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悪魔の花嫁 エルフの花婿 〜悪魔のぼくと美人なエルフのお姉さん〜  作者: よるねこ


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第一話 転生したら悪魔になっていた少年、迷宮の最奥で生贄の美人エルフと出会った日の話


 迷宮の奥は、外の季節から切り離されていた。


 石の壁は古く、磨かれたことなど一度もないまま長い年月を重ねたように荒れている。天井は高いはずなのに、闇がそこを隠していた。壁のところどころに埋め込まれた魔石だけが、青白い光を弱々しくにじませている。その光で床のひびや染みが見えるたび、ここが人の住まう場所ではないことを改めて思い知らされた。


 リテュシアは、広間の中央で膝をついていた。


 石床の冷たさは、薄い靴底と衣の裾を通してじわじわと体に伝わってくる。だが彼女は姿勢を崩さない。背筋は伸び、顎は静かに引かれ、金糸のような髪は肩から胸元へと流れている。生贄として整えられた装いは、この陰気な迷宮には不釣り合いなほど華やかだった。白を基調にした上質な衣は柔らかく、襟元や袖口には細かな刺繍が施され、腰から下に流れる布は光を受けるたびにかすかな艶を見せる。首には細工の繊細な宝飾、耳元には控えめだが高価な飾り。腕にも幾つもの装飾がある。


 その中で異質なのは、両の手首と首に嵌められた拘束具だった。


 銀にも似た鈍い光沢を持つ腕輪と首輪。見た目だけなら豪奢な飾りにも見えるが、違う。これは飾りではない。魔力を封じるための魔道具だ。エルフである自分にそれを付ける意味を、リテュシアは誰よりよく知っていた。美しく、魔力が高いからこそ奪われ、売られ、値を付けられ、最後には悪魔への贈り物にされたのだ。


 彼女は静かに息を吸った。


 湿った空気が肺に入る。重い。森の空気とはまるで違う。土や葉の匂いではなく、石と澱んだ魔力の匂いがする。


 ここに来るまでの道のりを思い返しても、感傷は湧かなかった。もうとっくに終わっている話だからだ。どこで生まれ、どう追われ、どう捕まって、誰の手を渡ったか。それらはすべて今さら意味を持たない。


 意味があるのは、これからだけだった。


 百年に一度、王国は生贄を迷宮へ送る。


 千年前、王国を焼き尽くしかけた暴虐の悪魔。その怒りを鎮めるため、王国は戦うことをやめ、捧げることを選んだ。勇者も英雄も倒せなかった相手に、剣より先に差し出したのが生贄だっただけの話だ。


 そして今代は、自分。


 リテュシアは目を伏せたまま、気配に意識を澄ませた。


 広間は静まり返っている。水滴の落ちる音すらしない。ここまで案内してきた者たちは、最奥の手前で震えながら彼女を置いて下がった。そこから先は、生贄だけが進む領域だった。


 暴虐の悪魔がいつ姿を見せるのかは聞かされていない。生贄は待てばよい。ただ待ち、命じられるままに差し出される。それだけだ。


 長い沈黙が流れた。


 膝をついている時間の長さを数える気もなかった。数えたところで何も変わらない。待つことは慣れている。命じられるまで立たず、声をかけられるまで答えず、顔を上げるべき時と下げたままでいるべき時を見極める。それは王国に売られてから嫌というほど叩き込まれた。


 だから、最初に違和感を覚えたのは、耳に届いた気配の質だった。


 誰かが来る。


 重い足音ではない。威圧するような足取りでもない。炎のような熱も、肌を焼く圧もない。近づいてくる気配はあるのに、ひどく落ち着きがなかった。止まりかけては進み、進みかけてはまたためらうような、妙に頼りない歩き方だった。


 それでもリテュシアは頭を上げない。


 気配は広間の入口から近づいてきて、そこで一度止まり、また少し進み、やがて彼女から少し離れた位置で止まった。


 沈黙。


 何も起きない。


 暴虐の悪魔が相手なら、視線を向けられただけで骨の芯が軋みそうな威圧感があると聞いていた。だが、今感じるのは戸惑いに近い何かだ。


 そして、低くかすれた声がした。


「あの」


 リテュシアの睫毛がわずかに揺れた。


 その声には、圧がなかった。むしろ、こちらの反応をうかがうような弱さがあった。


「あの、その、大丈夫ですか?」


 言葉を選び損ねたような、不器用な声音だった。


 大丈夫ですか?


