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『死ねば勝ち逃げ!!』―異世界のチョロい法律なんてクソくらえ、俺の人生コスパ最強―

初めまして、作者の青眼寺龍之介です。

本作は「登場人物たちの格調高すぎるセリフ」と「主人公の俗っぽい本音」、そして「地の文の容赦ないツッコミ」の温度差を楽しんでいただく実験的な短編集となっております。

転生物にありがちな『言葉遣いの違和感』を極限まで尖らせてみました。サクッと読めるコメディですので、どうぞお気軽に劇場の観客席へお進みください!

【第一幕:石造りの処刑台】


[ト書き:峻厳たる石造りの公開処刑台。両手両足に重々しき魔力封じの枷を嵌められたケイン・ロストウェルが中央に佇む。その顔には、死を目前にしながらも、世を嘲る不遜なる笑みが張り付いている。なお、客観的に見ればただの薄汚いニヤニヤ顔である]


民衆の交錯する叫び:

殺せ! その悪魔の首を刎ねよ!

我が娘の命を返せ! 呪われし泥棒猫め、地獄へ落ちよ!


[ト書き:群衆より悔し涙と共に無数の石礫が投げつけられるも、処刑台を囲む騎士たちの盾に弾かれ、空しく地に落ちる。ケインのガードは無駄に固い。ケインはそれを見下ろし、内に向けて語る。ここから壮大で脳内麻薬全開の自分語りが始まる]


ケイン:

吠えよ、狂えよ、哀れなる羊の群れよ。汝らの喉より放たれる呪詛の嵐、我が耳には心地よき子守唄にすら聞こえるわ。


ケインの脳内:

(あーあ、怒鳴るねえ。まあ、気持ちは分かるよ? なんせ俺、この国の国庫を半分に傾けたし、逆らう貴族の街をいくつか灰にしたし、聖女の妹を拉致して売り飛ばしたからなあ。やったね、歴史に残る大悪党だ!)


ケイン:

顧みれば、前世における我は、満員電車という名の鉄の檻に揺られるだけの、冴えない限界社畜――影法師に過ぎざりき。理不尽なる主君に頭を垂れ、安月給という名の泥水を啜りて生きる、惨めなる日々。

されど、運命の車輪は狂い、トラックの衝撃と共にこの異世界へ転生せし時、神なる存在は我に『万物を分解・再構築する』というデタラメなるチート能力を授け給うた。その刹那、我が脳裏には一条の「冴えたる閃き」が走ったのだ。

『せっかくの二度目の人生、真面目に働くなど愚者のすること。楽をして、奪いて、欲望の赴くままに生きねば損というものよ』

それからの歩みは電光の如く早かった。授かりし神力を悪用して商人の荷馬車を襲い、ギルドの金庫をハッキングし、富と権力を力ずくで毟り取った。現地の人間が血の滲むような努力を重ねて築き上げた財産や地位を、我はただボタン一つを操作するが如く、「楽をして」奪い尽くしたのだ。


[ト書き:我ながらマジで清々しいほどのクズである。現地の冒険者や騎士どもが「そのような悪行、断じて長くは続かぬぞ!」「世界の理をナメるな!」と正義の味方気取りで忠告しに来たこともあったが、ケインの肉体は常に鼻で笑うてやったのだった]


ケイン:

「長く続かなくて結構。ヤバくなったら、サクッと死んで勝ち逃げするまでのことよ」

そう、人間、死してしまえばそこですべてが終幕を迎える。どれほどの大罪を犯しようが、どれほどの怨嗟を買い付けようが、死によって意識の灯火が消え去ってしまえば、如何なる復讐も、如何なる拷問も、我が魂に届くことはない。

すなわち、死こそは絶対の安全地帯(サンクチュアリ)、究極の免罪符!

