エピソード13 俺と彼女の出会い
一応最終回です。
翌朝、俺が目を覚ますとすでに足立さんは起きていて、キッチンからいい匂いが漂ってきた。
彼女は俺が目を覚ましたことに気づくと、笑顔でひょっこりと顔を出してきた。
「えーんちゃん!おはよっ」
「お、おはようございます」
「照れてる〜!昨日はあんなに愛し合った仲なのにー」
けらけらと笑う足立さんに、俺はぶっと噴き出しそうになるのをなんとかこらえた。
昨日はあれだ・・・エロ漫画家相手にどうしようかと考えたが、結局なにもできずに朝を迎えてしまった。男としてはとてももったいなかったと思う。
朝ごはんは目玉焼きと焼きおにぎり、それから昨日の夕食の残りものだった。
「こんなものしか出せないけど・・・」
「十分だよ。いただきます」
食べながら、俺は時計を気にしていた。今日はバイトの日だ。そろそろ帰らないと間に合わなくなってしまう。だけど、正直ずっとここにいたいと思う気持ちのほうが上だった。
そんな俺に気づいたのか、足立さんは苦笑して言った。
「バイトなんでしょ?食べ終わったら早く行きなよ」
「や、うん、そうなんだけど」
「私もフィールドワークが終わったら戻るから。えんちゃんちに」
そこまで言って、足立さんは丁寧に頭を下げた。
「ふつつかものですが、またよろしくお願いします」
「いえ・・・こちらこそよろしくお願いします」
お互いにそう言い合って、なんだか笑えてきた。
だけど、俺はそれ以上に安心したのを感じている。だってやっと言うことができたから。自分の気持ちを・・・・・・
・・・・・・・・・・
1人で先に家に戻ってみたが、やっぱりこの部屋の広さに少し驚いた。足立さんのことは信じているけれど、もし帰ってこなかったらどうしようかと思う。
ふと、そのとき思い出した。そういえば昔これと同じ想いをしたころがあったことに。
あれはいつだっただろうか・・・・・そうだ、小学校低学年くらいの頃。大好きだったじーちゃんが突然入院することになったときのことだ。
俺は学校帰りに1人で泣いていたことがある。
そのとき、泣いている俺をどついた変な女の子がいたっけ・・・
思い出しながらなんだか笑えてきたが、急にその女の子の喋り方を思い出した。――やたら足立さんに似てないか?
「なんだよ・・・そういうことかよ」
俺はたんすの1番下の引き出しを開けた。その中から迷彩柄のリストバンドを取り出して、久しぶりに腕にはめてみる。
あの女の子を好きになった俺は、今思えば驚異的な行動力で中学校まで行き、その女の子を探し出して告白したのだ。「好きだー!」って。
もちろんあっさりとふられたが、こうしてまた再会できるなんて思ってもみなかった。
「やっと思い出した・・・あの人が足立さんだったんだ」
・・・・・・・・・・
その翌日、俺の部屋のインターホンが鳴る。
俺はドアの外にいた人物を出迎える。腕にリストバンドをした状態で。
彼女はそれをみると一瞬驚いたようだが、すぐににっこりと笑顔になって俺に抱きついてきた。
こんな拙い小説ですが、読んでくれてありがとうございます。