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アメリア達と話した週の休日、信号機令嬢達を公爵家に招待した。
ヒューゴが持ってきてくれたそれぞれに似合いそうな既成品のドレスに化粧品等を使って、侍女達と一緒に3人のイメチェンをした。
いつぞやのヴィクトリアを彷彿とさせる、縦巻きツインテでパステルカラーにフリフリドレスの可愛い系だったアメリア。
黄色い髪をストレートのまま下ろして、シンプルで大人っぽいデザインの紺色のドレス、目の形を生かした猫目メイクで、すっかり大人っぽいいい女風令嬢に変身した。
赤い髪を綺麗にまとめて、暗い色に装飾の少ないドレス、ダーク系のメイクで少しでもすっきり見せようと頑張っていた、ちょいぽちゃ令嬢のシンシア。
癖が強くてふわふわな赤い髪を顔のサイドに左右1房ずつ垂らし、ツインテールにしてリボンで結んだ。
色白でぱっちりした綺麗な青い瞳の優しい顔立ちに合わせ、可愛らしいメイクにパステルカラーのふんわりドレスで、癒し系妹キャラ令嬢に変身した。
前髪で目元を隠し、暗めの青い髪を無造作に下ろし、サイズの合っていない流行遅れのドレスを着ていたステラ。
前髪を上げてみると、なんとビックリなセクシー系美人だったので、横に流し全体を軽く巻いて全体的に右に流し肩にかけた。
やぼったいドレスを脱がせてみると、何とも色気のあるスタイルだったので、紫に黒いレースがついたドレスを着せると、脱力系セクシー令嬢に変身した。
「うっそ、シンシアめっちゃ天使!ステラなの!?ええ、色気が凄い!」
「本当、本当。ステラの色気が半端無いよね!アメリアもめちゃくちゃ綺麗!」
「色気~?無い無い。
アメリアもシンシアも変わったね~!アメリアって美人系だったんだね~。シンシアは逆に可愛い系だったのね。全然気付かなかった!」
別々の部屋で変身していたので、完成してお互いを見てきゃ~きゃ~はしゃいでいた。
オリビアも侍女達も部屋全体が何とも言えない達成感に包まれていた。
オリビアの頭の花も、やりきったぜとばかりに椅子に座って頭を垂らし、白く燃え尽きていた。
出来る侍女に、庭園にお茶会の準備が整っておりますと言われ、我に返ったオリビアの案内で移動することにした。
お茶を飲みながら話を聞くと、アメリアとシンシアはわりと裕福な伯爵令嬢で、王都にあるタウンハウスから通っているそうだ。
ステラは子爵令嬢で、貧しくはないが幼い頃に母を亡くし、入学前は倹約家の父と、少ない使用人達と領地の方で生活していたらしい。
若いメイドもおらず、母親のお下がりのドレスで特に不自由はしていなかったため、あのようなサイズの合わない流行遅れのドレスを着ていたそうだ。
今は寮で生活しているので、髪型も自分で出来ずに無造作に下ろすだけになっていたのだとか。
アメリアとシンシアと違いステラは一人娘なので、将来婿を取らなくてはいけないらしい。
おしゃれ同様恋愛に全く興味が無く、爵位の欲しいどこぞの次男や三男、もしくは優秀な平民と結婚するんじゃないかと他人事のように言った。
「ええ!?全く興味が無さそうですが、好きな殿方や理想などのありませんの?」
あまりの興味無さに驚いて、オリビアが問いかけた。
「理想ですか……?う~ん、特に……あ、優秀な方がいいですね。私、あまり何もしたくありませんので、全て任せてゆっくりのんびりさせてくれる方が理想ですわ」
「出た出た。本当ステラってやる気無いよね」
いつものようにシンシアが突っ込んだが、オリビアはヒューゴを見ていた。
実は変身途中のステラの素顔を見てから様子がおかしいのだ。
優秀な平民で、三男……実家の商会も潤っていて、無いのは爵位だけか……確かにそう考えるとステラは理想の相手かもしれないが、そう言う感じではないようだ。
“ふふふ、ヒューゴのあの顔、あれはきっと一目惚れと言うやつね。
ステラさん美人だもんね~、きっと週明けには皆が群がるわよ~。どうする?どうするのヒューゴ?ふふふふふ”
頭の花もニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてヒューゴを見ていた。
シンシアの婚約者は4歳年上の侯爵家の次男で、結婚後は子爵になるらしい。
幼い頃から憧れているそうだが、何時までたっても子供扱いで、大人っぽくなりたくてあのようなドレスに髪型をしていたそうだ。
もちろん、細く見せたかったのもあるそうだが……
お菓子が大好きで、何度ダイエットしようと決意してもついつい手が出て失敗の連続ですっかり自信を無くしていた。
「う~ん、でも、言うほど太ってはいませんわよ?貴族令嬢にしては確かにぽっちゃりしていますが、平民では普通だと思いますわ。
それに、男性は多少ぽっちゃりな位が好ましいと聞いたことがあります」
確か前世でそんなことを聞いたな~と何気に口に出しただけだが、ニヤニヤした3人にレオンハルトに言われたのかだの、胸は大きい方がレオンハルトは好きなのか等と問い詰められ、後悔することになった。
翌日はやはり3人の変わりように大騒ぎだった。
と言っても、ステラはやはり髪を自分で出来なかったようで、ただ無造作に右に流しただけだったのだが、気だる気な雰囲気とマッチして、何とも言えない色気を振り撒いていた。
「おはようございます!皆様すごく素敵ですわ!」
「とても可愛いです!私もイメチェンしたいです!」
等とクラスの貴族、平民問わず色々な女子が集まってきて、おしゃれ話に花が咲いた。
おしゃれに爵位は関係無いようで、この世代の女子が集まると、物凄いパワーでオリビアは気後れしつつも楽しく、嬉しかった。
そのままの勢いでクラスの女子みんなでランチをして、放課後オリビアはるんるん気分でレオンハルトに報告しようと研究室へ向かっていた。
角を曲がった所で、レオンハルトの研究室の中へ入って行くピンクのふわふわが目に入り、頭の花共々、オリビアはその場でフリーズした。