答え 6/10
からんからんと鐘が鳴る。
時間を知らせる鐘と言うのは誰が考えたのだろうかと、学び舎への道を歩きながら考える。
片隅で、規則の根底を築いたのはすごいなぁ、と思いつつ。
太陽の高さと鐘の回数からおそらく始業の前、とは思うものの、同じ道を行く人々は急ぎ足。
起床を知らせる鐘のあとにそのままベッドでまどろんでしまったから必要な鐘を聞き逃したのかもしれない。
そこまで考えて、もしかして遅刻気味なのかもと思い当たる。
遅刻するとまた教師がうるさくなるなぁ。
学長に通告されると面倒だな…。
これは仕方がない、仕方がないよね。
と言う考えのもと、呪を編む。
目的地を教室として転移の術を発動させたはずが…。
「何をしている」
目の前にいるのは黒いローブの男。
「えーと、教室に向かおうかと」
男はフムと頷いたあとに言葉を続ける。
「学び舎内での魔術の使用については制限があることは知っているな」
はいともああともええとも言いがたい言葉が口から漏れる。
男は無表情なまま言葉を続ける。
「成功率が低い転移を成功させたことについては素晴らしい。奇跡を起こす君の才能についても同様だ」
褒められたことにへらりと笑う。
「しかし、使用許可外の範囲で使ったことは処罰対象だ。反省文の提出を、私に直接するように」
そういうとカツカツと去っていく。
あとに残ったのは転移を成功させた彼のみ。
「学長…厳しすぎだろ…」
遅刻はしなかったのになぁ…と頭を垂れながら彼は教室へと向かうしかなかった。