訓練
宮廷の訓練施設。
さすがは国家が保有する場所である。
多くの訓練設備があり、ここだけで自身のレベルを上げることができそうだ。
彼女は的の前に立ち、俺をちらりと見る。
「ひとまず、私の剣筋を見て!」
すぅ、と彼女は空気を体に吸い込む。
目を開き、剣を握る。
引き抜いた剣先は魔法付与によって輝かしく光って、的に向かって一閃。
轟音とともに、的は真っ二つになった。
「おお……ちなみに今のはどんな魔法を付与していたんだ」
「『攻撃強化』『斬撃強化』。簡単なバフ」
二つ同時にバフを展開するのは、はっきり言うとかなりレベルの高いことをしている。
俺は器用貧乏――いや、彼女の言葉を信じるなら万能だからできているが一般人には到底できない。
多分、俺と相対した魔法剣士はできていたと思うが……詳細は知らない。
ただ、彼女が雑魚と言っているから、まあそういうことなのだろう。
「さすがだな。これを簡単というあたり、エレアの実力がなんとなく分かるよ」
「えへへ……あなたに言われると少し照れるわね」
「ひゅー。お似合いです」
「ナミナはいつからいたんだ……」
「最初から?」
「気配消すの上手いな」
「使用人ですから」
「そんなものなのか」
まあいいや。
見たところエレアは魔法剣士として、かなり高い実力を持っている。
「いつも、的を斬る練習をしているのか?」
「そうね。お父様が用意してくれた相手は全員弱いし、やりがいがないもの」
なるほど。
そう考えると、かなりもったいないことをしている気がする。
彼女の実力なら、さらなる高みを目指すことだって不可能ではない。
ここは俺の出番かな。
「よし。それじゃ、俺と戦うか。器用貧乏の本気、見せてやるよ」
「だから器用貧乏じゃなくて、万能なの。でもその言葉を持っていたわ。ウズウズしちゃう」
近くにあった木剣を握り、俺は彼女と相対する。
「あれ。真剣でもいいのよ?」
「真剣だと万が一のことがあったら不味いからな」
確かに真剣の方が戦いやすいが、エレアを傷つけたら俺の首が飛ぶ。
「なら私も木剣に……」
「いや、それはしなくていい。訓練を目的とするなら、普段使う剣の方がいい」
「それじゃあレインが不利じゃない?」
「問題ない。器用貧乏を信じろ」
「そっか。分かったわ」
そう言って、彼女と俺は相対する。
これは魔法剣士同士の戦い。
それも、最高の魔法剣士対器用貧乏だ。
俺は俺で少しウズウズしていた。
「魔法剣士なんだ。どんな戦術を使ってもいい。俺はそれを全て受け止める」
「言ってくれるじゃない! いいわ、本気出しちゃう!」
「頑張ってくださーい」
気の抜けるようなナミナの声とともに、俺たちの訓練は始まった。
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