これこそが我の導き出した『完全無欠の人生設計』。世界がいかに我を憎もうとも、最後に我が勝利の笑みを浮かべることは、星の運行の如く確定しておるのだ。


[ト書き:この時のケインの全能感は間違いなく世界一だったが、彼はこの数分後に「世界一のバカ」に転落する。ゆえに、国の総力を挙げた『勇者パーティ』とやらに包囲されし時も、あえて大魔法で自爆するような無駄な抵抗は選ばなかった。痛みを伴う死は好まぬし、生け捕りとなってこの処刑台に上がる方が、劇的で面白いではないか]


ケインの脳内:

(どうせ死刑よ。ギロチンの一瞬の痛みさえ耐え忍べば、我は『悪のカリスマ』としてこの世界の歴史に名を刻んだまま、永遠の眠りにつく。前世の退屈なる日々に比べれば、何たるコスパ最強のイージーゲームか!)


[ト書き:カツン、と硬き足音が響き、処刑執行人たる巨漢が巨大なる断頭斧を手にケインの背後に立つ。王族の観覧席からは、作戦を指揮せし第一王子と、妹を奪われし聖女が、これから始まる「地獄のエンターテインメント」を前に、氷の如き冷徹な眼差しで大罪人を見下ろしている]


第一王子:

罪人、ケイン・ロストウェル。汝に神へ捧げる最後の言葉を許す。


[ト書き:王子の厳かなる声が広場に響き渡ると、民衆の怒号は堰を切ったようにピタリと止まる。ケインは待ってましたとばかりに顔を上げ、縛られた体のまま大仰に肩をすくめてみせる。そして肺にたっぷりと空気を吸い込み、完全に死亡フラグでしかない大声を張り上げてイキり散らす]


ケイン:

おお、何たる恐ろしき相貌にて我を睨みつけるか、諸君! されど、そう怒るな!

汝らがどれほど我を憎んでいようとも、どれほど残酷なる拷問を夢見ていようとも、残念であったな! 我を殺せば、それですべてがおしまいなのだ!


[ト書き:群衆の間から、歯噛みするような悔しげな呻きが漏れる。これで自分が勝ったと本気で信じ込んでいるケインの脳内は、今まさに最高潮にハッピーである]


ケイン:

良いか! 死ぬのは一度きりだ! 汝らは我が首を刎ねて一時(いっとき)の快哉を叫ぶかもしれぬが、それは我が意識の消滅と同時である! 我は一瞬の痛みと引き換えに、汝ら全員から『永遠に勝ち逃げ』を果たすのだ! 汝らは一生、我への真なる復讐を果たすことは叶わぬ! ギャハハハハ! 最高に楽で、最高に楽しい人生であったわ! さらばだ、おめでたき原始人どもめ!!


第一王子:

……執行せよ。(はいはい、そんじゃ一回目いきまーす、くらいのテンションで)


[ト書き:王子の冷ややかなる一言。背後にて鋭く風を切る音が響く。ケインの視界は急激に回転を始め、天地が逆転し、ドンと鈍い音を立てて処刑台の木床へと叩きつけられる。首から下が妙に軽い。ケインさん、一回目の死亡である]


ケインの脳内:

(あ、首が落ちたのだな。……少しも痛うないわ。じゃあな、クソみたいな異世界。我が勝ち――)

[ト書き:視界は急速に暗転し、ケインの意識は深い闇の底へと沈んでいく。ここまでは彼の想定通りの「勝ち逃げ」だった。ここまでは]


【第二幕:冥府からの引き戻し】


[ト書き:完全なる暗闇。静寂を引き裂くように、鈴を転がすような、されど骨の髄まで凍りつかせるような冷徹なる女性の声が響く。ケインにとっての本当の地獄の始まりを告げるアラーム音である]


聖女の声:

……目覚めなさい。大罪の器よ、目覚めなさい。(寝坊した子供を起こすように)


ケインの脳内:

(……え? ナニコレ?)


[ト書き:消え去ったはずの感覚が、奔流の如く肉体へと呼び戻される。ドクンと心臓がバカみたいに大きく脈打ち、肺が反射的に外気を吸い込んで激しく咳き込む。死んだはずなのにめちゃくちゃ苦しい]


ケイン:

カハッ、ゲホッ! ゴホッ……!? な、何だ、これは……!?


