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美しすぎる伯爵令嬢(♂)の華麗なる冒険【なろう版】  作者: 原純
レディ・マルゴーとメリディエス王国関連団体(仮)
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20-27

申し訳ありません。

予約投稿したつもりが最後のボタンを押してませんでした(





 脇腹を突かれた私の変声は置いておくとして、これで事件の全体像が見えてきた。

 『正義』が叫んでいたという「白い霧」はおそらく加湿器から吹き出すスチームだ。魔イナスイオ素がたっぷり含まれており、美容に良い。

 前述の通り、元々洗脳対策としてグレーテルと二人で少々のおまじないをかけたのだが、魔導具の不良具合とおまじないの強さがちょっとだけ許容量を超えていたせいでおかしなことになってしまった。

 結果、霧を吸った人間は白い霧の正常さについてしか考えられないようになり、しかも軽度の依存性すら現れるようになってしまった。アルコールや薬物などと違い1日程度で依存性から脱せられるから問題ないと思ってユウキ、『審判』たちにプレゼントしてしまったが、十分問題があったようだ。

 わかりやすく言うと、アンチウイルスソフトを入れたと思ったらそれ自体がウィルスだったみたいな話である。そう考えるとよくある話なので、心がちょっと軽くなる。


 次に、もうひとつ『正義』が叫んでいた「炎」。

 これはおそらくタベルナリウス商会が取り扱っている廉価な薪のことだろう。

 あれにもちょっとしたおまじないをかけている。

 正確に言えばあれを製造するための乾燥機にかけたのだが、まあ誤差だ。


 一応、加湿器のときのことを考えて控えめにかけておいたのだが、どちらも私が関わっているからか、薪の炎による鎮静効果が加湿器の洗脳防御を侵食してしまったようだ。霧と炎を交互に叫んでいるのだから、たぶんそう。ていうか全然鎮静出来てないな。やっぱ霧に負けてるのかな炎。でも霧が勝ってたらおかしくなったりしないはずだし。いや、白い霧に依存している状態というのは十分おかしいけど。


 こと、ここに至ってはもはや認めるしかあるまい。


 メリディエス王国に混乱を引き起こした第三の黒幕。

 それは──


「──グレーテル、ですね」


「違うでしょ」


「ひゃん!」





 ◇





「なるほど……。皆、ボスの手のひらの上で踊っていただけだったというわけか」


「いえ、私は全く認識しておりませんでしたので、どちらかと言えば脱いで放っておいた手袋の上で皆様勝手に踊っていらした感じでしょうか」


「なお悪いわよ」


 話を聞く限り、そして自分のやらかした事を鑑みる限り、ほとんど1人だけ一方的な被害者になってしまった挙げ句に腕まで失ったインベルはというと、どこか達観した様子で苦笑するに留まっていた。いや、クロウとお揃いのサイクロ──サングラスのおかげで表情はいまいちわからないのだけど。


「……あまり実感はありませんが、なんだか申し訳ありません、インベル」


「いえ。そういうことでしたら、私は初めから失敗していたのだな、と痛感していただけでございます。

 我らが古巣、アルカヌムは分不相応にもマルゴー家に挑み、敗れ去りました。その轍は踏むまいとメリディエスをアジトに定め、アングルスに調略をかけたのですが、そちらにはすでにマルゴーの息がかかっていた。もはや、これは運命なのでしょう……」


 嫌な運命もあったものである。

 というか、初めから失敗していたというのなら、アルカヌムに関わった時点でもう失敗だったのでは。


「ところで、『正義』を正気に戻す事は出来るのか? 扱いにくいやつだったが、あれでも古馴染みだ。あのような哀れな様子のままでいさせるのはいささか……忍びない」


 『死神』がそう漏らす。

 え、そんなに悲惨な状況だったのか『正義』は。

 それとも薬物やらなにやらで精神の均衡を崩すような人間があまりいないのかな。

 確かに魔素だの魔力だのがあるせいか、この世界の人間はやたらと頑丈な印象がある。長生きなのもそうだ。単純に寿命が長いというだけでは実際の平均寿命は伸びたりはしないし、怪我や病気に罹ればいくら生物的に寿命が長かろうとあっさりと死ぬ。魔物という身近な危険が溢れているのならなおさらだ。

 そう考えれば、やはり前世の人間よりもかなり頑丈に出来ているのだろう。

 それはおそらく脳や精神にも言えることで、そのおかげで依存症のような症状が出る人間が少ないに違いない。

 まあ、それでもアルコール中毒患者はまれにいるようだが。


「大丈夫ではないでしょうか。白い霧については、以前にアングルス辺境伯の御一家も汚染された事がありますが、1日程度で依存症は抜けておりました。それほど強い効果はないと思いますし」


「……いえ、ちょっと待って、ミセル」


 しかしグレーテルから待ったがかかった。


「アングルス邸でのあれは、ほんの数時間のことよ。まあアングルス邸の住人の皆さんに関しては会談前からだったから少し長かったかも知れないけれど、それでも1日は経っていないはず。

 よく考えてみて、ミセル。通常、お酒に溺れて身を持ち崩す方というのは、長年に渡って相当量のお酒を飲んでらっしゃるのではないの? たった数時間であそこまで依存してしまうとなると、それって相当な依存性があるんじゃ……」


 なるほど。確かに。

 数時間吸っただけでその事しか考えられなくなってしまうとか、普通にやばい薬物だ。

 それを数日から数週間に渡って吸い続けたとなると、どうなのだろう。元に戻せるのかな。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 【わかりやすく言うと、アンチウイルスソフトを入れたと思ったらそれ自体がウィルスだったみたいな話である。そう考えるとよくある話なので、心がちょっと軽くなる。】 例えが面白すぎる いや、ア…
[良い点] めずらしくやらかし自覚したw
[良い点] 更新ありがとうございます!! 300話もおめでとうございます!! 知らずにウイルスを広めてしまってる事はよくある話しだけど、そのウイルスの制作者となる間違いなくと主犯扱いですねぇw 今回率…
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