もう遅いんだよ(ざまあ)
「急がなきゃ! 早く行かないと!」
俺たちは《超加速》を発動して、王都へと帰還を目指していた。
魔王軍が暴れているのだろう。轟音が遠くの方から聞こえてくる。
音がする度にエレアは涙を浮かべ、焦っている様子だった。
「私は王女なの! 絶対にみんなを守らなきゃいけないの!」
彼女は必死の形相を浮かべていた。
額には汗が滲んでいて、顔色は決してよくない。
とにかく急ぎ、どうにか王都の門付近までやってきた。
しかし……事態はかなり重いようだった。
「すごい数だな……」
門付近には、数多くの魔物でひしめき合っていた。
まるで海のように、波打っている。
門を絶対に踏破させないよう、多くの冒険者の姿も見える。
しかし状況はあまり良くないようだ。
なんせ、相手の数の方が圧倒的に多い。
あまりにも不利すぎる。
「私、行ってくる!」
「おい! ちょっと待て――」
手を伸ばそうとするが、エレアは先に行ってしまった。
……エレアは確かに強い。
けれど、これほどの量を相手するというのは現実的ではない。
あまりにも無茶だ。
「俺も行かないと……!」
そう言った刹那、背後から攻撃が飛んでくる。
「おいおい! 人間が一人でこんなところにいるぞ!」
「……邪魔するなよもう!」
目の前には数体の魔族がいた。
クソ……エレアがただでさえ心配だってのに!
「来るなら来い! 俺が全て叩き斬ってやる!」
「ひゃひゃひゃ! おもしれえ!」
「ならやってやるよぉ!」
「ミンチにしてやるぜ!」
迫りくる魔族に対して、俺は剣を引き抜く。
だが、数体の魔族を相手にするとなると少し時間がかかる。
《影縫い》。これは《影掴み》の上位魔法。
複数体の影を強力な力で地面に縫い付け、動けなくするものだ。
かなりの魔力を消費するが、これくらいどうってことはない。
「《桜一撃斬》」
剣を引き、そして一撃を放つ。
一瞬にして放たれた剣は相手の魔族を瞬時に葬った。
「苦労するな、全く……」
俺は嘆息しながら前方を見る。
多くの魔物の波。こいつらを処理しなければならない。
それよりも――エレアだ。
「まずはエレアを優先しないと……不味いよな」
「ええ。不味いです」
「はぁ!? ナミナ!?」
「お疲れ様です。現在、王都はかなり不味いことになっております」
いつの間にか、ナミナが俺の隣にいた。
気配なんて微塵も感じなかったのにいつの間に……?
「ひゃっはー! 女だ――」
「せい」
新たな魔族が出てきた瞬間、ナミナが蹴り飛ばした。
一撃。使用人が一撃で魔族を倒した。
「ははは……さすがだな」
「いえ。これくらい朝飯前です」
それよりも、とナミナが指を立てる。
「エレア様の状況がよろしくありません。急ぎで向かってください」
「わ、分かった!」
俺は魔物を迂回して、王都へと走る。
急げ……急ぐんだ……!
「おい! レインじゃないか!」
向かっている途中、何者かに声をかけられた。
無視しようと思ったが、あまりにも聞き覚えのある声で反射的に止まってしまう。
そこには、見覚えのある三人の姿があった。
「俺たちさ、魔物が攻めてきたってことで避難してたんだ! いやー、ちょうど良かった! お前に用があったんだ!」
「アルキ……? お前、どうしてこんなところに――」
とにかく今は急ぎたいので、話を切ろうとした。
が、急にアルキが胸ぐらを掴んできたのだ。
「早く俺たちにかけているデバフを解け」
「そうよ。早く解いてちょうだい」
「さっさとしてほしいな。ここで死ぬのはごめんなんだ」
「お前ら……何言ってんだ? 俺、デバフなんてかけてないぞ?」
そう言うと、アルキたちが目を丸くする。
まるで、現実なのかどうか受け止められていないかのようだった。
「う、嘘だろ……? それじゃあ、俺たちはなんで弱くなったんだ?」
「分からないけど……多分俺がバフを解いたのが関係するんじゃないかな?」
「ば、バフ!? お前、俺たちにバフをかけていたのか!?」
「そうだけど……いや、それよりも俺は早く行かないと――」
「待ってくれ……それなら僕たちが間違っていたのか」
「そ、そうだったんだ……私たちが……」
俺は状況が理解できず、ただ硬直するばかりだった。
彼らは一体、何を考えているんだ? 今、この状況で。
「な、なあ。レイン。お前は万能だったんだな」
「アルキ……急にどうしたんだ……?」
「ごめんよ、勘違いしていたわ。だからさ、パーティに戻ってきてくれないか? こんな危ない場所からはさっさと退散して、地元でもう一度やり直そうぜ?」
「お前、正気なのか?」
こんな状況を見て、本気で言っているのか?
今ここで逃げたら、地元に戻ったところで待っているのは地獄だ。
それに……俺はもう心に誓っているんだ。
一人の英雄を育てると。
「分かってますよ。レイン様のお気持ち。なので、私が代弁しますね」
「ナミナ――」
ナミナがアルキを蹴り飛ばした。
ふぅ、と息を吐いて睨めつける。
「帰りやがれ、です。邪魔です」
「な、ななな……!」
「早く行きましょう。時間がありません」
「あ、ああ……!」
俺はアルキを置いて、再度走り出す。
「待ってくれ! おい、ちょっと!」
背後からそんな声がするが、もう俺には関係ないのだ。
彼らと俺は、もう他人だ。
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