 生贄を前にした悪魔が、最初にかける言葉とは思えない。


 リテュシアは数拍の間だけ黙り、それから生贄としての作法に従って静かに口を開いた。


「暴虐の悪魔様」


 声はよく通った。震えはない。


「今代の生贄、リテュシア・ドローラン・ヴュリスでございます」


 相手の足元へ視線を落としたまま名乗る。王国で何度も練習させられた言葉だった。どれほど惨めでも、礼だけは失うなと言われた。悪魔を怒らせれば王国にまで災いが及ぶからだ。


 返ってきたのは、しばしの無言だった。


 次いで。


「えっ」


 間の抜けた、実に素直な困惑の声。


「えっ。あの、えっ?」


 さすがにリテュシアも眉をわずかに寄せた。


 目の前の存在は本当に悪魔なのか。疑いが芽を出す。だが慌てる理由はない。ここで取り乱しても損しかしない。


「何か、お気に障りましたでしょうか」


 静かに問いかけると、相手は露骨に慌てた気配を見せた。


「い、いや、違います。違うんです。えっと、ちょっと待ってください」


 何を待てというのか。


 リテュシアはそこで初めて顔を上げた。


 目に入った姿に、彼女は瞬き一つ分だけ動きを止めた。


 大きい。


 まずそう思った。


 人間の男と比べても明らかに大柄だ。やや前傾の姿勢のせいで二メートルほどに見えるが、実際にはもっとあるだろう。肩幅は広く、胸も腕も岩のように分厚い。腕は人より長く、肘から先が妙に獣じみて見えた。指先には鋭く湾曲した爪。口元からは牙が覗き、唇の間からちらりと見えた舌は長く先が割れている。腰の後ろでは、しなやかな尾が落ち着きなく揺れていた。背には皮膜があり、畳まれていても異形であることは隠しようがない。


 服は破れ、もはや衣服と呼ぶには心許ない。辛うじて局部が隠れている程度で、褐色がかった肌と隆起した筋肉のほとんどがむき出しだった。


 どう見ても悪魔だ。


 人ではない。


 だが、違和感は外見ではなく、その表情にあった。


 彼は困りきった顔をしていた。怯えていると言ってもよかった。金色にも見える目が落ち着きなく揺れ、こちらを見ては逸らし、また恐る恐る戻してくる。最悪なのは、その仕草が演技に見えないことだった。本気で戸惑っている。


