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答え 5/10
火事を知らせる人の声。
遠くからは悲鳴が聞こえる。
慌しい大人たち。
焦げつく臭い。
頭をなでる大きな父の手。
集落の境から中心に向かってなにかを追うように炎は走る。
自分の手を引きそれから逃れる母の背。
焦げた臭いに混ざる、血の臭い。
熱風、呻く人の声。
業火に呑まれる自分の知った人々。
どこをどう進んだのかわからない。
手を引いていた母も、人の声も、いつの間にか消えていた。
少女の目前には、燻るのみで何も残らなかった集落。
聞こえた音は、己の口から洩れる声だけだった。
雨が、降り出した。