答え 4/10
からんからんと鐘が鳴る。
この町のはずれにある、学び舎。
そこからの鐘が今日も響いている。
学び舎の正式名称は別にあるのだけれど、人々にはそれで通る。
入学には狭き門、でも将来は約束される。
学び舎を目指してきた人と、目指してきた人を相手にする人でこの町は栄えてきた。
頼まれたものを入れたかごを抱え、商店街を抜ける。
すれ違う顔なじみの店主と言葉をかけながら家へと急ぐ。
大きい荷物はあとで届けてくれるはずだ。
学び舎への門は開放されている。
年齢も性別も身分もすべてに差が無く、誰でも試験を受けることができる。
合格すれば、学び舎内で衣食住、そして卒業後の生活が保障される。
何度でも受験は可能だが、知性だけでなく適性が無ければ入ることはできない。
しかも、適正は後天的なものではなくて本人の資質のため、基本的に受験は1度きり。
年に1回の試験には大勢の人が訪れ、落胆して去っていく。
そんな中で、強い意志も無く興味本位で受験し、受かった自分はラッキーだったのかなと思う。
合格が知らされたときは父や母のほうが卒倒しそうな状態だった。
まぁ内緒で受けたからだけど。
でも、合格を喜んで送り出してくれる。
町の人も、まさか身近なところから合格者が出ると思わなかったようで驚いていたな。
家は宿屋を営んでいる。部屋数はさほど多くない。
自分が出て行ったあとは弟か妹が手伝うのだろう。
季節が変わる頃、学び舎での生活が始まる。