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眠る世界  作者: 846u1
1/11

答え 1/10

夜風に当たりながら男は酒を呑む。

天には月、山肌を覆う木々、月の光を映す湖、遠くに街の光。

男はただ、杯を片手に景色を見ている。


『回ってしまった歯車は、どれかひとつだけをとめる事ができない』


かつて言われた言葉を思い出し、口元が緩む。

小さな妹が、集まった兄弟に言った言葉。

哀しそうな様子で言葉は続く。


『始まってしまったことは、とめられないし、とまらない』


あの時、もう一人の妹は彼女のそばで、弟は自分の横でその言葉を聞いていた。


『その先にあるのが破滅か希望か、行き着くまではわからない。でも』


哀しそうなまま、そこまで言った小さな妹が顔を上げる。

まっすぐに長兄である自分を見る。


『この世界が好きだから、破滅はいやだなって思うの』


小さな妹が好きだと言ったこの世界が壊れるような、自分たちの望まない結末になることだってあるだろう。見守るだけになるかもしれない、ただ見届けるだけなのかもしれない。


酒のすすみがはやいのは、離れた兄弟を思い出したからなのか。

ビュービューと吹く風は相変わらず冷たい。

あの時自分が返した言葉は小さな妹に届いたのだろうかと思う。

届いていなくても、その言葉がとどまっていればいい。


天には傾いた月、薄明るい山肌、月の光を映す湖、遠くに街の光。

男は杯をおいて立ち上がった。

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