心が読める男の子
連続投稿失礼します。
今回は、前回の話の最後に出てきた男の子と、紫織のやり取りがメインです。
男の子は不思議な力を持っていて、その正体はなんと……!?
それでは、お楽しみください。
スタッ。
「あの炎見て動じねえとか、お前やるな。ホントに人間か?」
誰かが地面に降り立つような音がし、私の後ろから声がした。
その声は、さっきからどこかから響いていた、男の子の声だった。
おそるおそる後ろを振り向くと、そこにいたのは、私より少し身長が高い男の子。
ぼさぼさの赤い髪をしており、前髪を黒いピンで留めていて、赤いつなぎを着ている。
普通の中学生にしては、ありえない格好をしていた。
髪の色とかは、まだ理解できる。
でも、昼間からつなぎって!
おしゃれに疎い私でも、さすがにこれはないと思った。
「あ、お前、今俺の格好見て、ダサいって思ってるだろ!}
思ってますけど。
「言っておくけどなあ、俺だってこんなの着たくて着てるわけじゃねーよ。仕事上、動きやすい服じゃねーといけねーんだよ。ったく、どうせならジャージのほうがよかったっつーの。」
は、はぁ……。
急に服装のことを愚痴りだした男の子。
「あ!」
その時、私はあることに気づいて声を上げてしまった。
「あ?んだよ。」
「その目……。」
「は?目?」
「あ、赤色……。」
そう。
男の子の目は、私の片目と同じ、赤色だったんだ。
ただ、その男の子は私と違ってオッドアイじゃなくて、両目とも赤色だった。
「あー……、ん?で?」
で?って!
だってだって、赤い目なんて普通じゃあり得ないし!
「……あ、人間界じゃこれは異端だったのか。忘れてた。」
……え?
今、スルーしがたい単語が聞こえた気がしたんだけど。
人間界?
……もしやこの人、中二病?
確かに、私達のいる世界を人間界と呼ぶのは、間違っていない。
でも、この世界を人間界なんて呼ぶのは、三次元の登場人物だけなんだ。
それなのに、この世界を人間界なんて呼ぶなんて、これは中二病としか思えなかった。
「あ、じゃあ、私これで。」
「はっ!?」
男の子は、びっくりしたような声を上げていたけれど、誰だって、中二病とは関わりたくないに決まっている。
「ちょっ!待て待て待て!なんでどっか行こうとするんだよ!」
いやあたりまえだろ!
あんな発言されたら、誰だってビビるわ!
「は?あんな発言?」
男の子はしばらく黙り込み、自分が何を言ったのか思い出しているようだった。
「……ビビるような発言した覚えねーな。」
いやいやいやいや!
やっぱこの人中二病だ。
とっとと学校に行って、離れないと。
「あ、お前ひょっとして俺のこと、ちゅーにびょーだと思ってるだろ。」
そうですよ?
って、ん?
今、変な言葉遣いしたような。
さっきこの人、『中二病』のこと、『ちゅーにびょー』って、幼稚園児みたいな言い方してたよね。
……ひょっとして、この人発育障害?
「発育障害でもねーから。」
!?
さすがに、これはぎょっとした。
だって私、この男の子のことを発育障害だって思ったけど、口に出してはいないんだもの。
ひょっとしてエスパー?
「エスパーじゃねえよ!」
エスパーじゃん!
人の心読んでくるとか、エスパー以外の何だって言うのよ!
「あー!もうめんどくせえな!説得やめだ!やっぱ強制的に連れてこう!」
……え?
強制的に連れてく?
それって誘拐じゃん!
「誘拐じゃねえって!とりあえず、お前の家どこ?」
……は?
私の家?
「そうだよ!お前の家!」
なんで私の家聞いてくるの?
「お前んちにある物と、お前に用があるんだよ!」
私の家にある物……?
他人がほしがるような高額なものはうちにはないし、男の子が興味を引くような銃のモデルとか、車のモデルとかもない。
待てよ、この男の子は、私にも用があるって言ってたな……。
……うん!
さっぱりわからない!
でも、やっぱり知らない人をいきなり家に連れていくことはできない。
常識的に考えてもそうだし、大体、知らない人を急に家に連れていったりしたら、お父さんとお母さんが何をするかわからないもの。
「……あ、そっか。お前んち、訳ありなんだっけか。」
!!??
さすがにこれは混乱を極めた。
私は今まで、自分の家庭環境を誰かに話したことはない。
親戚がいるなんて話も聞いたことないし、おばあちゃんもおじいちゃんも、他界してしまってこの世にはいない。
この子がエスパーなら、私の心を読んで、状況を察せるかもしれない。
でもこの子はさっき、「そっか。」って言っていた。
それって、前もって状況を知っている時に使う言葉だ。
仮にこの子が今心を読んだなら、「そっか。」って言葉は使わない。
「そうなのか。」って言うはず。
この子ホントに何者!?
もしかして……、ストーカー?
そうだと考えれば、私の家庭環境を知っているのも理解できる。
ストーカーって過剰になると、家の中に盗聴器を仕掛けたり、好きな子が出てくるまで家の前で待って、そこからこっそり後をつけたりするんだって。
この子も、私の家に盗聴器を仕掛けていて、それで事情を知ったのかも。
私が必要って言う言葉の意味も、理解できる。
ただどうしてもわからないのは、私の家にある物だった。
ストーカーが必要とする、私の家にある物って、何!?
「お前、俺の事ストーカーだと思ってるだろ。」
ギックウ!
そうだった、この子はエスパーでもあるんだった。
「言っとくけど、俺ストーカーじゃねえし。」
いやいやそう言われても!
確かに、ストーカーだと断定するのは無理だけど、ストーカーじゃないと断定することも出来ない。
私にとって、今この男の子は、『ストーカーの可能性のある限りなく怪しい人物』だった。
「ん~、この心情だと、説明しなきゃますます誤解させちまうな。」
男の子は、いかにも困ったというように頭をかき、やがて息を吐き出した。
「わーった。これ以上お前に疑われないように、俺の目的、全部話す。」
男の子はそういって、頭に突っ込んでいた手を出した。
「まず、俺の名前からな。いつまでも男の子って呼ばれてんの、なんか気持ちわりぃし。」
わっ、また心読んでる!
「俺の名前はレオン・オード。悪魔だ。」
……へ?
私は、男の子……、レオンが言った言葉信じられなくて、しばらく頭が機能停止していた。
だって、だって、悪魔ぁ!?
最後まで読んでいただきありがとうございました。
いかがでしたか?
感想、誤字脱字などありましたら、遠慮なくコメントしてください。
次回は、レオンの言葉と能力の秘密が明らかになる予定です。
それでは、またお会いしましょう。