います。

それでも、どうしてもおかしな点があればじゃんじゃん言ってください!

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