[ト書き:口から飛び散るは赤黒き己の血。慌てて己の身体を見下ろせば、両手も、両足も、そして先ほど切り離されたはずの首も、コントのようにしっかりと胴体へと繋がっている。見上げれば眩しき青空。その視線の先には、白銀の法衣を纏った美貌の聖女が、琥珀色の瞳でケインをゴミを見るような目で見下ろしている。その手にある聖杖からは、淡き黄金の光がこれでもかと溢れ出ている]


ケイン:

な、何故だ……!? 我は確かに死んだはず! ギロチンにて、この首を……!


聖女:

ええ、確かに今、汝の首は完全に切断され、心臓の鼓動は停止しておりました。されど、我が国の最高位神

聖魔術をここに行使いたしました。


[ト書き:聖女は杖の先をケインの胸元へ厳かに、しかし割と強めに突きつけ、その最悪の呪文の名を宣する]


聖女:

死者蘇生――『リザレクション』です。


ケイン:

……は?


ケインの脳内:

(ば、馬鹿なことを言うな! あのようなものは劇(ゲーム)の中だけの空事……いや、いかに異世界とはいえ、死した人間が蘇るなど、そのような都合のいいルールが……! 勘弁してよマニアックな仕様変更!!!)


聖女:

都合が良い? いいえ、これは『おぞましき』冥府の檻ですよ。特に、汝のような大罪人にとってはね。(ド正論である)


[ト書き:聖女の傍らより、第一王子が静かに歩み出る。その顔には、かつて見せたことのない、邪悪にして底意地の悪い「ドッキリ大成功」のプラカードが似合いそうな笑みが浮かんでいる]


第一王子:

ケイン・ロストウェル。先ほど処刑台の上にて、随分と威勢のいい演説をぶち上げていたな。『死ぬのは一度きり』『一生本当の復讐は果たせない』『勝ち逃げしてやる』……であったか?(わざわざ全部復唱してあげる親切な王子)


ケインの脳内:

(ひっ……! 頼むからその黒歴史を読み上げるのはやめてくれ!!)


[ト書き:王子の放つ圧倒的なる威圧感に、ケインは思わず尻餅をついたまま後退せんとする。されど、両手両足の枷は、親切設計により蘇生せし肉体にも厳然として嵌められたままである。ジャラリと重苦しき鉄の音が響き、ケインの勝ち逃げルートが完全に塞がれる]


第一王子:

汝は前世の浅はかな知識をもって、この世界の司法を侮りすぎていたようだ。人間が死ねばすべてが清算されるなどという都合のいい結末は、魔法を持たぬ脆弱な世界の妄想に過ぎぬ。我が国の法律の調べを、その耳に刻むが良い。


[ト書き:王子は懐より一冊の分厚き法典を取り出し、パラパラとページをめくり、無駄に良い声で朗々と読み上げる。国を挙げてこのクズを合法的に痛めつけるための、完璧な法律である]


第一王子:

『国家反逆罪、および大量殺人、国庫不法占拠の罪科。これらを犯した史上最悪の徒に対しては、一過性の死による逃亡を断じて禁ずる。司法は教会の協力を得て、予算の許す限り『リザレクション』を執行し、その罪業が完全に贖われるまで、幾度でも刑を執行するものとする』


ケイン:

……な、何だと?

待て、待て待て待て! それはおかしいではないか!? 一死を以て罪を償うのが、法というものの道理であろう!?


[ト書き:ここにきて突然、近代法の常識を語り出す大悪党。しかしここは中世ファンタジー世界である]


第一王子:

それは『一度しか死ねぬ世界』の道理であろう?


[ト書き:王子はクスクスと、心底愉快そうに嘲笑う。完全に形勢は逆転した]


第一王子:

我が国が汝のために用意した『リザレクション』の予算は、教会への寄付金も含め、国家予算の一割にのぼる。金貨にして数万枚よ。国費の無駄遣いと言われようが、お前を絶望させるためなら安いものだ。聖女殿、この哀れな道化はあと幾度、死の苦痛を味わうことが可能かな?


