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“え?今のはヒロインのララさんよね……どうしてレオン様の研究室に入ったのかしら……”
見なかったことにしてドアをノックするかどうか、かなりの時間その場で悩んでいたが、出てくる様子も他に誰かが来る様子も無かったので、オリビアは怖くなり、その場を離れた。
それから数日、オリビアは信号機令嬢達や他のクラスメイト達といつも一緒にランチをして、レオンハルトと話す機会が無かった。
不安になり、オリビアは帰宅後エリックに聞いてみることにした。
「ねえエリック……レオン様とララさんって仲がいいのかしら?」
「え?殿下とララですか?……いえ、普通の先輩後輩だと思いますけど?みんなで殿下の研究を手伝っているので、一緒にいることは多いですね。どうしてですか?」
「そう……一緒にいるのを見かけたから、少し気になっただけよ。ありがとう」
「あー……まぁそうですね。ララの魔力が強いのと、平民だからか色々面白いアイデアを出してくれるので、よく研究の手伝いをやらされ……う゛う゛ん、任されていますね」
“何だか歯切れの悪い返事だわ。きっと何か隠しているのね……
もしかしたら、魔術科では公認のカップルだったりして!あのソファでレオン様とララさんが……”
オリビアは真っ青になり、その場を離れた。
頭の花も青く染まり、ガタガタと震えていた。
「ええ!?姉上?大丈夫ですか?どうしたんですか?」
エリックの制止も聞かず、オリビアは部屋へ戻った。
翌日、休日なので部屋でうじうじしているオリビアの元へ、レオンハルトが急に訪ねてきた。
この5年の間でこう言うことも珍しく無くなり、公爵家の誰も慌てること無く普通に対応していた。
「オリビア、最近学園でも中々話せず寂しかった!だが、仲のいい友人達が出来たようで安心した。
平民貴族問わず色々な生徒に慕われて、さすが我が婚約者だな!
いいことだとは思うのだが、もう少し2人の時間があってもいいと思うんだ……週に2回は2人でランチをする日にしないか?
研究室に運んでもらって、2人きりで食べよう!」
「え?研究室でですか……?」
キラキラ王子スマイルで提案されたが、研究室と言う単語にオリビアは思わず反応してしまった。
「そう、研究室で2人きりで……ダメかな?」
“ぐはっ!その上目遣い反則です!は、鼻血がー!”
「決定と言うことで良さそうだな」
頭の花が鼻を押さえて悶絶している間に、レオンハルトがニヤリと笑って決定してしまった。
“ええ、どうしよう……よくわからないけど決定してしまったわ!ああ、でも2人の時間を少しでも多く作って、ララさんに負けないように頑張らなくちゃ!
そうよ、落ち込んでる場合じゃなかったわ!レオン様誘惑大作戦を考えなきゃ!
ふっふっふ、前世20歳まで生きたお姉さんの実力を見せてやるわ!”
頭の花も何故か自信満々に燃えていた。
だが、何年生きようと喪女は結局喪女だった。作戦と言っても何をすればいいのか全く思い浮かばなかったのだ。
“そうだわ、ボディタッチがいいと聞いたことがあるわ!えっと……どうするのかしら?
腰を抱かれているから自然とタッチするなんて無理ね……
あとは、上目遣いかしら?それならこのままレオン様の顔を見れば上目遣いになるんじゃないかしら?”
オリビアは、いつものベンチでレオンハルトに腰を抱かれた状態で座っているので、そのまま上目遣いでレオンハルトの目をじーっと見つめることにした。
“えっと……やだ、これ結構恥ずかしいわね!顔が近いわ!”
思わず視線をそらそうと下を向いたオリビアだったが、その瞬間、レオンハルトに唇を塞がれた。
「ん?……んん!?」
図らずも、オリビアの誘惑大作戦は大成功を納めたようだ。大成功過ぎて、また顔を真っ赤にしてぐったりしたオリビアが、レオンハルトにお姫様抱っこで部屋まで運ばれてしまったのは、ご愛敬と言うことで……
「オリビア様おはようございます!実は昨日、オズワルド様が久しぶりに訪ねてきてくれたんです!」
登校するなり嬉しそうにアメリアが話しかけてきた。
「まあ!よかったですわね!何を話されたんですか?」
「ええ、実は最近の平民生徒とも仲良くしている私を見て、気になって来てくださったようです……
ですので、私も勇気を出して今までのメイドや乳母、平民への非礼を謝りました。
そうしたら、昨日はいつもと違い、凄く楽しい時間を過ごせて……夢のようでしたわ。
オリビア様の言う通り、まだ諦めるのは早いと実感しました!本当にありがとうございました」
そう言って、眩しいほどの笑顔でアメリアは頭を下げた。
“はう……猫顔美少女……眩しい!”




