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 数日後、オリビアはエリックと共にエリックの母親に会いに来ていた。


「そうなの、素敵なお友達が出来てよかったわね」


 リリアンの事を話すと、エリックの母親は優しい笑顔で言ってくれた。平民だからか表情豊かで話しやすく、前世日本人であった事を思い出したオリビアにとって、何だかんだで1番親しみやすい存在でついつい色々話してしまうのだ。

 

「あら~、そう言えば王太子殿下に見初められたって聞いたわよ?その話も聞きたいわ」


 今日はドレスを作るうちに仲良くなったグレースも一緒だった。相変わらず大迫力美人だ。


「しかもうちのお店の名前を出してくれたんですって?問い合わせが殺到してるのよ。うふふ

 あ、でも安心してね。どんなに忙しくても、公爵家からの依頼を最優先で作るようにするから」


「え?貴族からの依頼ですか?凄いですね!

王妃様にデザイナーをクビにしたことを聞かれて……それで今日のドレスはどこのか聞かれたので、グレースさんの名前を出したんです。

 ふふふ、あのドレスが素晴らしかったからみんな気になったんでしょうね。お役に立ててよかったです」


 頭の花も嬉しそうに揺れて、うんうん頷いている。


 話を聞くと、どうやらオーダー部門の立ち上げ当初は、下位貴族や裕福な平民相手の商売を予定していたが、オリビアのドレスを作ったことで想定外の上位貴族からの依頼が舞い込み、てんてこまいになっているらしい。

 上質な生地の仕入れは、元々大きな商家と言うことで何とかなったらしいが、お針子さんが圧倒的に足りないのだとか。


「それでしたら、小さい子供がいて働けない人達のために子守りを雇ってはいかがですか?

 他にも今いるお針子さんや従業員の子供で、大きくなって手がかからなくなったけど、まだ働くには小さい子供達をお針子見習いとして育てるのも良さそうです。

 子守りで雇う人も、元々こちらで働いていたけど結婚出産で辞めた方などに声をかけてみたらどうでしょうか?

 子連れで出勤して、自分の子供も他の子達と一緒に見るようにすればいいですしね。


 シェフに家族の分も合わせて晩御飯用のスープか何かを作って貰って、帰りに持参したお鍋に入れて渡すようにしたら、今までより長い時間働けるようにもなりますよね。

 ああ、でも長時間働くのは負担が大きいかもしれませんので、あくまで希望者だけとしてもいいかもしれませんね。

 毎日じゃなくても、この日とこの日なら等と希望を取るのも良さそうですね。

 っとすみません。一人でベラベラと……」


 ふと思い付いたことをベラベラと1人で熱く語ってしまい、オリビアは恥ずかしくなった。


 頭の花も、はっとなって口を押さえてオロオロしていた。


「なるほど……どのアイデアも素敵ね!結婚出産で辞めたメイドも数人いるし、ちょっと父に確認してみるわ。

 元々働いていた人なら、人となりもわかってるから安心よね。

 他のアイデアもお針子さん達に意見を聞いてみるわ!

 そうと決まればさっそく……あ、殿下との話はまた今度ゆっくり聞かせてね」


 そう言ってばたばたとグレースは出ていった。相変わらず、嵐のような人だ。

 ちなみにエリックは外でグレースの弟と一緒に剣の稽古をしているため、部屋にはエリックの母であるエミリーとオリビアの2人だけになった。


「それで……殿下との婚約はあまり嬉しそうに見えないですけど、何か気になることがあるんですか?」


 おっとりしているようで、エミリーは中々鋭い女性だ。

 ちなみに魔力は低くは無いけれど、花が見えるほど高くは無い。でも、ちょこちょこ会っているうちに、オリビアの事を結構分かりやすい性格で可愛いと思っていた。


「何と言いますか……1度会っただけで婚約を決めて、早すぎると思っているんです。

 だってまだ10歳ですよ?殿下は12歳ですけど……今後学園に通うようになれば色々な異性と知り合うことになります。

 すぐに私以外の運命の女性が現れて、私が邪魔になって婚約破棄されてしまうんじゃないかと怖くて……

 いえ、それだけでしたらまだいいのですが、その女性に害をなした等と謂れの無い罪を着せられて、公爵家諸とも処罰されたり……」


 ごちゃごちゃした胸のうちを、誰かに聞いて欲しくて止まらなくなってしまった。

 実際エミリーなら貴族と関わりが無いし、表面上取り繕うこともしないので、話を聞いて欲しかったのだ。


「オリビア様、ちょっと落ち着いて?不安な気持ちはわかったから、もう大丈夫よ。

 そうね……確かに1度会っただけで婚約を決めるのは不安よね……もっとお互いを知り合ってからだったら違うんでしょうけどね。

 でも、貴族の婚約は実際会わずに決まることも珍しくはないんではないですか?」


 エミリーはオリビアの隣に移動して、落ち着くようにと優しく背中をさすってくれた。


 パニックになって頭を抱えて揺れていた花も、少し落ち着きを取り戻した。


「ええ……確かにそうなんですけど……私、素直じゃありませんし、ついつい毒を吐いてしまいます。

 楽しい話題を提供出来るわけでもありませんし……こんなつまらない女、きっとすぐに飽きられてしまいますわ」


 オリビアと花は、自嘲気味に笑った。


「うーん、確かに今のまま卑屈なオリビア様だったら、あり得るかもしれませんね。

 ふふふ、ですがオリビア様は努力家で素敵な女の子ですよ?もっと自信を持って下さい。

 エリックだって、貴女に救われたんですよ?あの子には本当に申し訳無い事をしてしまいましたわ。

 今、あの子が笑っていられるのは、オリビア様のお陰なんです。貴女はつまらなくなんてありませんよ。

 とても心が温かくて可愛らしい方だと思いますわ。ふふ、確かに不器用ではありますけどね」


 そう言ってエミリーは悪戯っぽく笑って見せた。

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― 新着の感想 ―
花が見えなくてもオリビアの事をちゃんと分かってくれる人が家族以外にも居るのが嬉しいですね。
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