「その」


 彼は喉を鳴らした。


「ぼ、暴虐の悪魔って、なんですか」


 リテュシアは黙ったまま彼を見つめた。


 質問の意味を理解するまで、ほんの少し時間がかかる。


「ご存じないのですか」


「知らないです」


 即答だった。しかも恥じる様子がない。ただ困っている。


「ぼく、気が付いたらこの姿でここにいて。ここがどこかもよく分からなくて。あの、何か、すごいのがいたのは覚えてるんですけど」


 彼は自分の頭を軽く押さえた。爪が当たった石のような髪がわずかに鳴る。


「すごいの」


「はい。何か、こう、燃えてる感じの」


 そこでリテュシアの視線が少しだけ鋭くなる。


「炎を纏っていたのですか」


「そうです。熱くて、でかくて、すごい怖くて」


 彼は言葉を探しながら身振りを交えた。長い腕が動くだけで空気が揺れる。


「怖くて、とにかく逃げようとしたんですけど、追いかけてきて。いや本当に無理だと思って。もう駄目だってなって」


 そこで彼は少し黙った。


 思い出したくない記憶を引きずり出すように、眉間にしわが寄る。


「それで」


 リテュシアは促した。


 彼はびくりと肩を震わせたが、素直に続ける。


「その、咄嗟に殴ったんです」


「殴った」


「はい」


「それで」


「消えました」


 広間に静寂が落ちた。


 リテュシアは彼の顔を見たまま、内側で情報を組み立てる。


 燃えていた。大きかった。ここがどこかも知らぬまま襲われた。咄嗟に殴った。消えた。


 それを平然と語るこの男は、自分が何をしたか分かっていない。


 だが、他に考えようがない。


「それは人ではありません」


 彼はきょとんとした。


「人じゃないのは分かります。ぼくだって今こんなですし」


「そういう意味ではありません」


 リテュシアはゆっくりと言葉を選んだ。


「おそらくそれが、暴虐の悪魔です」


「え」


 彼の目が見開かれる。


「いや、そんな」


「炎を纏い、王国を焼き尽くしかけた伝説の悪魔。何度も討伐が試みられ、誰も倒せなかった存在です。この迷宮の主でもあります」


 彼は口を開いたまま固まった。


 長い尾の動きだけが、左右にゆっくり揺れる。


「ぼくが」


 ようやく出た声はひどく小さかった。


「倒したんですか」


「状況は一致しています」


「そんな」


 彼は一歩後ずさろうとして、足元の石に引っかかりそうになった。大柄なくせに、体の扱いがうまくない。とっさに壁に手をついて踏みとどまる。


「いや、そんなつもりじゃ」


 つもりとは何だ。


 リテュシアは口には出さなかった。


「確かに、ここ数日で迷宮の気配は変わったと聞いていました。生贄を捧げる日が近いから王国側が神経質になっているのかと思っていましたが」


 彼はまだ呆然としている。


「あなたは、いつからここに」


「分からないです。多分、数日だと思います。お腹が減ったり眠くなったりした回数でしか数えてなくて」


「外には出ていないのですか」


「出てないです」


 その答えは早かった。


「怖くて」


 今度はリテュシアの方が黙る番だった。


「怖い」


「だって」


 彼は視線をさまよわせる。


「こんな姿で出たら、絶対怖がられるじゃないですか」


 自分の腕を見下ろす。長く太い腕、爪、牙、尾。背の皮膜まで少し動かしてみせる仕草には、心底困っている色しかない。


「人前になんて出られないですよ」


 その言葉に嘘はないらしい。


 リテュシアは彼を見ながら、頭の中で認識を書き換えていく。


 暴虐の悪魔ではない。


 いや、今や力だけならそれ以上かもしれない。だが、この男は暴虐ではない。少なくとも今ここにいる存在は、伝説に語られる災厄とはあまりにも違う。


 自分が生贄として捧げられたことも、その理由も、この男は知らない。


 王国と悪魔の契約も、千年前の戦いも、何一つ。


「あなたのお名前をうかがっても」


 問いかけると、彼は慌てて姿勢を正した。


「さ、サクマシロウです」


 それから少し気まずそうに続ける。


