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美しすぎる伯爵令嬢(♂)の華麗なる冒険【なろう版】  作者: 原純
レディ・マルゴーと月に替わって推しを起用
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19-15





 となると、モリガン嬢がまともであったのは彼女の母親の給金がそれなりに良かったからか。

 しかし、だとすれば生徒会長本人がこうして毒牙にかかってしまっている現状が腑に落ちない。

 以前に生徒会室で話した時は、もう少しまともであったというか、噂に踊らされつつもそれなりに判断力も残していたように思えるのだが。また噂に踊らされていた状況も、学園内の情報が集積される生徒会であればある程度は仕方がない事だ。しかも彼は着任からそう時間が経っておらず、情報の取捨選択がまだ上手く出来ていないであろう時期だった。


 私のその思いを表情から読み取ったのか、自称夜を統べる者さんは片眉を上げた。


「──フ。もちろん、この青年にも防御策が講じられていた事はわかっている。だが無駄だ。さすがにこうして私が直接意識を降ろそうとするなら、密度の低い魔イナスイオ素など簡単に吹き散らせる。そのくらい、貴女ならわかっているだろうがな」


 だから真面目な顔で魔イナスイオ素とか言うのはやめて欲しい。もう私が悪かったから。


「もちろん、敢えてこの青年を選んだのには理由がある。この場所がこの王都で王城の次に天空に近く、この場所に入れる者の中でこの青年が最も防御が薄かったからだ」


 いや生徒会長でも本来は入れない場所だ。一般学生よりはハードルは低かろうが。

 そういえば、教師陣には日頃の感謝も込めて我が社の商品を少なからず無償で提供していた。学生が金銭を教職員に送るのはさすがに褒められた事ではないが、領地の特産品をプレゼントする程度なら目溢しされている。うちの場合はそれが美容商品だっただけだ。

 それら学園上層部を除けば、生徒会長が最も天に近かったという事だろう。

 まあ屋上の鍵は別にそこまで厳重に管理されているわけではないし、教職員からそれなりの信頼を受けていれば、盗み出すのは難しくはないのかもしれない。


 また、王都で最も高い王城を選ばなかったのも同じ理由からだろう。我が社の最大の取引先はその王城なのだから。

 おそらくはあの王城で働く侍女やメイドの中で、我が商品を使用したことのない者はひとりとして居まい。

 また最近売り出し始めた魔導加湿器も、販売実績から類推するにかなりの部屋に設置されているはずである。

 魔イナスイオ素が本当に幻惑に対する防御能力を備えているならば、この王都において王城は工場区の次に幻惑にかかりづらいエリアであると言えるだろう。


 それと、依代がどうとか言っているが、それが仮に私のこのミセリア・マルゴーの美しい肉体のことだとすれば、魔イナスイオ素に関しては依代とやらの力すら一切使っていない。主に使ったのは財力と従業員の労働力である。

 そもそも私はこの世に生まれた瞬間からミセリア・マルゴーだったので、急に依代とか言われても困る。

 今のその、生徒会長に月の精霊が憑依している状態を依代を使っている状態だとするのなら、私はちょっと違う気がする。出たり入ったり出来ないし。あと特別に重たく感じるとか不便に思う事もないし。

 まあ、この間衛星軌道上の小石をにぎにぎした時の開放感に比べれば多少はアレかもしれないが、普通に考えたらあの状態の方が異常だろう。


「情報戦では攻めきれなかったが、依代同士ならば制限は互角。加えて今は夜であり、ここは天にも近い場所。

 つまり、貴女はまんまと我のフィールドにおびき出されたと言うわけだ!」


 なるほど、夜を統べる者だから日が沈むまで待っていたのか。

 以前に魔大陸でゲブラーとやらかした時も確か夜だったが、ゲブラーは別に夜だけ元気なわけではない。

 それを考えると、このイェソド生徒会長は夜に限ればゲブラーよりも強敵なのかもしれない。


 会長は高く跳び上がり、そのまま空中に浮遊した。


 そんな事が出来るのか、とびっくりしたが、私もボンジリに頼めばやれないことはないな。


「──今宵、私は貴女を打ち破り! 貴女の後塵を拝するしかなかった惨めな自分と決別する!

 受けよ! 【ルナティック・タイダル】!」


 私は戦うとも何とも言っていないのに、なんか急に始まってしまった。黙っていすぎたのがいけなかったか。


 巨大な月から銀色の魔素がイェソドに降り注ぎ、イェソドの両眼が銀色に光る。

 何だかよくわからないが、とにかく凄そうな雰囲気だ。


 これはやばい、と感覚的に感じたが、特に何も起こらなかった。

 不発かな、と思っていると、背後からグレーテルの悲鳴が聞こえた。


「──きゃあ!」


 慌てて振り返ると、グレーテルが扉にもたれ掛かるようにして座り込んでいた。


「どうしたのですか、グレーテル!」


「……どうしたの、って……あんな、津波の大魔法なんて受けたら……。って、ミセルは平気なの?」


 津波の大魔法なんていつの間に食らったのだろう。

 状況からしてイェソドの【ルナティック・タイダル】がそれなのだろうが、私の後ろに発生させてグレーテルだけを攻撃するとか器用にも程があるな。






例年通り(と言っても本作は連載始まってからまだ1年経ってませんが)、年末年始はお休みをいただきたいと思っております。

12/31、1/1、1/2、1/3の4日間は投稿をお休みして、年始は1/4より再開いたします。


なお、あっちに投稿している黄金の経験値改訂版の方は年末年始も一日3回~4回投稿をしておりますので、お時間のある方はぜひ。

体感ですが、結構手を入れている印象です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 美容器具から放出される魔イナスイオ素のおかげで噂が広がりきらない。だからこそ、女性より男性の方が噂に振り回されやすく、節約する必要がある世帯よりも節約しないでいい世帯の方が噂に振り回されずに…
[一言] 魔イナスイオ素… 勘弁してください 面白すぎです
[一言] メインの攻撃手段は幻術っぽいやつのようですね 悲しきかな、お嬢に対して無力でしかない やはりキャラ相性の壁は大きかったのか…
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