表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/11

~妻の家出先2~

「ゆうくんが長ネギを買ってきてくれなかったので、家出しました!!」


エヘンと言いたげに、妻は胸をはっていった。

テレビの中から。

意味が分からない。長ネギとテレビの関係性について誰か説明してくれ。

ぽかんとしている俺に妻はニコニコと笑いながら、語った。


「あ、もしかして、私が妻ちゃんだって気が付いてない?」

「いや、気づいてるというか、どういう合成写真してるというか、どんなプログラム使ってるのかと」

「ゆうくんってば、お仕事熱心なんだね。でも、妻ちゃんは本気でオコなので、異世界に家出しました!」


ドヤっとした顔で、妻が言った。

俄かに信じがたいので、PCを探してこのクソみたいなプログラムを解析しようとしてみるが・・・。

テレビにつながっていいるPCの電源が入っていない。

そもそも、テレビ自体電源が入ってない!?

無常にもコンセントカバーはテレビへの電力の供給を拒否していた。


「・・・」

「そろそろ、信じた?」


こんな荒唐無稽な話、誰が信じるというのだろうか。

ネギか!?そんなにネギが欲しかったのか!?ネギが悪いんだろう!?

もはや、ネギを買いに行けばこの悪夢が去る気がして、マンションのとなりのコンビニでありとあらゆるネギを買って、俺はテレビ画面に差し出した。


「ね、ネギだ」

「家出したっていったじゃん」

「俺がネギを買ってこなかったからこんな手の込んだいたずらしてるんだろう!?悪かったから!ネギ買ってきたんだから許してくれ!!」

「だめー。今更ネギを買ってきてもゆるされません!」


悪夢なら早く覚めてくれ・・・。

俺が荒唐無稽な悪夢に晒されているというのに、大きいほうの愛娘は自室から大声を張り上げてきた。


「パパー!?帰ってきたなら早くご飯作って!」


小さいほうの娘はこれまた、お腹をくーとならせて「まんま、たべう」と言ってくる。

俺は未だ現実を受け入れがたいと言うのに、娘達は妻が異世界に家出した事をとっくに理解している。

順応能力の違いだろうか。俺にはとても適応できないのだが。

とにかく、目の前の事から逃げたいのに、テレビ画面の妻は容赦なく、指示をとばしてくる。


「あ、ゆうくん。夕ご飯は作っておきました。雅ちゃんには、お台所の煮物と卵豆腐持って行ってあげて。後、和穂ちゃんも、もう同じの食べれるけど、煮物嫌うからちゃんと食べさせてね」


こういう時の妻は止まらない。学生時代から知っている。

こういうふうに指示を飛ばすとき、次の行動まで全て計算されているのだ。

あがいても、叫ぼうとも、もはや妻の手のうちというわけだ。


「あ、私?私はちゃんとこっちで元気に討伐クエいくわー」


妻は持っていたやけに大きな飾りのついた本を片手に、トコトコと歩いていく。

そして、一瞬にして、いつもの妻の衣服から魔道士のような服に変わる。

突如、大きな獣が妻にむかって飛びかかってくるが、妻はなにもないように、一言。


「消えて」


連続して、魔法のようなものが獣に着弾して、獣は霧のように消えた。


「まま、しゅごい」

「和穂ちゃん、ありがとー。ちゃんとご飯食べるのよ?」

「あい!」


俺は自分の頭を疑い始めた。つかれて見てる悪夢なんじゃないのか。

しかし、俺の指先を握りしめる愛娘の体温はしっかりとあった。

そして、妻が魔道士として魔法を使う姿もしっかりとテレビを通して、見える。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