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「見え透いたお世辞は結構ですわ。それより、もしよかったら今度我が家へ遊びに来ていただけませんか?

 怪我を治していただいたお礼もしたいですし……」


 “ああ、もうどうして素直に仲良くなりたいって言えないのかしら?”


 頭の花もシュンとなって、お願いポーズをしていた。


「まぁ、よろしいんですか?たいしたことはしていないのでお礼などは頂けませんが、オリビア様と仲良くなりたいので嬉しいです!」


 ピヨーン!ポンポンポンポンポン、キラキラキラキラキラ~


 “天使……まさに天使だわ!ゲームの中には出ていなかったからモブキャラなんだと思うけど、こんな可愛い子がいたなんて……どんなおもてなしをしようかしら~”


「姉上、よかったですね。私もリリアン様とは気が合いそうなので、楽しみにしています」



「あら、でしたら私達とも気が合うと思いますわよ。ふふふ

 珍しい花を愛でる仲間と言う感じでしょうか」


「そうだな、俺達もその珍しい花が気になっていたんだ」


「そうですね……大変興味深いかと」


 突然キラキラメインキャラ集団が現れて、王女殿下、王太子殿下、腹黒の順で口を開いた。


 “うわ、いきなりメインキャラ達の登場だわ!ま、眩しすぎる!目が~、目が~……!

 ってそうじゃなくて、珍しい花?花の話なんてしてなかったけど聞き間違えたのかしら?

 ここに来てまだ花を見ていなかったけど、珍しい花はどこかしら?普通の薔薇園に見えるのだけど……”


 オリビア自身はさりげなく瞳だけを動かした。

 

 頭の花は目を押さえて何やら演技していたが、急におでこに手を当ててぐおんぐおん回って何かを探しだした。


「ん゛ん゛ん、姉上……残念ながら魔力が高い者にしか見えない花なのです。なので姉上には見えないかと……」


 にやけそうなのを必死に我慢してエリックが言った。


「そう……残念だわ」


 何でも無いように言ったオリビアだったが、頭の花はあからさまにしょんぼりとした。


「オリビア嬢には見えていなかったのか!?」


 脳筋が叫ぶと、エリックが冷たく脳筋を睨み付けた。

 リリアンも白けた目で脳筋を見ていた。

 オリビアは微笑みを貼り付けたままだったが、実は魔力が低いことがかなりのコンプレックスだったので、ますます落ち込んで花も泣きだしてしまった。


「ギル!そんな言い方は無いだろう!オリビア嬢、どうか馬鹿な友人を許してください。

 その花が見えなくても、この庭園には美しい花がたくさんあります。

 よろしかったら案内させて頂けませんか?」


 超イケメンにキラキラ王子スマイルで手を取られ、ときめかない女子がいるだろうか?いや、いるはずがない。


 “ああああああー!推しキャラのレオンハルト殿下!ゲームと同じ王道王子キャラだけど幼い!やばいやばいやばいやばい、手が触れてるー!

 ってダメー!仲良くなっちゃダメ!絶対ダメ!婚約者を回避しなきゃなんだから!どどどどどうしよう、手を振り払ったら失礼になるけど、一緒に散策なんて1番ダメなやつ”


 一気に溢れだした花だったが、目がハートになっていた真ん中の花が急にはっとなって、途端におろおろしだした。

 その間、オリビア自身は安定の貼り付けた微笑みのままだった。


「くすっ、そんなこと急に言われても困りますわよね?

 こちらにいらして?リリアンさんと女子3人で散策しましょう。あちらに私の庭園があるの」


 “きゃー!悪役王女のヴィクトリア様だわ!さっきよりも近くで見るとお肌もつるつるで髪も艶々縦巻きツインテが麗しすぎるわ!

 しかも何だかいい香りが……はう、鼻血出そう!”


 目をハートにしてピョコピョコ跳び跳ねつつ花を飛び散らしていた花が、鼻を押さえた。


 吸い寄せられるようにオリビアはヴィクトリアの手を取った。そのまま自然とレオンハルトの手が離れて……ぎゅう!

 何故か手は離れずに、オリビアは右手はヴィクトリア、左手はレオンハルトに握られて間に挟まれる形になってしまった。


「ヴィクトリアずるいぞ。俺が先に誘ったんだから手を離せ」


「お兄様こそ手をお離しになって。オリビア様はこちらに来たんですから、しつこい男は嫌われますわよ?」


 オリビアを挟んで笑顔で言い合いが始まってしまった。

 頭上の花も状況について行けずに、オロオロ左右を見ていた。


「せっかくですので、私にも庭園を見せていただけませんか?このような場には慣れていなくて、姉と離れるのが不安なんです」


 結局エリックの一言でみんなで一緒に行くことになり、オリビアは何故か両手を繋がれたままで、囚われの宇宙人の気分だった。


 “何だろうこの状況……メインキャラを間近で見れるのは嬉しいんだけど……これじゃない感が半端無い。

 ヴィクトリア様とは同じ年だし、こんな美少女と仲良くなれるなんて最高なんだけど、レオンハルト様とは距離を置きたいのに……

 なのに推しキャラと手を繋いでいると言う感動も相まって、手を離すことが出来ない!

 と言うかどうして恋人繋ぎなのかしら?ここはエスコートでちょんと手を乗せるのが普通だと思うんだけど!

 エリックはリリアン様を気に入ったのかエスコートしながら何やらヒソヒソ話しているし……

 右を見ても左を見ても美形に微笑まれるって……何なのこの美味しすぎる状況は!

 あ~もう絶対顔が赤い!手汗!手汗が気になる~!”



「おい、なんか真ん中のが身悶えているぞ。くっくっく、どんどん花も出てくるし、これどうなってんだ?しかも本人見えてないんだろう?」


「そのようだな……見ろよ、表情はツンとすましているのがまたギャップがあって面白い。

 ブンブン揺れて、まるで犬の尻尾のようだな」


 後ろで脳筋と腹黒がこんな会話をしているとは露知らず、犬の尻尾のように花を揺らすオリビアであった。

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