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美しすぎる伯爵令嬢(♂)の華麗なる冒険【なろう版】  作者: 原純
レディ・マルゴーと消えた世界一の美少女
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18-13





 私が知っている入学パーティは私が入学した時のものだけなので、今回もあれに似た形式のものになる。

 企画書を作ったのはエーファだが、エーファも私と同い年なので似たようなものだ。


 まだ開会前だが、会場にはすでに着飾った在校生たちが新入生の噂に花を咲かせている。

 と言っても在校生の全てが参加しているわけではない。


 去年の新入生、つまり2年生は基本的に参加が許されていない。

 しかし私たち催事運営委員や生徒会、他にも重要な役職に就いている者や各クラブ活動の主要なメンバーは参加が義務付けられているため、2年生であっても参加している者はいる。

 それと、最高学年の学生は自由参加だ。なので私たちの同級生はかなりの数の学生が参加していた。


「そろそろ、新入生の入場ね。貴女の妹さんも参加しているのでしょう?」


「ええ。先日会わせましたね」


 グレーテルにちら、と視線をやる。


 学園行事とはいえ、さすがにパーティ用におめかししたグレーテルの美しさは圧巻だ。素の状態のフィーネではまだまだ太刀打ち出来ないだろう。

 フィーネも一応社交界に出てはいるが、まだ子供用というかそこまで気合を入れてめかし込んではいないので、今のグレーテルの域に達するには今しばらくの時間がかかるだろう。

 まあ当然言うまでもなく、私はそれらより遥かに美しいわけだが。


 今日のフィーネのメイクはどうなのだろう。

 まだ未成年ではあるが、学園に通い始める事をひとつの転機として、このタイミングから大人向けの装いに合わせる令嬢は結構いる。

 誰も彼もが私のように何のメイクもしなくても美しいわけではないので、ここは重要なターニングポイントである。


 いつもなら朝起きた瞬間から私から離れようとしないフィーネなのだが、今日はまだ会っていない。

 準備もメイクも母の方でするとの事だったし、私は私で会場の準備もあったので、別々に登校する事にしたのだ。


 しばらくそうして雑談をして過ごしていると、やがて新入生の入場開始の時間になった。

 私たちの時と同様、始まってもぱらぱらとだいたい爵位順に入ってくるだけで、特に何かがあるわけでもない。


 私もそれとなく入場者を観察していたのだが、おかしい。

 フィーネの姿が見えないな。


 入場開始時からずっと見ていたと思うのだが、結局最後の新入生が入場してしまってもフィーネの姿は現れなかった。

 しかし、いつの間にか母は会場の隅にいた。入学パーティは保護者も来賓として会場の隅で参加出来る。私の時は無かったし、あまり爵位が高すぎるとおいそれと参加出来なくなるが。

 ずっと見ていたのに母を見逃したのは、私がドレスを着た若い女性だけにターゲットを絞って注意していたからだろう。別に母が若くないという意味ではないが。


 母がいるのであればフィーネもすでに会場にいるはずだ。

 なぜ見逃してしまったのかはわからないが、母が平然としているのなら別に問題はないのだろう。


 そのままちらちら新入生の女の子たちの顔を見ながら、パーティの進行を見守っておく。

 たまに目が合ってしまう子もいるが、私はともかく、新入生は私なんて見ていないでちゃんとパーティに集中して欲しい。

 それを注意する意味も込め、目が合った女の子には「めっ」という風に口を動かして微笑んでおく。そうすると女の子は赤くなってうつむいてしまうので、結局パーティには集中してもらえないのだが。

 さすがは私である。その美しさは性別をも超越するのだ。

 いやおかしいな。本来の性別の組み合わせ的に考えると何も超越していないような。


 パーティというか式典はつつがなく進行し、やがてフリーのダンスの時間がやってきた。


 まあこのパーティはダンスがメインなので、その前の式典などあってもなくても実は同じだ。今回は私たち催事運営委員会が段取りをつけているので、出来ればちゃんとしていて欲しいなという程度である。


 フリーのダンスの時間になってもフィーネの姿は見つからない。


 すでに踊っている学生たちの邪魔にならないように、キョロキョロしすぎない程度に会場を見回しながら歩いていると。


「──ああ、何という美しさ。これほどまでに美しい方が、こんな掃き溜めにいても良いのだろうか。いや良くない。

 貴女のように美しい方には、もっと相応しい場所があるはずだ。そう具体的には私の隣とか」


 突然、そんな声が聞こえた。

 特に名前を呼ばれたわけでも目が合ったわけでも無かったが、セリフに美しいとか入っていたのできっと私に話しかけているのだろうと振り返った。何しろこの会場には私以上に美しい存在はいないので。宇宙ではなく会場に限定したところが今回の謙虚ポイント。


「振り向く所作さえ美しい……。

 どうか、この私と一曲踊ってはいただけませんか、レディ」


 そこには、長い髪を後ろでひとまとめにし、貴公子然としたタキシードを着た、見覚えのある仮面を付けた少年が跪いていた。


 なるほど。

 ドレスを着ていなかったのなら、私が見つけられなかったのも仕方がない。


「……何をしているんですか、フィーネ」


 仮面でよくわからないが、私が今まで見たことがある貴公子の中でおそらく最も美しい姿だ。

 まさに、世界一美しい美少年(♀)といったところか。


 ていうか、さっきさり気にこの会場ディスってなかったかな。一応催事運営委員のみんなで頑張って準備した会場なのだが。

 これは後で叱っておかないと。






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― 新着の感想 ―
[気になる点] ふと思ったんですけど、ミセリアが不思議パワーで永遠の美少女なのはいいと思うんですけど、一般人の場合マルゴー家の一生女性として生きていくっていう方針流石に厳しくないですか?声変わりとか笑…
[一言] 前話で「フィーネ」ではなく「世界一美しい美少女♀」の最後の笑顔だと言っていたのはそういうことでしたか。すっかりフリッツ兄様とハインツ兄上を足して割ったような感じに育ってきましたね。
[良い点] やっぱりそうなってしまうのか……w
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