「多分、名前はそれで合ってます。記憶はあります。日本ってところで、学校に通ってて」


 聞き慣れない地名だったが、そこを掘る必要はまだない。


「では、サクマシロウ様」


「様はやめてください」


 食い気味に返ってきた。


「いや本当に無理です。やめてください。すみません」


 謝るのか。


 リテュシアは感情を顔に出さないまま頷いた。


「では、シロウ」


 呼び捨てにすると、彼はなぜか少しだけ安心した顔をした。


「あなたは、この迷宮の主を討ったのでしょう」


「そんなこと言われても」


「悪魔は他の悪魔を倒すと力を奪うと聞きます」


「え」


「ですから、あなたはその力を得た」


 シロウは自分の両手を見た。爪の伸びた指をゆっくり開き、また閉じる。信じられないものを見るような目だ。


「それで、こんな」


 先の割れた舌がちらりと覗き、彼は慌てて口を閉じた。


「こんな姿に」


「そう考えるのが自然です」


 リテュシアはそこまで言ってから、自分の首元の冷たさを意識した。首輪。腕輪。魔力を縛るそれらの存在は、目の前の男にも分かるはずだ。


「シロウ」


「は、はい」


「一つお願いしてもよろしいでしょうか」


 彼はまた緊張した顔になる。


「何でしょう」


「この首輪と腕輪を壊してください」


 視線が拘束具に落ちた。


「これを」


「はい」


「え、でも」


 彼は手を伸ばしかけて止めた。大きな手が空中で迷う。


「危なくないですか。痛かったりとか」


「今のままの方が不都合です」


 リテュシアは淡々と答える。


「わたしは魔力を封じられています。自衛の手段が乏しい」


「自衛」


「ええ」


 生贄としては不要でも、これから先を考えれば必要だ。


 彼は迷った末、恐る恐る尋ねた。


「壊して、怒られませんか」


「この場でわたしを怒る者はいません」


 暴虐の悪魔はもういないのだから。


 シロウはその言葉をどう受け取ったのか、少しだけ顔をこわばらせた。自分が何をしたのかを思い出しているのだろう。


「分かりました」


 彼は膝をついた。先ほどまで立っていた時よりもさらに巨大に見える体が目の前に近づく。それでも動きに威圧感はなく、むしろ壊れ物に触れるような慎重さがあった。


「痛くしません。多分」


「多分ですか」


「すみません」


 また謝る。


 長い指先が首輪に触れた。


 その瞬間、鈍い音もなく金具が砕け、床に欠片が転がった。続けて腕輪も同じように壊れる。何の抵抗もなく、まるで古い飾りが朽ちたように。


 リテュシアは目を伏せた。


 封じられていた魔力が、体の隅々まで戻ってくる。細く閉ざされていた流れが一気に開く感覚。久しく忘れていた自分の芯が、ようやくあるべき場所へ収まった。


「大丈夫でしたか」


 シロウが不安そうに覗き込む。


 リテュシアはゆっくり立ち上がった。


 久しぶりに足元が軽い。視界が澄む。もし今ここで刃を握れば、それなりに戦えるだろう。拘束されていた時とは別人のようだ。


「問題ありません」


 短く返すと、シロウは露骨に安堵した。


「よかった」


 その一言に打算はない。


 リテュシアは改めて彼を見た。


 大柄で、異形で、恐ろしく強い。だが世界のことを知らず、一人で迷宮に閉じこもり、見た目のせいで外へ出ることすら恐れている。力と中身が、ひどくちぐはぐだ。


 利用しやすい。


 その判断はすでに固まりつつあった。


「シロウ」


「はい」


「現状を簡単にお伝えします」


 彼は神妙に頷いた。素直だ。驚くほどに。


「ここは王国の迷宮です。千年前から暴虐の悪魔が住み、王国は百年に一度、生贄を捧げてその怒りを鎮めてきました」


「生贄」


「それがわたしです」


 シロウの顔色が変わる。


「え」


「わたしはそのために捕えられ教育されました」


「そんな」


 彼は唇を引き結んだ。爪のある指がぎゅっと握られる。


「そんなの、駄目でしょう」


「駄目かどうかで言えば駄目でしょうね」


 リテュシアは平坦に答える。


「ですが、行われてきました」


「だって、あなた」


