エピソード12 俺の告白
新幹線、電車を乗り継ぎ、ようやく長野県にたどり着いた。俺は住所だけを頼りにタクシーに乗ってその場所へと向かう。
「ここ・・・か」
ようやくその場所にたどり着き、俺はその家を見上げてため息をついた。
家といってもそこはアパートで、どの部屋なのか住所に部屋番号までは書かれていなかった。
しかし、すぐに見つけた。303号室、足立――・・・・・
ピーンポーン
間延びしたような音と共に、その部屋の奥からガタッと音がした。中に誰かいるらしい。
俺は急に緊張してしまった。もし本当に足立さんだったらどうしよう・・・別に彼氏でもなんでもないのに、こんなふうに押しかけてしまって迷惑じゃないだろうか。
そう思っている間に、すぐにドアが開かれて・・・・・・・・
俺は足立さんと露骨に目が合った。
「・・・・・・えんちゃん・・」
「・・・・お久しぶりです」
「ん・・・いいよ、中に入って」
あのときからちっとも変わっていない綺麗な彼女は俺を部屋の奥へと誘導した。
・・・・・・・・・・
意外にもすんなりと入れたことに驚きながら、俺はリビングのソファに座っていた。キッチンには、お茶を淹れる足立さん。コポコポといい音が聞こえてくる。
こんなふうに来たけど、これからどうしようか・・・
「どうしてここがわかったの?」
「え・・・あ、バイト先のカードで・・・」
いまいち返事になっていないような気もしたが、それでも通じたらしく足立さんは寂しそうに目を伏せて頷いた。
それから、こっちに来て俺の目の前にマグカップを置いた。
「お礼も言わずに出て行ったことは謝ります。それと、散々利用するだけ利用して迷惑をかけたことも・・・」
「1つ聞いてもいいですか・・・?」
「・・・ん」
俺は1つ深呼吸してからずっと気になっていたことを口にした。
「なんで俺の所に来たんですか?最後の原稿を描くときに・・・・・」
足立さんはしばらくなにも言わなかった。それが不安になって、俺は上目遣いに彼女を見た――足立さんは頬を赤くしてただ俯いているだけだった。
「・・・足立さん?」
「――わかってるくせに。どうしてそんなこと訊くの」
「だってわかんないから・・・ほんとに接点とかってなかったでしょ?」
「あったよ。忘れてると思うけど」
静かに言い放ち、足立さんはため息をついた。
俺はなにも思い当たらずにただ首を傾げるだけだった。
「まぁいいよ。とにかく、大学でまたえんちゃんを見たときは驚いた。えんちゃんだったら、私の本性知っても平気だと思った。だから乗り込んだの」
「散々振り回すだけ振り回して黙って出て行きましたけどね」
「そりゃぁここにフィールドワークしに行く用事があったから。黙って出て行ったのは、えんちゃんにあっさりとサヨナラ言われたら嫌だったから・・・・・結構女の子でしょ?」
それこそ俺には意外で、心底驚いた。だけど、決して俺のことが嫌になって出て行ったわけではないことがわかり、少しほっとしたのを感じた。
一方で、足立さんは心底嫌そうな表情をして、俺を見据えた。
「まさかこんな所まで来て、えんちゃんにふられるなんて思わなかったな」
「ふるためにここに来たわけじゃないです・・・・・・迎えに来たんです」
今まで言えなかったこと、俺はようやく言う決心がついた。
「足立さんが好きです」
・・・・・・・・・・