[ト書き:聖女は冷徹なる事務作業の如く、まるでスーパーのレジ打ちのように淡々と細き指を折って数え始める]


聖女:

そうですね。我が魔力の配分と、用意された高純度の魔石の消費量を計算いたしますと……あと『九十九回』は確実に、彼を現世へと引き戻すことができます。


ケインの脳内:

(ひゃ、九十九回……だと……っ!?)


[ト書き:ケインの背筋に、これまでに経験したことのない、文字通りの『凍りつくような恐怖』が駆け抜ける。さっきまでの「コスパ最強」はどこへやら、ここから世界で一番コスパの悪い『首チョンパの99本ノック』が始まるのだ。脳髄がその意味を理解し、絶望に震える]


ケインの脳内:

(つまり、どういうことだ? 我はこれから、あの首を刎ねられる絶望と痛みを、あと九十九回もリアルに体験させられるというのか? 死んで逃げることも許されず、意識が消えるたびに、この冷たい処刑台の上へ引き戻されるというのか!?)


ケイン:

いやだ……いやだ! 頼む、助けてくれ! 我が悪かった! 盗んだ金はすべて返そう! チート能力で如何なる財宝でも造り出して見せる! だから、楽に死なせてくれ! 一回で終わりにさせてくれよおおお!!


[ト書き:ケインはさっきまでのエリザベス朝の格調高さなど完全にドブに捨て、床に額を擦り付ける。涙と鼻水とプライドで顔をぐしゃぐしゃにしながら、前世の限界社畜時代よりも無様に命乞いをする。されど、先ほどまで彼のイキり発言にマジギレしていた群衆からは、今度は地鳴りのような歓声と爆笑が沸き起こる。そりゃあ最高のお祭り騒ぎである]


民衆の狂喜:

いいぞ! もっと殺せ!

あと九十九回では足りぬわ! 何度でも地獄の業火を味わわせよ!!


[ト書き:聖女はそんな無様なケインを、道端の生ゴミを見るような冷たい眼差しで見下ろす]


聖女:

楽をして他人から全てを奪っておきながら、自分だけは楽に死に逃げしようなどと……そのような甘き考えが、この世界で通用すると思いましたか? 楽をしてはなりませんよ、大罪人。


[ト書き:聖女の無慈悲なる説教が、ケインの胸を深く抉る。楽して勝てるゲームなんてなかったんや]


第一王子:

さあ、二回目の幕を開けよ。執行人、斧を構えよ。


[ト書き:王子の合図と共に、背後で再びあの巨大なる断頭斧が持ち上げられ、不気味な影がケインを覆う。執行人もいい加減腕が疲れてきそうである]


ケイン:

やめろ! 助けてくれ! 嫌だ、あの痛みと暗闇は嫌だああああ!!


[ト書き:ケインの絶焼きは、民衆の狂喜乱舞する大歓声にかき消されていく。ザシュッ――!! 二度目の鋭き風切り音と共に、彼の視界は再び真っ赤な鮮血に染まりながら、静かに回転を始める。されど、彼は既に知っている。この暗闇の先に待つのは永遠の安らぎなどではなく、またあの眩しき黄金の光と、絶望の目覚めであることを。残りの回数を数えるだけでも気が遠くなりそうだ]


聖女の声(遠ざかる意識の片隅で):

――あと、九十八回です。


[――絶望の次幕へ98回続く――]

第1話をお読みいただきありがとうございました!

楽して勝ち逃げしようとしたクズ転生者に待っていたのは、まさかの合法無限首チョンパでした。聖女様のレジ打ちのようなカウントダウンが、これからあと98回続きます。


第2話『鉄の檻に咲くアマプラの幻影 ――悪役令嬢に転生したOL、肉体が勝手に劇団四季――』を投稿予定です!現代のアラサーOLがガチの悲劇の世界に巻き込まれます。

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