王妃と王太子と公爵の会話
「母上、私はオリビアと婚約したいです!」
お茶会が終わってすぐに、レオンハルトは王妃のもとへ突撃した。
「あらまぁレオンハルト、確かにオリビアちゃんはいい子だったわね。
まだ10歳だと言うのに、王妃のお茶会で貴族令嬢が火傷したとなったら反王妃派の格好の餌食だと心配して……痛かったでしょうね。
しかもメイドの火傷を心配して、自分が悪役になってすぐ退場させてくれたし……あの子メイドの火傷を冷たい水魔法で冷やしてくれたのよ。
しかもそれで自分を冷やす魔力が無くなっちゃって……本当にいい子だわ。
でも、あの頭の花を何とかしないと王妃にはなれないわ。あなたもわかっていると思うけど、王族はいつでも感情を隠さないといけないもの……
それに子供のうちはいいけど、もう少し大きくなったらあのままでは可哀想よね……何とか出来ないかしら?」
「お父上である公爵は魔術研究所長です!何か対策を考えているのではありませんか?聞きに行きましょう!
もし、何とか出来るのであれば、婚約を認めてくださいますか?」
「まぁ、家柄も人柄も問題ありませんし、元々あなたの婚約者候補には入っていましたからね。
まずは公爵に話を聞きましょう」
さっそく麗しい親子は公爵に会うために魔術研究室に向かった。魔術研究室は王城の中にあるので、そうかからずに到着した。
王妃と王太子の急な訪れに普通ならあたふたする所だろうが、研究員は変人が多いため、誰も王妃達を気にすること無く自分の研究を続けていた。
城で働く護衛や侍女達も慣れたもので、勝手に研究室の応接間に王妃達を案内し、公爵を呼びに行った。
「これはこれは王妃様に王太子殿下、本日はこのような場所においでになるとは、いかがなさいましたか?」
公爵は表面上はにこやかだが、研究を中断させられて不満だと隠しもせずに聞いた。
「お仕事中邪魔してごめんなさいね。あまり時間をとらせるのもなんだし、単刀直入に聞くわね。
あのオリビアちゃんの頭の花は、どうにか見えないように出来ないのかしら?
とても可愛らしくて私は好きですけど、年頃になってもあのままじゃ可哀想で……」
「ああ、それでしたら問題ありませんよ。見えなくすることは今すぐにでも出来ますので」
「あら、そうなの?でしたらどうしてしないのかしら?」
「それは……まあ……なんと言いますか……見えなくなったら寂しいでしょう?なので、今は私にだけ見えるように出来ないか研究中です」
「いくら親でもデリカシーが無いんじゃないかしら?でもそうね……せっかくなら私も見えるままがいいわ。
ああ、でもやっぱり可哀想よね!もう、我儘言ってないでちゃんと年頃になったら見えないようにしてあげなさいよ!」
「母上、待ってください。私も出来れば自分だけはずっと見えるようにしていて欲しいです!夫にだけは見えてもいいのではないでしょうか?」
「ちょ、ちょっと待ってください!殿下、夫とはどう言う事でしょうか!?」
「公爵、私はオリビアに惚れてしまったのだ。なので私とオリビアの婚約を認めていただきたい!
母上も、オリビアの花は公爵が見えないように出来ると言うことですので、異論は有りませんよね?」
「ええ、私はオリビアちゃんの花を見えなく出来るなら大賛成です。とてもいい子だし、レオンハルトしっかり捕まえておくのよ。
ふふふ、公爵も異論はありませんわよね?」
「くっ……王家の決定とあれば……
ですがせめてオリビアを泣かせるようなことがあれば、こちらから婚約を破棄させていただけるように、誓約書に付け加えていただいてもよろしいですか?
オリビアが婚約破棄になっても、喜んで一生うちで面倒見ますので……殿下、よろしいですね?」
「ああ、大丈夫だ。泣かせるようなことはしないと誓おう」
「うふふ、婚約成立ね。では、公爵は学園に入る前までに花を何とかするように頑張りなさい。
どうしても出来ないようだったら、16歳のデビュタントの朝までに完成している術で確実に見えないようにすること。わかったわね?」
「……わかりました。ちっ、だから茶会など出したくなかったのだ!……腹黒親子め(ぼそっ)」
こうして、まんまとオリビアとの婚約を取り付けたレオンハルトであった。