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美しすぎる伯爵令嬢(♂)の華麗なる冒険【なろう版】  作者: 原純
レディ・マルゴーと太陽の果実
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22-25





 生み出した魔イナスイオ素の渦に飛び込む。


 やってきたのは前回と同じ森だ。

 前回は自転の影響なのか何なのか、目標地点からややずれた場所に移動してしまったものだったが、魔イナスイオ素の扱いに慣れた今、そのようなヘマをすることはない。


「……マジで一瞬で移動してやがる……」


「……あの渦、例の魔物化事件の渦だよね? 僕ら、大丈夫なの? 魔物になってたりしない?」


「安心しろルーサー。俺の目にはいつも通りに見えてる。ところで俺は魔物化してたりしない?」


「……魔物化しているようには見えない。が、実は俺もすでに魔物化していて、だから魔物を見ても異常を感じられないようになっている、という可能性はあるかもしれん」


 そういえば、あの渦をマルゴーで最初に発見したのは私と『餓狼の牙』だった。懐かしいな。

 しかし安心して欲しい。あれは瘴気を利用して作られ、しかもろくに制御もされていなかったから魔物化や魔物強大化なんて現象が起きていたのだ。

 優しいギーメルおばさんから魂ごとノウハウをいただいたので、渦の扱いについては自信がある。


「……そうか、あの時。ギーメルとかいうゴーストがやっていた技術か。そいつを人間用に改良したんだな」


 人間用に改良した覚えはない。

 これは元々、そういう技術だったのだ。ただ、ギーメルの研究が甘く、使い方が拙かっただけで。

 瘴気などではなく純粋な魔素を大量に注ぎ込めば、魔素に適応した生物ならば問題なく通過できる。


 魔イナスイオ素をきちんと認識してからは、どうやら私が魔素を集めると全て魔イナスイオ素になってしまうらしい事がわかっている。

 なので、私が渦を生み出すと基本的に魔イナスイオ素の渦になる。

 この魔イナスイオ素は性質的には魔素でも瘴気でもなく、またどちらにも似たところがあるため非常に便利で、魔イナスイオ素を利用して渦を生み出した場合、魔イナスイオ素に適応していない生物でも自動的に適応させて転移してくれる便利機能が付いている。

 深く考えた事が無かったが、おそらくは瘴気の侵蝕機能が関係していると思われる。ギーメルの渦の魔物化現象は瘴気のその性質のせいだろう。その点魔イナスイオ素はクリーンでサスティナブルなエネルギーなので、魔物化とかはしないから大丈夫。


 どうせ報告されないからと、そういった説明を大雑把にユージーンたちにしてあげた。彼らの精神の安定のためだ。魔物化なんてしないとわかれば安心出来るはずだ。


 と、思ったのだが、話を聞いた『餓狼の牙』は微妙な顔をしていた。


「なるほど……。後戻り出来ないとは、そういうことか……」


「……大丈夫、大丈夫だ。色々……色々諦めれば……きっと楽になれる……」


 本当に大丈夫なのかな。リボ払いの弁済金増えてるんじゃ。





 ◇





「……やはり、あの時のままだな」


 私が『餓狼の牙』に適当な説明をしていた間、クロウは周辺の様子を調べていたらしい。

 この辺りにはやはり以前にクロウと妹さんの研究所があったらしく、その瓦礫のようなものが残されていたようだ。

 ただし研究していた大型魔導具の残骸は全て持ち去られてしまっているようで、その事からも国がここで起きた事件を重要視している事は間違いない、との事だった。


「とりあえず、移動しましょうか。ここには何も手がかりが無さそうな事がわかりましたし、ここにいても仕方がありません」


 とは言え、どこに向かったものだろうか。


「まずは大切なのは情報よね。王都とかなら情報も集まるだろうし、目指すは王都かしら」


「王都と言うのは、王がいる都ということだな? レクタングルに王は居ないから、王都はないぞ」


 グレーテルの言葉にクロウが訂正を入れる。バレンシアも頷いている。

 レクタングルというのは国の名前だったのか。そして、王政ではないのか。


 詳しく話を聞いてみると、レクタングルはどうやら共和制の国であるようだ。共和制や共和国といった概念はインテリオラ語にはなかったので、そこはニュアンスで伝わっただけになるが、おそらく間違いない。

 ただし、政権を掌握しているのは特定の4つの貴族家だけであるらしいので、共和制とは言ってもごく原始的な寡頭政治、4家によるものならテトラルキアとか呼ばれるものだろうか。共和政ローマ時代の元老院みたいなものだと思われる。


 そしてなんと、その4つの貴族家というのが、バレンシアをマルゴーに置き去りにしたあの猿獣人の4人の生家の公爵家であるらしい。あの猿獣人たちは公爵ゆかりの者だったのか。バシャバシャと海を走って渡っていく姿からはあまりそういう印象は受けなかったが。


「レクタングルの首都ならば、おそらくあちらの方角だ。研究所に物資を運ぶ連絡路があったはずだから、その跡地を探せばたどり着けるだろう」


「では、そちらに向かいましょう。道路を見つけたら一度インテリオラ王都に戻って馬車も持ってきましょうね。歩くのもあれですし」







私事で恐縮ですが、明日3回目のワクチンを接種しますので、明日とあと念の為明後日の2日間、お休みさせていただこうかと思います。

2回目のときも結構高熱が出て大変でしたので……。

次回は3/24(木)に更新いたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔物にはならないけども まあ、知らない方がいいか?ルーサーとかそろそろ女装に王手かかってそうだし
[一言] 『餓狼の牙』は割と理論派のインテリ集団なので、これまでにお嬢ナイズされた面々と違って自分が以前の自分とは異なっているという自覚症状がありそうですね。あと可哀そうだからリボ払いの呪い解いてやれ…
[良い点] 更新ありがとうございます!! 魔イナスイオ素のフレーズが渋滞してますねw 諦めのリボ払いがヤバそうな事にならないと良いけどw [一言] 本日3回目のワクチン接種受けて来たとこです、副反応…
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