18-3
私はホッとした。
よかった。私が何かしたとか疑われているのかと思った。
なんか深刻な口調で詰問してくるから、悪いことでもしてしまっただろうかとビクビクしてしまった。いやしてるんだけども。
親に真剣な表情で問いかけられるというのは、どうしてこうも緊張するのだろう。
まあ私のせいにならないのであれば何でもいい。
私が見た光景でいいのならばいくらでもお答えしよう。肉眼で見た光景だけだけど。
そういえば肉眼じゃない謎感覚で見た景色とかは、たぶん光を感知して見ているわけではないと思うのだが、そういう場合も光景って言うのかな。謎。
「お父様は、隕石というものをご存知でしょうか」
「隕石だと……?」
おや、知らないのかな。
確かに、めったに落ちてくるものでもないし、インターネッツとかが無いこの世界では、遠くに落ちた隕石の情報なども簡単に得る事は出来ない。知らないのも無理はない。
衛星軌道上には小惑星帯のようなものもあったし──のようなものというか、私が落としたやつもそこから拾ってきたのだが──もしかしたら星と月の引力の関係で、周辺宙域に飛来する流星もその小惑星帯に絡め取られてしまうのかもしれない。そのせいでそもそも隕石自体ほとんど落ちてこないとか。
何にしても、知らないのならば教えてあげよう。
私は父に隕石について語った。
が、途中で遮られた。
父は考え込むように顎に手を添えて呟く。
「──まさか、神罰とは隕石落下の事なのか」
隕石知ってるのかよ。なんなの。
黙っていたのは、神罰の正体が隕石の落下であったことに驚いていたからのようだ。紛らわしい。やめていただきたい。
「しかし隕石落下は確かに珍しい事だが、ないわけではない。たかが石ころが落ちてきた程度で神国を席巻していた竜騎士たちが撤退するとは思えんし、女神教も神罰だのと大層なことを言うとは思えん。
……せっかく、小鼻を膨らませて得意げに語ってくれたミセルには悪いが」
言わなくてよくないそれ。なんなのマジで。
「お父様はご存知ないかもしれませんが、隕石には様々なサイズがあります。今回神国に落下したのは、とても大きな──具体的にはわかりませんけど、とにかくめっちゃ大きなやつです。それが落ちてきた衝撃で竜騎士の方々は全滅し、神国の土地も焦土と化しました。お父様の推察通りなら、神国もあの惨状はさすがに隠しきれないと思って神罰をでっち上げたのでしょう。隕石の落下自体は自然現象ですから、万物を司る神の御業だと語ったところで違和感はありません。サイズの異常さはともかく」
「わかったわかった。恥ずかしいのはわかったから、そう早口で話すな」
「……もういいです」
私は席を立った。
父の話に付き合っているのはこのような辱めを受けるためではない。
「すまんすまん。私が悪かった。座ってくれ」
仕方なく、再び椅子に座る。
「とにかく、落下した隕石が普通の大きさでないことはわかった。それで、めっちゃ大きい、というのはどのくらいなのだ。具体的にはわからんと言っても比較できそうな何かくらいあるだろう」
私が具体的にわからないと言ったのは、手のひらで握った時の感触と落ちてきた小惑星のサイズがあまりにも違いすぎて混乱したからだが、改めて何かと比較してみろと言われたら出来ない事はない。
遠目に見た、ゆっくりと落ちてくる岩の塊。
あれに近いサイズのもので、私も父もよく知っているものと言えば。
「……インテリオラの王城と同じくらいでしょうか」
「めっちゃ大きいな! 大災害ではないか!」
めっちゃ、って、私の表現が伝染ってしまったのかな。若いなお父様。
それと、隕石自体公表されているわけではないので父も知らないようだが、その王城サイズの隕石が全部で4つです。
聞かれてないので言わないが。
◇
私から話を聞いた父は、翌日になると朝早くから王城に出かけていってしまった。実際に王城を見て大きさのイメージを掴みたいのかな。あるいは国王陛下に報告に行くとか。
まあ父の事はどうでもいい。
それより問題なのは、私が帰ってきてからもう何日も経つというのに誰も会いに来てくれない事だ。
いいかげん暇だし、何より寂しい。
なぜ誰も来ないのだろう。
グレーテルはどうか。
王族なのだし、私が帰ってきている事はすでに把握しているはずだ。
ただ、彼女は私と同じく本来表に出る事がない王女。
王族として得られる情報の全てを得ているかどうかはわからない。
なるほど。意地悪で情報を遮断されているのかもしれないな。
ならしょうがない。
ユリアはどうだろう。
彼女は私の経営上の師匠でありパートナーでもあるタベルナリウス侯爵の娘だから、侯爵を通じて私が帰ってきた事はわかっているはず。
でもそういえば、工場へ視察に行こうと考えていて結局行っていないな。
工場街は何度か馬車で通過したから、工員たちは私が帰ってきた事を知っているだろうが、そこから侯爵まで話が行ったかどうかはわからない。
となると、ユリアが私の帰還を知っているかというと疑問である。
これもしょうがないな。
ジジとドゥドゥは聞いているだろうか。
これは間違いなく知っているはずだ。
アマンダは部下思いだから、帰ってきてすぐに旅の無事を部下たちに報告しただろう。
であればそこからジジたちにも話がいっただろうし、場合によってはジジたちもアマンダと会っているかもしれない。
ならばなぜ会いに来ないのだろう。
「……何か、理由でもあるのでしょうか」
私ほどには美しくない、でも一応国一番くらいには美しい、双子の男の娘が私に会いに来ない理由か。
「……私の美貌が恐れ多い、とか?」
あるいは、私に会いに来る時間もないほど忙しいのか。
いや確かに進級試験はそろそろのはずだが、ジジたちの成績ならば今更焦って勉強しなければならないことなどないはずだ。
取り急ぎ、章題を策定いたしました。
なお予告なく変更される場合がございます。
あと私事で恐縮なのですが、12/3、12/4の金曜日土曜日はちょっと旅行に出かけるため、さすがに更新したり感想返しをしたりする時間が取れなさそうなので、申し訳ありませんが更新をお休みさせてください。
よろしくお願いします。




