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 そう、例に漏れず、この5年でオリビアは絵に描いたような悪役令嬢ボディに成長したのだ。

 前世ではささやか~な胸に、くびれがほとんど分からないウエストの残念体型がコンプレックスで、とてもじゃないが彼氏なんて出来ないと乙女ゲームに逃げていた。

 そんなオリビアにとって、現在の悪役令嬢ボディはまさに理想的で、いやらしくならない程度に体型のわかるドレスや、ネックラインが深いドレスを好んで着ていた。

 もちろん、グレースに色やレース使いで上品に見えるように頑張ってもらっている。


 そんな、ただでさえ青少年に優しくないオリビアの胸元にルーナは頭をすりすりして、オリビアに分からないように勝ち誇った顔でレオンハルトを見るのである。

 ルーナもまた、気付けば度を越えたシスコンに育ってしまい、毎回こうしてレオンハルトとオリビアの逢瀬を、わざと邪魔しに来るようになっていた。

 レオンハルトから黒いオーラが出てきたところで、気付いた侍女がルーナに小声で話しかけた。

 

「ルーナ様、そろそろ休憩が終わる時間です」


「もうそんな時間なの?……レオン様、お姉様、おじゃましました。ルーナはりっぱな淑女になるために、がんばってお勉強してきます!」


 そう言って、レオンハルトに可愛らしいカーテシーをしてパタパタと去って行った。


「もう、また走って……立派な淑女にはまだまだほど遠いですわね」


 言葉だけ聞けば冷たいようだが、オリビアがルーナを見る瞳は愛しさに溢れていた。


 頭の花も、ほわんほわんと揺れていた。


「オリビア、少し庭園を歩かないか?」


「はい、喜んで」


 レオンハルトにいつものように手を繋がれ、庭園を散策する。オリビアは、この5年ですっかり恋人繋ぎに慣れてしまった。

 

「あそこで少し休憩しようか?」


 そう言って、レオンハルトは人目につかないベンチに誘導した。護衛達も少し離れた所で待機する。

 ベンチに座ると、レオンハルトはオリビアの腰に腕を回した。

 オリビアは、いつも以上に近い距離に内心ドッキドキだったが、顔に出さないように必死で無表情を作っていた。


 “いやー!ここここ腰に手が!この悪役令嬢らしく、きゅっとくびれた腰に手が触れてるー!

 近い近い近い近い!腰を抱かれてるから、いつも以上に近くて体が触れ合ってるのー!もう、無理!鼻血出そう!

 頭にすりすりされてる!?クンクンしてる?やーめーてー!臭い?綺麗にお手入れされてるから大丈夫よね?もうこれ以上は心臓が持たないわ”


 頭の花も、目をハートにして花を飛び散らせたり、鼻を押さえたり、わたわたしたりと大忙しだった。

 

「オリビア、顔を上げて」


 オリビアの髪に顔が触れたまま話したので、レオンハルトの吐息で髪が揺れ、オリビアはゾクッとした。

 恥ずかしくてイヤイヤと首を振り俯いたが、レオンハルトと密着しているため、レオンハルトの胸にすりすりして顔を埋めたような形になってしまった。

 

「くっ!可愛すぎる……」


 レオンハルトが何か呟いた瞬間、腰を抱いている手とは反対の手で顎を持ち上げられ、オリビアが驚くと同時に唇に柔らかいものが触れた。

 

 “キ、キスされたー!”


 ビヨーン!わたわたわたわた!


 珍しく花同様におろおろしているオリビアを見て、レオンハルトは満足そうに何度も何度も唇を重ねた。

 唇を舐められ、驚いて開いたオリビアの口の中に、レオンハルトの舌が滑り込んできた。

 歯をなぞられ、舌を絡められ、舌を吸われ、息のしかたがわからずに苦しくてもがいても、いつの間にかレオンハルトに後頭部を押さえられ、動くことが出来ずに頼り無くレオンハルトの胸を叩くことしかできなかった。

 

 どのくらいそうしていたのか、レオンハルトが満足して唇を離し、最後に少し垂れてしまった涎をペロリと舐め取る頃には、オリビアは真っ赤になってぐったりしていた。

 

 頭の花も、オリビアと同じポーズでぐったりしていた。


「くすっ、ごめん、やり過ぎたかな?

 こんなに真っ赤になって、何て可愛いんだ!ああ、こうした方が楽だろう?」


 そう言って、レオンハルトは動けないオリビアを膝に乗せた。オリビアは、頭の中がとろんとしていて、なすがままになっていた。


「もうすぐ入学だけど、私以外にこんな顔を見せたらダメだよ?これからは毎日会えるかと思うと……ああ……結婚式が楽しみだな……って聞いていないか。

 立てないようだし、このまま部屋まで運ぶけど問題無いよね?

 くっく、キスだけでこんなにトロンとして……」


 そう言って、レオンハルトはまたオリビアの唇を貪った。深く……激しく……しつこく……


 そして、真っ赤な顔でぐったりしているオリビアをお姫様抱っこして、部屋へと運んだ。


 オリビアが正気に戻ったのは、その日の夜中だった。


 “あれ?真っ暗じゃん!いつの間に着替えてベッドに?確か庭園をレオン様と……ぎゃー!”


 そして、また真っ赤になって翌日の夜まで寝込んでしまった。

 その日はリリアンの引っ越しだったのだが、気が付いたときには終わっていた。

 見送りが出来なかったとショックだったが、これからは毎日学園で会えるから大丈夫ですよとエリックに慰められ、なんとか復活した。


 そしていよいよ入学式当日、エリックとオリビアは通いのため、送迎の馬車を降りて講堂へと向かっていた。


 “はう~、いよいよ夢にまで見た学園生活が始まるのね!どれだけのイベントが生で見れるのかしら?

 ああ、あの場所は……こっちは……”


 等と、ゲームと同じ学園内部に大興奮で花を飛び散らせていた。そう、結局まだ花は見えたままである。

 公爵の研究は行き詰まっていた。このままでは、1年後のデビュタント当日に、王妃様との約束通り完全に見えなくしてしまうことになるだろう……

 それは困ると、最近ではレオンハルトにエリックまでもが研究を手伝うようになっていた。

 

 浮かれ気分でエリックと共に講堂へと向かっていたオリビアの目に、大好きだったスチルが飛び込んできた。

 つまずいて転んでしまったふわふわなピンクの髪の女子生徒に、金髪の麗しい王子様が手を差し出しているシーンだ。

 そう、ヒロインとレオンハルトである。


 “き、きゃー!生で見れるなんて!尊い!尊いわ!麗しすぎる~!神様、ありがとう!私、幸せです!”


 大興奮でうっすら涙を浮かべて花を溢れさせていたオリビアだったが、レオンハルトの微笑みに、何故かチクリと胸が傷んだ。


 “あ、待って……待って!このシーンは……レオンハルトルートのオープニングだわ。

 と言うことは……レオンハルトルートに入ったってこと?”


 オリビアは、この5年間レオンハルトと共に過ごした日々を思い出し、ぎゅっと胸が締め付けられるように痛くなった。

 

 “嫌!嫌よ!レオン様!“


 そう、心の中で叫んだと同時に、オリビアはその場で意識を失った。

お待たせしました。やっとヒロインの登場です。

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