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最強へと至る理由

『現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました』を、200話ほど読まれているとより美味しくいただけます。


挿絵(By みてみん)



『マラソン』



 格安テナントに居を構えるは、

 自称女神が経営するタレント事務所、通称『女神事務所』。


 大物俳優を排出する夢を叶えるため、日夜、某小説投稿サイトに投稿を続けている。



 そんな事務所の休憩室にいるのは2人の男。



「俺は精神最強・・・・・・俺は精神最強・・・・・・」


 目の下にクマをつけたスーツ姿の男は、なにやら意味深な言葉を呟いている。


 そう彼こそは、なろう小説、楽ハン(『現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました』の略)の第二の主人公を演じている、廻谷鉄也めぐりやてつや(ギア・メタルナイツ役)だ。


 彼は深刻な悩みを抱えている。


「どうすれば精神最強になれるんだ」


 彼の演じる役、ギアは精神最強なのだ。

 ゆえにどんな事態が起きてもその精神を揺るがすことはできない。とても難しい役だ。



 そんな苦労もつゆ知らず、向かいに座る筋骨隆々の男はスマホをいじっている。


(リセットマラソンは辛いなぁ)



 ふと鉄也は向かいに座る男を見る。現代最強の男、番重岳斗ばんじゅうがくとだ。役も現代最強ときてるのだから岳斗以上にバーガー役をこなせる者はいないだろう。



 鉄也は岳斗を観察する。


(なにやらスマホを見て険しい顔をしている、いくらはまり役とはいえ岳斗さんも役のことで悩んでいるんだろうな)


 岳斗はリセマラを繰り返す。


(くっ、またハズレだ)



「岳斗さん」

「む、どうした鉄也」

「少し聞いてもいいかな?」

「ああ、構わないぞ」

「どうすれば強くなれる?」

「そうだな(なにかのアプリの話かな?)」

「どんなことでもいいんだ」

「初めは(リセット)マラソンかな」

「マラソン?」

「そうだ、全て(のスマホゲーム)に通ずることだ」

「(やっぱり日々の鍛錬は欠かさないのか)それって(精神最強の役を演じる)俺にも必要なことかな?」

「無論だ、(リセット)マラソンに手を抜けば大きな差が開いてしまうだろう」

「分かった、ありがとう岳斗さん、俺、走ってくるよ」



 鉄也はそのまま部屋を飛び出していってしまった。


「なんだったんだ? あ、またハズレだ。排出率0.0002%とか頭おかしいよこのソシャゲ」





『最強に至る理由』



 鉄也は道を全速力で走っている。


「ぐっ、はぁはぁ、かはっ!」


(なんてキツいんだ、筋トレなんてろくにしたことがなかったから、ここまでキツいとは思わなかった、息が続かない!)


(岳斗さんはこんなことを毎日やっているのか? それが最強に至る理由だとしてもキツすぎる!)


「でも、はぁっ! 諦めるわけには、はぁ! いかない、くっ! 苦しくても無表情で、はぁ! 痛みにも意を介さず、はぁ! 走り続けるんだ!」


 鉄也は走る、がむしゃらに、


 さて考えていただきたい、走ったことが殆どない人間が長時間走ればどうなるか、


「おげろろろろろろろろ」


 そう嘔吐だ。全身も痙攣している。

 だが鉄也はそれでも走りをやめない。


(吐いたくらいで精神最強は止まらない!!)



「あっ・・・・・・」


 そして鉄也は気絶した。







「・・・・・・なの」


(声が聞こえる)


「なの!」

「はっ!」

「あう!」


 鉄也が勢いよく上体を起こしたため、顔を覗き込んでいた少女と頭をぶつけてしまう。


「いたた、いたいの、つらいの、でも、がまんするの!」

「スーちゃん?」


 そう限界を超えたマラソンをして気絶してしまった鉄也を保護したのはスー(不滅龍、スーサイドドラゴン)だったのだ。


 スーは鉄也を自身の巣まで運んで看病(自分の太ももの上に鉄也の頭を乗せただけを指す)したのだ。


「やっぱりがまんできないの! いたいの! やなの!」

「ごめん!」


 離れようとした鉄也をスーは上から覆いかぶさって阻止する。


「なんて力だ!」

「ダメなの! きみはぼくよりつらそうなの、ぼくのねんえきをのんで元気だすの! あーーごぼごぼごぼ」

「え、なにそれは、ごぶっ!?」


 スーの口から液状の羊羹が溢れ出す。鉄也は頭を抑えられたままその甘ったるい吐瀉物を顔にまんべんなく受け続ける。


(溺れる!! 羊羹で溺れる!!)


