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「み、皆様おはようございます」


 翌朝、オリビアはドキドキしながら信号機令嬢達に声をかけた。


「あ、オリビア様おはようございます!昨日は急に話しかけて、申し訳ありませんでした。

 レオンハルト殿下が食堂の入口からヒューゴ君に嫉妬の眼差しを向けているのを、オリビア様はお気付きでは無いようでしたので……」


「本当、本当。ヒューゴ君を嫉妬のあまり殺すんじゃないかと冷や汗だらだらでした!」


「殿下の魔力で、食堂が吹き飛ぶんじゃないかと怖かったです」


 黄色、赤、青の順番で答えてくれた。


「ええ?皆様そんな大袈裟ですわ。私がヒューゴと話していたくらいで、嫉妬などなさりませんよ。ふふふ

 でもそうですね、王太子殿下の婚約者が異性と2人でランチなどよくありませんでしたね。

 皆様が来てくださってよかったですわ。ありがとうございました」


 “こんな冗談を言うなんて、意外と面白い子達なのね。

 でも、人目があると言うのにヒューゴと2人でランチなんてよくなかったわよね。

 アメリアさん達が気を遣って来てくれて、本当よかったわ。しかも、誤解が無いようにわざと大きな声でレオン様と私の仲がいいアピールまでしてくれて……ううう、ええ子達や“


 頭の花は、ハンカチのように1枚の花弁を出してわざとらしく涙をぬぐった。


 そんな愛らしい花をクラスの誰も見ることができないなんて……なんと勿体無い。


「大袈裟だなんて……全然そんなこと無いと思いますけど……

 そう言えばあの後早退されたようですけど、何かあったんですか?

 まさかレオンハルト殿下、嫉妬のあまり我慢がきかなくなって……」


「な、何もありませんわ!キスされただけです!」


 動揺して、ついつい本当の事を口走ってしまった。


「「「きゃ~!素敵!」」」


「本当、仲がよろしくて羨ましいですわ~」


「そうですか?仲は悪くは無いと思いますけど……今後どうなるかわかりませんしね……」


 “ええ!あんなに溺愛されてるのに自覚無しって……レオンハルト殿下、ちょっと可哀想……”


 はたから見れば、レオンハルトの完全なる溺愛だが、オリビアにだけは全く伝わっていなくて、周囲は驚いたと同時に、レオンハルトに同情した。


「そう言うアメリア様はどうですの?確か伯爵家の……」


「オズワルド様ですわ。残念ながら……完全な政略でして、仲はよく無いですね。

 と言うか、一方的に嫌われています。先日まで原因に気付きませんでしたが、オリビア様に言われて気付きました。

 うちと違ってオズワルド様の家は平民との距離が近いので、平民をバカにしていた私を軽蔑なさっているのだと思いますわ。

 彼の乳母は平民ですしね。乳母の娘であるメイドとも、幼馴染みでとても仲がよろしいんです。

 それも嫌で嫌味など言ってしまっていましたもんね……それでも、私の持参金が無いと使用人たちの給金も払えませんので、我慢して結婚するのでしょうね……」


 淡々と話すアメリアだったが、悲しさが隠しきれてなかった。

 

「アメリア様はオズワルド様をお慕いしているのですね……」


「そうだとしても、今更どうしようもありませんわ。冷めきった結婚生活に、幼馴染みのメイドを愛人にする未来しか残されていませんわ」


 精一杯の強がりを言って、アメリアはふいっと顔をそらせた。

 

「アメリア様は、今では平民をバカにしてはいませんのね?」


 ふと気になって問いかけた。


「ええ……オリビア様に叱咤され、ヒューゴ君に庇われ慰められて色々考えるようになりました。

 1週間も机を並べて共に学んでいれば、貴族や平民の差なんてよくわからなくなってしまいましたわ。

 今までは主と使用人の関係しかありませんでしたからね……狭い世界で生きていたのだと気付かされました」


 “素敵!自分の非を認められるなんて、中々出来ることじゃないわ!

 性格もツンデレで可愛いのだけど……う~ん、やっぱりあれがな~……”


「アメリア様のお気持ち、よくわかりますわ……私もレオン様と仲がいい女の子はやっぱり気になりますし……

 でも、まだ諦めるなんて早すぎですわ!まだ15歳ですよ?結婚もしていなければ、学校に入ったばかりです!

 これからのアメリア様を見ていただければ、きっとオズワルド様も見直してくれるはずですわ!


 その為には……まずは見た目を大きく変えてみてはいかがですか?

 インパクトが大きいほど、何があったのかと気にかけていただけるかもしれませんしね。

 そうと決まればヒューゴ、ちょっと来て!」


「え?え?見た目ですか?」


 勝手に決定して突っ走るオリビアに、ついていけずにアメリアは目を白黒させていた。


「俺も気になってたんだよな~、髪型もドレスもアメリア嬢に似合ってないよな」


「ええ!似合ってない……そ、そんな……」


 ずばずばダメ出しされ、もうアメリアに逆らう気力は残されていなかった。


「そもそも、キツネ顔のアメリア様に、可愛い系のメイクに髪型、パステルカラーのフリフリドレスは壊滅的に似合っていませんわよね。

 逆に、丸顔でぱっちりした瞳のシンシア様こそ、可愛い系が似合うと思いますわ。

 シンシア様、少しでも細く見せようと濃い色を選んでボリュームの出る装飾を無くしているのだと思いますが、残念ながら魅力半減ですわ。

 

 とりあえず先にアメリア様ですけど、この巻き髪は天然ですか?毎朝巻いてる?でしたら、そのままストレートのままの方がよろしいですわ。

 メイクも無理にタレ目にせずに、そのままの形を生かした方が、猫みたいで可愛いと思いますわよ?

 ドレスもせっかくスレンダーでスタイルがいいんですから、シンプルなラインで色も抑え目がいいですわ」


「そうだな、子供っぽいデザインよりも、アメリア嬢は大人っぽいデザインの方が魅力的だと思う。

 こんな感じとかか?」


「さすがヒューゴ!やっぱりグレースさんの弟ね!素敵なデザイン画だわ!アメリア様、どうですか?あら……?」


 ヒューゴとオリビアが調子に乗って言いまくっている間に、アメリアはすっかり魂が抜けていた。


「アメリア、アメリア、気をしっかり」


「本当、本当。私だって凄い言われようだったし。戻って来て!」

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― 新着の感想 ―
信号機令嬢達が意外とかわいい……だと……?! まだ若いですものね〜〜〜色々ありますわね!
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