 シロウは言葉を失う。哀れみか、怒りか、自分でも定まらぬ感情に呑まれているのが見て取れた。


「何もしてないのに」


 その反応は予想通りだった。善性が強い。しかも単純だ。


「王国への復讐をお考えになりますか」


 試すように尋ねると、彼は弾かれたように顔を上げた。


「しません」


 即答だった。


「何もしてない人たちに酷いことなんて出来ません」


 迷いがない。


 リテュシアは内心で小さく息を吐く。


 やはりそういう人間か。


「王国はわたしにしました」


「それは分かります。でも」


 彼は必死に言葉を探す。


「でも、それで関係ない人までひどい目に遭わせるのは違うでしょう」


 おかしいほど真っ直ぐだ。ここまで力を持ちながら、発想が村の善人のように狭く清い。


 リテュシアは彼を見つめた。


 もしこの男が本当に暴虐の悪魔のような存在なら、今ここで王国を焼くと言っても何の不思議もなかった。だが彼は違う。利用するとしても、その性質を前提にしなければならない。


 シロウはしばらく黙り、それから自分の体を見下ろした。


 長い腕。爪。牙。尾。破れた衣。人ではない姿。


「ぼく」


 声がかすれる。


「本当に悪魔なんですね」


 返事をする前に、彼はその場にへたり込んだ。


 大きな体が石床に沈み、次いで何を思ったのか、膝を揃えてきちんと座り直す。妙に行儀のいい座り方だった。


 リテュシアは黙って見ていた。


 シロウは両手を腿の上に置き、しばらくうつむいていたが、やがて消え入りそうな声を漏らした。


「こんな姿になってしまって」


 尾の先が力なく床を打つ。


「もうお婿さんになれない」


 広間の静けさの中で、その言葉は驚くほどはっきり響いた。


 リテュシアはまばたきをした。


 今、この男は何と言ったのか。


 彼は顔を上げないまま続ける。


「普通に働いて、普通に生きて、そのうち誰かと結婚して、みたいなことを、なんとなく考えてたんです。別にすぐじゃなくてもよかったんですけど。でも、こんなの」


 長い爪のついた手が自分の膝を掴む。


「怖いでしょう。誰だって。無理ですよ。絶対」


 声に怒りはない。ただ純粋な落胆と途方のなさがある。


 リテュシアはしばらく黙ったまま、その姿を眺めていた。


 伝説の悪魔を倒した存在が、迷宮の最奥で正座し、自分の将来の結婚について嘆いている。


 あまりにも滑稽で、あまりにも奇妙だった。


 だが、笑う気にはならない。


 むしろ確信が深まるだけだ。


 この男は、暴虐の悪魔ではない。


 力だけはそれを上回るかもしれないが、中身は別物だ。弱く、怯えやすく、だが根の善さだけはやけに強い。


 だからこそ、扱える。


 だからこそ、使える。


 リテュシアは静かに息を整えた。戻った魔力が体に馴染んでいく。視線の先では、サクマシロウがまだ肩を落としている。


 この男をどう動かすか。


 どこへ連れていくか。


 その答えは、もう見え始めていた。


 けれど今はまだ口にしない。


 まず必要なのは、この異形の男に自分が頼るべき相手だと思わせること。そして、彼の足を迷宮の外へ向けさせることだ。


 シロウはなおもうつむいたまま、小さく呟いた。


「本当に、どうしたらいいんだろう」


 その声は、強者のものではなかった。


 迷子になった子どものように頼りない声だった。


 リテュシアはその声を聞きながら、静かに口を閉ざす。


 広間には青白い魔石の光が落ち、砕けた首輪と腕輪の欠片が床に散らばっていた。暴虐の悪魔が消えた迷宮の最奥で、新たな主は自分が主であることすら知らず、ただ途方に暮れている。


 その前に立つのは、生贄として捧げられたエルフの女。


 力は彼が上。


 知識も判断も、今は自分が上。


 ならば主導権を握るのは難しくない。


 リテュシアは顔に何も出さないまま、正座したまま嘆く悪魔を見下ろした。


 そして、次にかけるべき言葉を静かに選び始めた。

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