「ぼたぼたぼたぼた」

「ごぼごぼごぼごぼ」


 スーは鉄也の頭をがっしりと押さえ込む。そして液状羊羹を飲ませ続ける。



「はぁはぁ、げほげほ」

「かふっかふっ・・・・・・おわったの、元気になったの!」


(本当だ、頭痛がとれてる、吐き気もない)


「(原理不明だけど)ありがとうスーちゃん」

「気にしないの、命は大事にしなきゃなの」





 一方その頃、事務所では、



「激レアキターー!!」


 岳斗が両腕でガッツポーズをしている。

 スマホゲームのガチャポンで当たりを引いたのだ。


「マジか! 本当に当たるんだ! やったぜ! 今夜は赤飯よ! んーまっ!」





「よっこいしょ」


 空間を裂いて現れたのはこの事務所の社長、女神だ。

 女神は岳斗の握るスマホを指さす。


「ちょいや!」


 不思議な力がスマホを粉々に粉砕した。


 硬直する筋肉。




 4秒後。


「マアアアアアアアアアアアアアア!!」


 岳斗の咆哮により事務所の至る所にヒビが入る。


 それは声というより、空気の振動を利用した兵器だ。女神はというと涼しい顔をしている、いや、むしろひと仕事終えたような清々しい顔だ。


 もはや倒壊寸前だが、女神は一切気にしていない。


「どうしたのじゃ?」

「『どうしたのじゃ?(あらん限りの女声)』じゃないよ! 何してんだよ!!」

「なにって戯れじゃよ」

「戯れってレベルじゃねーぞ!! こんなんシャレにもならん!! うおおおおおおおん!! 何故だあッ神よ!」

「そこにスマホがあるから」

「なに言ってやったみたいな顔してんだ! ちくしょう・・・・・・何日かかったと思ってるんだ・・・・・・酷い、酷いよ・・・・・・」

「なんじゃ、ちょっとしたジョーダンじゃよ」

「ならスマホ返してくれるのか?」

「それは絶対にいやじゃ」

「なんでぇ!? 頭お沸きになられていらっしゃいません!?」

「なんじゃその言葉使いは・・・・・・気持ち悪いわー、卿が削がれた、帰る」

「あ! ちょっと待てい!」


 女神が指を慣らすと、その姿が一瞬にして消える。

 残されたのは筋肉とスマホだったものだけである。


「くそぅ!! ・・・・・・こんなのってないよ! こんなの絶対おかしいよ! ああーーッ!!」


 そこでマラソン帰りの鉄也が入室してきた。


「凄い音がしたんだけど、一体なにが? 岳斗さん?」

「おろろろーん! 聞いてくれ鉄也ぁ!」

「わぁ、そんなに肩を揺らさないでくれ脳震盪を起こしてしまう、ちゃんと聞くから」


 女神の傍若無人な所業を岳斗は語った。


「人のものを壊すなんて、酷いな」

「だよな、こんなのってないよな!」

「そのゲームのデータは残ってないのか?」

「残ってない・・・・・・。セーブする前に消えた」

「スマホゲームはオートセーブが基本じゃないのか?」

「古風な気質のゲームでな、そのシビアなゲーム性ゆえに人気が出たってのもあるんだ」

「(岳斗さんは、スマホ以上にそのゲームのデータが消えたことを悲しんでいる)分かりました」

「鉄也?」

「俺のスマホ貸すので、リセットマラソンを再開してください」

「無理だ、このゲームにおける激レアの排出率知ってるか? 0.0002%だぜ?」

「やって見なければわからない!」

「俺にもそんな時期があったな(数分前)。・・・・・・よし! 俺も応援するぞ!」


 鉄也はアプリをダウンロードして速攻起動、チュートリアルをこなしていく。


 岳斗はというとポージングをとって鉄也を背後から支援する。


「ガチャポンが引けるところまで進んだよ」

「よし! チュートリアル達成報酬10連ガチャポン、これで当たれば、全てが解決する!」

「うおおおお!!」


 星1『酢ライム』

 星2『虫の佃煮』

 星1『かたたきけん』

 星4『不滅龍スーサイドドラゴン』

 星1『スラ芋』

 星2『不定形の誓』

 星1『めっちゃ焦げてるやつ』

 星4『その沈む夕陽に(イラスト違い)』

 星3『小石』

 星1『スラ芋』


「どうですか?」

「はぁ・・・・・・全部ハズレだ」

「え、全部ですか?」

「俺が欲しいのは星5の激レア『エロ神』ただ一人だ」

「分かりました、また最初からやり直します」

「俺は出すまでに1ヶ月かかった、ちなみにこれでも断然早い。SNSに上げてるやつは数えるほどしかいないからな」

「なら家に持って帰ってやります」

「やめろ、常人がやったら気が狂うぞ」

「俺は貴方に匹敵しなければならないんだ」

「鉄也、何を言って」

「今日はもう帰る、少し待っててください」

「ちょ、おい待てよ! おい! あーあ、行っちまった。地獄のデスロードだぞ・・・・・・鉄也ぁ」



 俺は帰りにスマホをもう1台買って帰った。2つでやった方が効率がいいからな。




挿絵(By みてみん)

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