たたいて・かぶって・ジャンケンポン!
「ご不満ですか? それでは、これを」
そう言って、ヘルメットを取り出した。
一体彼女はどれほどまで用意周到なのだろうか。
今、適当に何か出してと言ったら本当に出てきそうだ。
「たたいて・かぶって・ジャンケンポン! です」
自信満々に、彼女は言いのけた。
確かに普通のじゃんけんではなくなったけど……俺は別に不満なんて抱いていないんだけど。
というか、想定外というか驚きというか。
そっち方面の感情が強い。
「まあ、こんな遊びをしながらエレア様のことでもわたしが語りましょう」
「それは知りたいかも」
そして始まるじゃんけん。
俺は拳を構えてグーを出した。
相手はパーである。
ヘルメットに手を伸ばそうとした瞬間、思い切り腕を叩かれた。
「いって!?」
怯んだのを見計らってか、すぐさま俺の額に平手打ちを決める。
「おいおいおい! 遠慮ないな!?」
「そりゃ、勝負ですから」
「ヘルメットを掴むのを邪魔するの、それって反則じゃないのか!?」
「勝負ですから」
これは……本気を出すしかなさそうだ。
遊びじゃない。本気の。
――たたいて・かぶって・ジャンケンポンだ。
「お嬢様がどうして、魔法剣士に憧れるのか。それは昔見た絵本の主人公――世界を救った英雄が魔法剣士だったからです」
ナミナはパーを出す。
俺はグーを出した。
敗北。しかしここで負けるわけにはいかない。
ヘルメットに手を伸ばそうとした瞬間、すかさず猫騙しを打つ。
ナミナが怯んだのを見て、ヘルメットを掴み被った。
「でも、魔族に狙われてるんだろ。あまりにも危険じゃないのか!」
ヘルメットを被っていても、遠慮なくグーパンチを決めてくる。
威力がバカみたいに高く、ヘルメット越しでも反動ががが……。
「魔族に狙われていても、エレア様は夢を叶えたいんですよ。無謀ですし、危険です。国王様が止めるのも頷けます」
俺はパーを出す。
相手はチョキだ。
ここは今までの傾向からして、ただの攻撃じゃない。
ヘルメットを顔の前に持ってきて構える。
どうせ目潰しだろう――なんて思っていたが普通に拳が降ってきた。
「ただ、国王様はそれを許した。とどのつまり、レイン様を信用したというわけです」
「とんでもない夢だな……。まあ、夢を追うのは悪くない。俺の責任は重大ってことだ」
痛む頭をさすりながら答える。
「あなたの職業は王女様のヒモ――でもありますが、夢を叶えるのをバックアップする影の英雄でもあります」
ナミナは拳を引いてグーを出す。
俺はパーを出した。
遠慮なく、チョップを繰り出す。
ナミナはヘルメットを被ることなく、チョップを喰らった。
「……エレア様を英雄にするのが、当面のあなたの目標ですね。打倒魔王軍であります」
「ははは、信じらんねえ。とんでもないものを任せられたな、俺は」
「徹夜頭には少し情報量が多すぎましたか?」
「少しな。でも、ナミナとは仲良くなれそうだ」
自然と敬語もなくなってたし、彼女も彼女なりに考えていてくれたようだ。
「それはよかったです。それでは、ひとまず寝てください。ヒモではありますが、英雄でもあるレイン様は」
「英雄か……ま、悪くないかも」
「おやすみなさい。わたしはずっと見守っていますので」
「……別に外出てもいいんだぞ」
「タバコは吸いませんので」
「そういう意味じゃないんだけど……」
しかし眠たいのには違いない。
ベッドに入ると、すぐに意識がぶっ飛んだ。
本当、情報量が多い。
癖が強すぎるんじゃ。
【夜分からのお願いです】
・面白い!
・続きが読みたい!
・更新応援してる!
・この使用人大好きだぜ!
と、少しでも思ってくださった方は【広告下の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にしていただけると嬉しいです!】
皆様の応援が夜分の原動力になります!
何卒よろしくお願いします!