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クロウの訓練に並行しての事だが、学園では学園祭を開催しなければならない時期になっていた。
私を始め第二学年の第一クラスには催事運営委員会に所属している者が多いので、ここに学園祭の実行委員会の本部が置かれる事になった。
学園内に存在するあらゆる団体にはすでに通知がされている。
荒削りながら去年にも一応似たような事は行なわれているので、一年目の学生たち以外は何となく雰囲気はわかっているため、すでに催し物の申請がいくつか届いていた。
結局、実行委員会として行なうイベントはミスコンに決まった。
ミスコンという言葉は私がそう呟いたのでそう決まっただけで、こちらの世界では特に意味はない。
なので年齢性別種族問わず、学園に籍がある者であれば誰でも参加できるビジュアル系コンテストになった。
なので学園では、ミスコンのミスは私の名前のミセリアを冠したもの、つまりミセリア・コンテストの略であるというふうに認識が広まっているようだった。前世の競馬の天皇杯とかそういうのと同じノリだと思われる。
評価のポイントはもちろんビジュアルによって決まるが、美しさには限定していない。
人の外見的な価値観は普遍的美しさのみに左右されるわけではない事は私にもわかっている。
それを踏まえた上で、ビジュアル的にインパクトさえあれば高得点を与えるように審査員には周知する予定だ。まだ審査員も決まっていないが。
服装や髪型、小道具などの制限も特に設けていないので、容姿に自信が無い者でも工夫次第で上位入賞を狙えるかもしれない、というわけだ。
いくつかの申請にはダメ出しをし、可能であれば修正指導をして受理し、要点を押さえている申請には許可を出して、学園祭の準備は着々と進んでいった。
◇
実行委員は私以外は慣れているわけではないので、皆緊張しながらやっているようだった。
とは言え指示は私が出すのだし、ちゃんと聞いてやってくれれば問題ない。
「──教室を利用するグループには、机と椅子に教室番号を明記しておく事を徹底させて下さい」
教室を催し物に使う場合、そこにある机や椅子は当然邪魔になる。
学園祭の間はどこかへ移動しておくことになるが、戻す際に数が間違ってしまったりすれば問題だ。
「こうしたイベントで最も重要なのは、終わった後の原状復帰です。これを怠ると学業などにも影響を与える事になり、次回以降の学園祭の開催が危ぶまれる事になります」
というか、元々別に私がやりたかったわけでもないし、むしろその方がいいのでは、と一瞬思ったが、すぐにその考えは捨てた。
一度引き受けた仕事に手を抜いて、イベントを台無しにするというのはとても美しい行ないとは言えない。
本当ならイベント前の各地の状態を全て写真で撮影しておきたいところだが、カメラがないので仕方がない。
今思えばスマートフォンって超便利だったな。
持ってたら毎日自撮りしていたかもしれない。
今度クロウに作れないか聞いてみよう。
学園祭も開催前日になると、各グループの準備も大詰めを迎える。
すでに終わったグループは最終調整やテストなどで、またまだ終わっていないグループは最後の追い込みをかけるべく、遅い時間まで学園に残って作業をしていた。
校舎や校庭のそこかしこで学生たちが動き回る姿は、なんとなれば普段よりも人数が多いような気さえしてくる。
いや、気の所為ではない。
学生たちの家に仕える護衛や従僕がいつもより多いのだ。
全ての学生が学園祭に参加するわけではないが、前年に行なわれたお祭り騒ぎを知っている学生たちは高位の貴族でもけっこう参加していた。まあ、作業は従者に任せているが。
こちらとしても学生だけで準備が出来るとは思っていないので、申請の際はそのグループの家の力まで含めて可能か不可能かを判断していた。これはグレーテルやユリアが詳しいので助かった。
そうした力が使えないと意味がないので、学園祭の準備に限っては許可を取った上で学園内に入れるよう調整がしてあった。普段は学生ひとりにつき1人までしか従者を入れられないルールなので。
何か事故や予期せぬ事態があると困るので、実行委員を数名ずつのチームに分けて校内を見回る事にした。
「すごいわね。去年は突発だったから校舎の中までは使わなかったけど、今年はいきなり学園全体を巻き込んじゃったって感じ」
私と組になったグレーテルが、準備の様子を視察しながらそう言った。
そうか。私としては学園全体を使って学園祭をするのは普通の考えだったのだが、去年は校庭のしかも一部を使っていただけだった。それと比べると、確かにいきなり規模を拡大したように感じられるかもしれない。
実際はこの学園は学生の数に比べて敷地面積が広すぎるので一般立入禁止とする区域の方が多いのだが、特定の施設に偏らないよう学園内の様々な場所が会場になっている。
そうしてグレーテルと2人、いやディーとグレーテルの従者もいるので4人だが、その視察チームで歩いていると。
「──だから、なんで入れねーんだよ!」
近くの廊下から何やら騒ぎ立てるような声が聞こえた。
「あら? あらあらあら! 事件みたいだわ! 行ってみましょう!」
「え、なんでちょっと楽しそうなんですか」
これ絶対面倒ごとだと思うのだが。




