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昨日は更新できず申し訳ありませんでした。
お土産、買ってきました。「秘伝製法 お好み焼き なにわの味 せんべい お好みソース味 元祖 コテコテの大阪」ってパッケージに書いてあるやつです。美味しかったです。
淡い金色の光が、宙に浮かぶケテルを包み込んでいく。
対象はケテルのみなので、傍に浮いている本や戦車の残骸は吸収しない。
が、一緒に浮いていた色々な液体の玉は金の光に分解されつつある。それケテルの一部って判定になるのか。ちょっと嫌だな。でも下手にお残ししてそこから復活とかされても面倒だし、しょうがないか。
どうせなら、浮いている他のものも吸収しておこう。
「【貪り喰らうもの】、【貪り喰らうもの】」
こちらはもう完全に力尽きているのか、抵抗がまったくなく、先に放ったケテルよりも早く分解されて吸収出来た。本も戦車も有能だったし、あれらの能力が使えるとなるとありがたい。
ていうか何ならそれだけでいいまである。ケテル要らないな。
とはいえ、先ほどオデンに言い放った通り、【貪り喰らうもの】は途中で止められない。
途中で止められる仕様ならギーメルだってあんな事にはならなかっただろう。
吸収しない方が良いとわかっていてもやめられないのだ。やめられないとまらない、というやつである。
ということは、スナック菓子を食べる行為は何らかのスキルである可能性があるのか。この世界でも気軽に食べられるスナック菓子が誕生したら気をつけておこう。未知のスキルによって私の美しいスタイルが侵蝕される恐れがあると考えれば、十分に警戒の必要がある。あるかな。
とか下らない事を考えているうちに、ケテル本体の吸収も無事に終わった。
本と戦車の吸収では全く何も感じなかったくらいであったが、ケテルの吸収はさすがに重かった。と言っても物理的な話ではなく、なんというか、存在感というか、そのような曖昧な感覚の話だが。
あえて例えて言うなら、そう、お肉とお酒をしこたまヤッた中年の翌日の胃もたれの感覚、というのが近いだろうか。いやそんな経験ないので知りませんけど。
もちろん前述の通り物理的な話ではないので、胃もたれしていると言っても胃の中にものが詰まっているわけではない。
上手く言えないのだが、こう、どこか一部というわけではなく、全身にとっぷりと詰まっているような感じ。それこそ、髪の一本一本にまで──と、よく見たらキューティクルすごいことになってるな。キューティクルっていうか、これもう普通に光っているように見える。極細光ファイバーかな。
いや、違うな。
光っているように見えるということは、光を発しているということ。
つまり、エネルギーを放射しているということだ。
「……もしかして漏れちゃってるんですかね、これ」
最悪だ。食べ過ぎた挙げ句にお漏らしとか、外聞が悪いにも程がある。
しかし本当に最悪だったのはそれからだった。
私がエネルギーの自然放射に気づいた瞬間、その放射エネルギー量が跳ね上がった。
具体的に言うと、全身がめっちゃ光り出した。
止めなければ。でもどうやって。
そう考えている間に、私の放った光は爆発的に、文字通り光の速さで広がっていってしまった。
目で見えたわけではない。しかし、何となく分かる。
私の光は一瞬でこの魔大陸を埋め尽くし、それでも足りずにマルゴーを飲み込み、インテリオラを覆い、オキデンスに、メリディエスに、さらに海を飛び越え見知らぬ大陸にまでも広がっていった。あ、海は避けるんですね。
そうして全ての大地を私の光で満たしたとき。
私の脳裏に、世界に根を張る極彩色の大樹のイメージが現れた。
ただのイメージではない。
これは、確かにここに在る。いや、どこにも無いが、どこにでも在る。
なるほど。これが宇宙怪樹か。
そしてその極彩色の宇宙怪樹の中心には、一際まばゆく白金色に光る檬果が浮いていた。
いや、他の果実は林檎なのになんでこいつだけマンゴーなの。
ツッコむ間もなく、マンゴーはどんどんその光の強さを増していく。
さらにその光はやがて大樹の幹を侵蝕し、樹の表面に罅を入れ始めた。
いくつかの林檎が光に飲み込まれ、マンゴーへと変質していく中で、樹の幹の罅割れもどんどん大きくなっていく。
そして全ての果実がマンゴーへと変わった頃。
罅割れていた幹の外皮は弾け飛び、中から白金色に輝く新しい樹が生まれた。
そして同時に、文字通り世界が塗り替えられていくのを感じる。
私の光は魔イナスイオ素の光。
塗り替えられているのは元々世界に満ちていたエネルギー──魔素だ。
そう、この星に存在する、全ての魔素が魔イナスイオ素に変化したのだ。
それは瘴気も例外ではない。
あれは元々、魔素とこの惑星の原生種が互いに適応しあい、変質したもの。
魔素が全て魔イナスイオ素に置き換えられれば、自然と瘴気も変化する。
それはまるで、魔イナスイオ素が「生命溢れる生物」に触れ、作り替えられてしまったかのような──そういうの、なんて言うんだったかな。細菌的なやつが頑張った結果食材がいい感じになるやつ。
ああ、思い出した。発酵だ。
「これからは、この新しい瘴気を腐ラスイオ素と呼称することとしましょう」
何となく察しておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、そろそろ一旦締めようかと思っております。




