~朝日なんか登らなきゃいいのに5~
俺は娘の雅と謎の少年をつれて、自宅近くのショッピングモールにやってきていた。自分の息子に変な格好をさせていたとか、今まで娘さんしか見てなかったのに今日は息子さんをつれているから不倫していたなどと事実無根の噂を流されては堪らない。早めに謎の少年に普通の衣服を買ってやって、早めに帰る事を勧めたのだが・・・。
「パパ、私、お腹すいた」
というワガママ娘のせいで、ショッピングモールのジャンクフードショップで遅めの昼ご飯となった。
まあ、給食にはもうおそいわけで、謎の少年(自称神様)エステスも腹が減っていると思ったので、ジャンクフードで悪いが、昼ごはんの運びとなった。
何かしらのアレルギーはないのかと本人に聞いたところ、「ない」と答えて来たので、適当に好きなものを選ばせたが、もし、自然食品しか口にしたことがない家だったら何かしらのアレルギーが出るかもしれないので、全国の大人には俺と同じようなおせっかいはやめておいた方がいいと言っておく。
まあ、結果的にはアレルギーも出なかったし、問題はなかったのだが・・・。
娘の雅は何を思ったのか、エステスを見て、こう言ってきた。
「あのさ、パパ。養育費ってそんなに安くないの知ってる?」
馬鹿にしなくても知っている。だから、不倫して子供まで作ってしまった父親をみるような顔をやめろ。残念ながら、血がつながってないどころかどこの子供かもわからん。コスプレさせられていたので、可哀想で連れて来てしまった事を適当に話すと、雅はこれまたげえ~と言いそうな顔で、言った。
「それ、誘拐じゃん」
全くもって雅の仰る通りで。早めに警察や最寄りの機関に届けてこないと俺は誘拐犯になりかねない。だから、早めにご飯を食べ終えてもらえるか。エステスを警察機関に届けて、今度は和穂を迎えに行かなければならない。6時厳守らしいので、早めに行って、他のママさんに会わないようにしないと、俺は恥をかくはめになる。想像できうる会話が俺の脳内を駆け巡る。
「あら?今日はパパさんがお出迎えですの?うちの旦那にも見習わせたいわ」
「あはは~、そんな~」
「まま、テレビにいるんだよ!まほうつかいなの!」
絶対いう。っていうか、保育園で言いまわっているに違いない。そうなったら、もはや俺の立ち位置はないような気がする。奥様方の噂のエサである。奥さんがMMORPGだか何だかが好きだから、子供までああなるのね的な酷い噂の的になるだろう。
それで、和穂までいじめにでもあったら、俺はどうすればー。
「パパ、早く行かないと、和穂の迎えの時間になるけど?」
時間も雅も容赦なく俺を苛むのだから、もう少し悲劇に浸っていさせてくれ。