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「姉上、勝手に動いてしまい申し訳ありませんでした。

 王妃様が上手いこと機転を利かせてくれたお陰で助かりました。やはり上に立つお方は違いますね。

 せっかくなので、薔薇を見に行きませんか?」


 オリビアは返事をしようにも口を開けると貼り付けた表情が壊れてしまいそうで、黙ってエリックの手を取った。

 そのまま薔薇園を進み、エリックは人気の無いベンチにオリビアを座らせた。


「姉上、火傷をしたんじゃないですか?見せてください!」


 いつになく怒ったような表情のエリックに負けて、オリビアは左手を差し出した。

 手の甲の半分が赤く腫れ上がっていた。


「思ったより赤くなっていたわね。ヒリヒリ痛むけど、大丈夫よ」


「大丈夫じゃありませんよ!どうしてもっと早く言わなかったんですか?すぐ救護室に行けばよかったのに」


「それはダメよ!王妃様主催のお茶会で怪我人が出たとなっては大変なことになってしまうわ。

 それにあのメイドだって罰を与えられてしまうし……」


「姉上は優しすぎます!くっ……本当、僕は世間知らずですみません。あんなに騒ぎ立ててしまって……」


「いいのよ。私を心配してくれたんでしょう?ありがとう。

 ねえ、それよりも冷やして貰えないかしら?ヒリヒリするの」


 正直オリビアは痛さの限界だった。子供の柔肌だからだろうか、入れたてで熱かったとは言え、お茶がかかっただけでこんなに腫れて痛いとは。

 魔力が弱いオリビアでは、メイドの手に作った水の膜が限界で、自分の手を冷やす水を出せなかったのだ。


「す、すみません!すぐに……」


 そう言って冷たい水で包んでくれた。


 “ふぅ……冷たくて気持ちいい。お茶がかかったくらいでこんなに腫れるなんて、さすが貴族のお嬢様の手よね……フォークより重いものを持ったことがありませんって感じかしら?

 あのメイド大丈夫かしら……罰を与えられていないといいのだけど”


「あ、あの……はじめまして、リリアン=ウェルズと申します。あ、あの……私、少しですけど癒しの魔法が使えるんです。よろしかったらお手に触れてもいいですか?」


 突然現れたリリアンと言う少女は、栗色の髪にすみれ色の瞳で、気が弱いのかおどおどしながらもオリビアを心配している様子がありありと伝わってきた。


「ウェルズ伯爵令嬢様ですね。ありがとうございます……あの、この事はご内密にお願いしたいのですが……」


 手を差し出しながらおずおずとオリビアが告げると


「もちろんわかっております。ご安心ください、3人だけの秘密にしますから」


 と真面目な顔でリリアンは頷き、オリビアの手を取って癒しの魔法をかけてくれた。みるみるうちに赤みは引き、元通りの綺麗な肌になった。


「まぁ、凄いですわね!もう全く痛くありませんわ!リリアン様、ありがとうございます。

 ああ、自己紹介もせず申し訳ありません、私はオリビア=アプリコットで、こちらは弟のエリック=アプリコットですわ。

 どうぞよろしくお願いします」


 痛さでうずくまっていた花は、リリアンの魔法でほわ~っと腑抜けた顔になり、オリビアの挨拶でキリッとなってリリアンに頭を下げた。


「ぶふっ!……ん“ん“、すみません、くしゃみが……

 アプリコット様達のお噂は色々聞いておりますけど……噂とはあてにならないものですね」


 “はて?噂……?どうせろくでもないものだろうな~。忘れてたけどエリックは婚外子と言うことになっているし、私はデザイナーをクビにしたわがままお嬢様だしね”

 ふ~やれやれ、と頭の花も小首を傾げてため息をついた。


「まぁ……半分くらいは正しいかもしれませんよ?ふふふ

 私のことはオリビアとお呼びください。手を治していただき、ありがとうございました」


「私のことはエリックとお呼びください。リリアン様は魔力がお強いようですね」


 何かを見極めるようにエリックがリリアンを見て言った。


 “へ~、魔力が強いんだ。確かに手の怪我を簡単に治せるくらいだからそこそこあるとは思っていたけど……どうしてエリックは強いと思ったのかしら?”


「そうですか?自分ではまだよくわからなくて……学園に入ればわかるのかな?とあまり熱心に勉強していませんでした。

 でも公爵譲りの魔力の持ち主と噂のエリック様がそう言うのでしたら、強いのかもしれませんね……」


「なるほど……話は変わりますが、姉のことをどう思いますか?花の妖精と氷の妖精、どちらに見えますか?」


 “はぁ?何だその恥ずかしい質問は?花の妖精って……どう見ても氷の……妖精?いや、妖精はさすがに無いから!どっちも違うから!”

 頭の花も大袈裟に葉っぱと首を振った。


「もちろん、花の妖精ですわ。オリビア様の周りには、花が咲き乱れて見えますわ」


 何故か頬を赤らめて、優しい笑顔でリリアンが答えた。その愛らしい笑顔に、ポンッポンッ……ポンポンポンポンポンとオリビアの頭上に花が咲いた。


 “か、可愛い!花の妖精だなんてお世辞を言ってはにかむ表情が……可愛すぎる!たぶん同じ年なんだろうけど、妹感が半端無い!ああ、よしよししたい!

 私もリリアン様みたいに純粋で花のような微笑みを浮かべてみたいのに、氷の微笑と言って怖がられてしまうのよね……

 はぁ、癒される……まさに癒し系ご令嬢ね。仲良くなりたいわ……”

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― 新着の感想 ―
[良い点] 花「ここはまかせろー」ポンポン
[一言] まぁ、高魔力保持者が今のところ主人公にとっていい人ばかりだからいいけど、流石にそれが続くとは思えないからなぁ 愛玩対象扱いも、少し年を取ってきたら色々と厳しくなりそうだし
[一言] あぁオリビアちゃん、なんて良い子なの! ツンツンした言葉や態度はなかなか直せそうにないけれど、正直なお花(達)のおかげて今後もオリビアに多大なる好意を持つ人達が着実に増えていきそうな気配。…
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