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美しすぎる伯爵令嬢(♂)の華麗なる冒険【なろう版】  作者: 原純
レディ・マルゴーと陰謀の都
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13-16





 不正行為の罪を着せた具体的な方法やその動機などは、黒幕の名前を突き止めただけではわからない。

 捕らえた刺客たちはどうしても実力行使をせざるを得ないときのために飼われていた連中だったらしく、計画の根幹に関わる事は知らされていないようだ。


 実力行使用の部下なら私も飼っているが、今もこうして話し合いに参加させているし、黒幕よりも私のところの方が労働環境はかなり上だと言えよう。


「で、捕まえた連中はどうすんだ? 聞くこと聞いたし、始末するか?」


 事も無げに『悪魔』が言う。

 可哀想にも思えるが、仮に生かして解放してやったとしても雇い主であるレベリオ伯爵に処分されてしまうだろう。

 それは本人たちもわかっているだろうし、素直に雇い主のところへ戻るとは思えないが。


「……いずれにしてもレベリオ伯爵陣営に戻ることはあり得ないのですから、敢えて始末する必要はないのではないでしょうか。

 しかし、かと言って無罪放免というわけにはまいりません。今回の襲撃については司法を通さずに処理していますので具体的な罪状がついているわけではありませんが、何らかの余罪はあるでしょうし叩けばホコリが出る方々でしょうからね。

 どうでしょう。アマンダのところはそれなりに人がいますが、『死神』や『悪魔』はまだひとりです。部下がいて困る事もないでしょうし、今回捕まえた中からスカウトしてみては」


「戻れば殺されるっつっても、一応は黒幕の息のかかった連中だぜ。こっちに従うふりをしておいて、こっちの情報を相手に流さねえとは限らねえ。雇い入れるのは危険だろ」


「今後も黒幕が無事に存続していくのなら、確かにそうでしょう。ですがおそらくそうはなりませんし、此度の一件が片付いてしまえばもうフリー、つまり無職になるのでは」


 就職先が倒産してしまったから、失業保険を受給しながら再就職活動しよう。

 とは流石にならないはずだ。

 インテリオラはかなり先進的な国家ではあるが、そこまで社会保障が整備されているわけではない。ましてや反社会的活動がメインである彼らのような人間であれば尚更だ。

 行く宛がない彼らが無軌道に野に放たれるよりは、私の目の届くところに置いておいた方がいい。それが捕まえてしまった者の責任というやつである。店舗で購入した昆虫などを無闇に野に放ってはいけないのと同じだ。生態系を破壊してしまう。


「だからっつってなあ……。まあ、実際に伯爵サマを始末しちまえば、帰るところが無くなった連中に選択肢は無くなるだろうが」


「でしたら、ひとまず今回の騒動が終わるまでは屋敷に捕らえておき、終わってから正式にスカウトする方向でどうでしょう」


 ゴロツキに毛が生えた程度の戦闘力とは言え、他人の命令で躊躇なく誰かを害する事が出来るというのは、彼らを放免出来ない理由であると同時にある意味では才能なのだ。まともな人間では中々出来ない。

 そうした人材を一から探す手間を考えれば、働き口がなくなる予定の経験者というのは悪くない。


「……まあ、そうだな。考えてみれば、俺たちも似たようなものだったしな」


「捕らえられて拷問されて、吐いちゃいけねえ事まで吐かされて帰れなくなって、気づいたら帰る場所も無くなってたってか。確かにスケールを別にすりゃほぼ一緒だな」


 敵対者を勧誘して自分の配下にするというのは、セキュリティ上の懸念さえクリアできればまことに合理的な手法である。

 敵の戦力を削った分だけ自分の戦力が増えるわけだから、無関係なところから持ってくるより効率がいい。


「いいんじゃないかしら。あ、そうそう。私のところには仲間がたくさんいるから、私がお話聞いた子もアナタたちが持っていっていいわよ」


「いるか! 特殊性癖に目覚めちまってたらどうすんだよ!」


 アマンダがお話を聞いた刺客はアマンダが引き取る事になったらしい。

 アマンダによって「落とされて」しまったのなら、まあ妥当な落とし所ではないだろうか。未成年である私には何のことだかわからないが。


「では、刺客の皆様は当面こちらでお休みいただくとして、問題はレベリオ伯爵家に対するアプローチですね。

 刺客の皆様の証言が事実かどうかの裏付けと、レベリオ伯爵がそんな事をした動機と手段をいかにして調べるかですが」


「裏付けは別にいらねえだろ。どうやってやったのかと、なんでやったのかがわかれば自動的に裏付けになる」


「なるほど、たしかに」


 どのみち刺客の証言を公にする事など出来ないのだから、黒幕本人の証言や証拠さえ押さえてしまえば関係ないということだ。


「アプローチの仕方も簡単だな。今刺客を捕まえてきたみたいに、伯爵本人を捕まえてきて話を聞けばいい」


「なるほど」


「いえ、さすがにまずいのでは。そうするのでしたら、さすがに刺客たちの証言の裏付けが先です。いくら真相を暴けば裏付けは必要ないとは言っても、真相を暴く前に取り返しのつかない事をしてしまうのはちょっと」


「心配いらないわよ、ジジちゃん。いつ襲ってくるかわからない刺客を捕まえるより、ちゃんと自分の屋敷に住んでいる貴族の方が捕まえるのは楽だから」


「難易度の話をしているわけではありません! 万が一人違いであったりミスリードされていたりしたら問題ですと言っているのです!」


 刺客たちの証言についてはあまり疑ってはいないが、黒幕が最初から別人の名前を名乗って依頼していた可能性がないとは言えない。刺客たちが真実だと信じていることでも、それが本当に真実とは限らないのだ。


「面倒ですが、ジジの言う通りですね。

 レベリオ伯爵がちゃんと自分の屋敷に住んでいるのでしたら、バレないようにその屋敷を調査することにしましょう。手紙や帳簿、その他の物的証拠があれば言うことはありませんが、まあ最悪は本人の発言や行動などの状況証拠でも良しとしましょう。

 アマンダ、『死神』、『悪魔』。レベリオ伯爵家の調査をお願いします」







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― 新着の感想 ―
[一言] シジちゃん、よく言った!
[良い点] な、わ、割とまともな指示……? あぁ、容姿とか絡まなくて、かつマルゴーの実力的な面関係ないなら、元から割とまともで常識的な指示出してたか……
[一言] 脳筋解決はジジによって防がれましたとさ 1人くらい脳筋じゃないやつがいないと後々大変なことになりそうですね まあそれも圧倒的美しさで解決しそうですけど()
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