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美しすぎる伯爵令嬢(♂)の華麗なる冒険【なろう版】  作者: 原純
ドクトル・アルティフェクスと狂気と峻厳
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 ベルナデッタは研究室を引っ越した。


 もちろん、研究資料や機材ごとである。今の所の唯一の完成品であるデウスエクスマキナも一緒だ。

 敷地や建物は全て国が用意してくれた。

 これもコンペティションで勝った研究者への支援の一環らしい。


 以前の研究室にも思い入れがあったので引っ越しには抵抗があったのだが、そちらはそちらでそのまま残しておいてもいいと言われた事で最終的に引っ越しを承諾した。ただし、そちらの研究室には研究資料は一切残しては駄目だとも言われた。これは研究の場を移す以上当然の事だったので問題なかった。


 新しい研究室、いや研究所は鬱蒼とした森の中にあった。

 最初こそ不便になるかと思ったのだが、生活や研究に必要なものは全て国が用意してくれるという。結果的に元いた研究室よりも快適になった。

 何しろ、研究者というものは出来る限り自分の研究以外の事はしたくないと考える人種である。食料や生活必需品の買い出しが必要ないというだけで大助かりだった。


 研究所が建てられている広大な森は国有地であるらしく、一般人は住んでいないらしい。

 研究所はそんな森のさらに奥地にあるので、ここでどんな研究をしようとも周りに迷惑がかかることはないということだ。


 ベルナデッタは心置きなく、デウスエクスマキナの研究に精を出す事にした。


 そう、魔気コンバータの研究ではなく、デウスエクスマキナの研究である。

 国家の繁栄や未来、そして技術の発展性を考えるなら、研究を進めるべきは本来いち機動兵器ではなく基礎になっている魔気コンバータの方だろう。


 しかし、ベルナデッタはデウスエクスマキナの研究を優先した。

 というのも、デウスエクスマキナの建造以来、魔気コンバータの2号機はどうやっても作れなかったからである。


 正確に言うと、魔気コンバータの核になっている巨大人工ルビーの精製がうまくいかないのだ。

 魔の気を集め、精製するためには巨大な宝石が必要になる事実はこれまでの研究から分かっている。また宝石の中でもっとも相性が良いのがルビーであることも明らかになっている。

 その機能に最低限必要なのが、デウスエクスマキナの胸部に収められているあのサイズなのだ。

 大きさにして、実に直径で25センチほど。

 デウスエクスマキナ建造の際はあらゆる魔導具を駆使してそれを精製したのだが、今同じ事を何度やっても一向に形にはならなかった。

 小さいものなら作れるのだが、小さいものでは意味がない。

 小さい宝石に魔石からエネルギーを流すと、大気中の魔の気をわずかに吸引するような挙動は示すものの、それ以上の反応は起こらないのだ。

 ちなみにこの技術を利用して作られているのが魔法発動用の魔導具や魔の気の測定機器である。


「……理論上は問題無いはず、なんだけれど」


 何故か精製完了間近になると、結晶が曇っていき崩壊してしまうのだ。


 いずれにしても、作れないのなら仕方がない。

 なぜ1つ目は作れたのに2つ目が作れないのか、その原因は調査する必要があるが、それはそれとして唯一の成功例であるデウスエクスマキナを研究する事も重要だった。

 国から人工魔石のサンプルを大量に要求されている事もある。

 まずはデウスエクスマキナを安定して運用出来る体制を整える事が先決だ。


 



 ◇◇◇





 ゴルジェイは研究室を引っ越した。


 もちろん、研究資料や機材ごとである。今の所の唯一の完成品であるゼノインサニアも一緒だ。

 敷地や建物は全て国が用意してくれた。

 これもコンペティションに参加した研究者への支援の一環らしい。


 以前の研究室には特に思い入れがなかったので、引っ越しは全く問題なかった。

 どうせ、ベルナデッタの研究室を出た後に一時的に使っていた仮住まいに過ぎない。

 この仮住まいからゼノインサニアが誕生したと思えばそれなりに感じ入るところもあるが、重要なのはゼノインサニア本体であり、開発者のゴルジェイの頭脳と筋肉なので、場所自体には大きな意味はない。


 新しい研究室、いや研究所は鬱蒼とした森の中にあった。

 最初こそ不便になるかと思ったのだが、生活や研究に必要なものは全て国が用意してくれるという。研究と筋トレ以外に興味がなかったゴルジェイにとっては有り難い話だった。


 研究所が建てられている広大な森は国有地であるらしく、一般人は住んでいないらしい。

 研究所はそんな森のさらに奥地にあるので、ここでどんな研究をしようとも周りに迷惑がかかることはないということだ。


 ゴルジェイは心置きなく、筋力ジェネレータの研究とゼノインサニアの改良に精を出す事にした。


 筋力ジェネレータは、魔石から得られるエネルギーの代わりに人間由来の天然自然の力だけを使うという素晴らしい動力炉だ。

 しかし、残念ながらコンペティションでは妹であるベルナデッタに敗北してしまった。


 ゴルジェイ以外に、ジェネレータから実用レベルのエネルギーを発生させられる人間が居なかったからである。


「……理論上は問題無いはず、なのだが」


 元は筋力ではなく生命力を使っていた事もあり、筋力ジェネレータと名前は付いていても、実際には筋肉からエネルギーを得ているわけではない。

 故に核となる人間の筋肉量がそのまま結果に直結するわけではない。

 もちろん無いよりはあった方がいいことは研究と筋トレの結果明らかになっているが、筋肉量よりももっと重要な何らかのファクターが在るらしい事も分かっていた。


 いずれにしても、他にいないのなら仕方がない。

 まずはゼノインサニアを安定して運用出来るようにする事が重要だ。

 ゴルジェイは研究を続けつつも、隙間時間で筋トレに精を出すのだった。





 ◇◇◇





 ファウストは研究室を引っ越していない。


 ただ、研究室を大幅に増改築できるだけの補助金は政府から支給されていた。

 常から人手不足に悩まされていたのだが、それも国からの紹介で優秀な研究員が増員される事になった。


 加えてそれら全員を養えるよう、公共事業に関わる仕事も優先的に回してもらえるという。

 うまく人を采配しローテーションを組めば、さらなる研究を続けることも自身の後継者を育てる事も出来そうであった。


 敗れはしたが、コンペティションに参加してよかった。

 ファウストは満足していた。








森が深いせいで気付いていませんが、兄妹はご近所さんです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 近所って言ってもけっこう遠そう 徒歩10分とかかな?
[一言] 同時に一個しか存在できない…ウーンナンダロウナー(棒) 無機物だから完全に同じ物じゃないでしょうけど、マルゴー産の獣人は普通に生きてますしこういう系のものは大陸ごとに1体、もしくは1個ずつと…
[良い点] 更新ありがとうございます!! 何気に似た者兄妹w [気になる点] 国は兄妹を外界と遮断してしてる間にファウストさんに問題解決とかさせて兄妹の研究成果の良いとこだけを提出させる算段かな? …
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