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The call of darker ⑯

何処かで入れるべき伏線を、入れ忘れた気がする……まぁ、うん……うん

「なぜ、お前が此処に『蛸』に似た御神体があると?」

「正直なところ私もマジでそうだとは思ってなくて」


 ダルクは若干驚いた様相をしていたが、直ぐに表情を引き締める。レイアが《契約》したあの蛸が本当に御神体ならば……干物という発言は大きく矛盾する。


 しかし、肝心な所ではあるが、今は重要ではない。


「ぶっちゃけ、ここ最近妙に触手に縁がありましてねぇ。にしても御神体が『蛸』の干物とはまた、奇妙な神社ですね?」


 探るようなダルクの言葉に、暫し首を傾げるハーディス。御神体というものは神社にとってとても大切なモノだ。しかし、誰も本体を見た事が無いというのは……大きな矛盾だ。しかも蛸の干物など……祀るだろうか? いやいや、流石にねーよとダルクは思った。

 そして暫し考えたハーディスは……色々と思い当たり、訂正した。


「……御神体に関して少し、思い違いをしているな」

「え?」

「一応、名の知れた神社だ。なのに、公に出来ない御神体などある訳がないだろう?」

「つまり祀っている神様はここに居たらしい『蛸』を含めると2柱って事ですか」

「そうだ、本殿にいけば立派な『薬師如来』様の仏像がある。祭り前だから公開されているし、せっかくだから拝んで帰るといい。なんかお前呪われてそうだし」

「ひっでぇ事いいますなぁ。ま、気が向いたら寄らせてもらいますよー。患ってる病気はありませんけど」


 ダルクは背中にいるであろうハーディスへと、言葉の中へ暗に行かねーよと意思を込めて告げる。背後で、「ふっ」と苦笑する声が聞こえたので意味は通じたようだ。

 それから、ダルクは足を進めて宮へと踏み入った。土足で。しかしハーディスは彼女を咎める事はなく、寧ろ彼女も土足で共に宮へと足を踏み入れた。


 陽の光が遮られ、仄暗く冷たい雰囲気が辺りを包む。そんな中、ダルクは魔法陣を、ハーディスはお札を手で触れ調べるように撫でた。


「干物の蛸、って言葉だけだと只のおつまみっすね……」

「……確かに言葉にするおかしく、それでいて妙な話だな。まぁ、私は母から聞いただけだから本当に蛸の干物があったとも限らないが」


 そんな雑談を交えながら、思案しつつ魔法陣を調べる。藍色の塗料で隙間無く描かれた幾何学模様の魔法陣は、規則性を感じさせる構造をしており、それが床や壁、天井に広がっていた。観察して、時に指でなぞる。特殊な顔料でも使われているのだろうか? 使われたであろう塗料には経年劣化した様子が全く感じられない。


 そして、幾何学模様の魔法陣に該当するモノは記憶に無い。魔力を流して反応を見てみたくもあるが……やるにしても、確認しなければならない事がある。


「先生、魔法陣か……もしくはそのお札の用途の意味とか用途とかって分かります?


 魔法文字ではなさそうで、しかしミミズがのたくったような文字が読めるほど、ダルクの識字率は高くない。だから専門職のハーディスへ聞いたのだが。


「すまん、魔法陣は完全に知識が無い。札の方も達筆すぎて私にも分からん」

「……先生、お経とか唱えた事ないんですか?」

「流石に、私を馬鹿にしすぎだぞダルク。しかし、お札の文字は宗教に関連するものだと考えていたのだが……少なくとも仏教に関する札ではないな」

「そうなんです? かと言って公用語でもなく、英語や日本語でも無さそうですしねぇ。でも文字だと断定して考えると……1番近いのはアラビア語かな?」

「言われてみればそう見える気も……博識だなお前」

「知り合いが考古学オタクなもんでね。いらない知識が日々、無駄に溜まっていくんすよ」


 楽しそうにそう言いながら調べ続ける彼女を見て……ハーディスは微笑ましく思えた。それから、学校において彼女の悪評を良く聞くからこそ、第一印象は悪い方だったのだが、思い直す必要がありそうだ。


 同時に、優秀な生徒だとも思う。博識なのもそうだが……ダルクという少女は見た目や言動に反して、大人な思考をしている。ただ、若さ故の好奇心や探究心が抜け切らぬからこそ、自分勝手な行動が目立つのだと感じた。


 ……知り合いの、ジルが探偵事務所で雇う理由が分かった気がした。


 そんな彼女の視線に気がつく事なく、ある程度ダルクは宮の中全体を調査し終えると、頭の中で感想を纏めてる。


(札の文字が分かれば、少なくとも何かヒントが得られるかもと思ったが。おいおい、難しすぎるぞ、この謎解き……。

 だが、幾何学模様の魔法陣に特徴するところには大抵、魔力を流す起点があるはずだ。

 ……ふむ、試してみるか。一応先生に確認してから)


「先生、手っ取り早く、私なりに調査してみても良いっすか?」

「宮を破壊するような事じゃなければ。勝手にやれ」

「では、お言葉に甘えて……」


 ダルクは腕に魔力を纏い、床を叩く。魔力の振動が床から宮内全体を伝わり反響する。そんな中で1箇所、反響が大きく乱れた箇所を感じ取ったダルクは


「ここだ!!」


 入り口左の壁に貼ってあった札に手を付け、魔力を遠慮なくぶっ放した。瞬間、部屋の幾何学模様が青白い光の線を描き、札は炎のようなオーラを纏うと、中央の空間に向かって光の線を伸ばす。

 軈て全ての札が線を走らせ終えた瞬間、1人の体が透けて見える老婆の姿があった。


 高身長で、知的な印象を受ける嗄れた顔の女性だ。しかし老いて尚、立ち姿に若々しさを感じる。


 しかし、彼女まるで幽霊のように揺らめいていた。


 ダルクは正直、何が起きているのか分からずにただ警戒しながらも、謎の老婆の姿には見覚えがあった。持ってきていたファイルに入れてある写真の中の女性と同じ容姿をしていたからだ。


「この人って……」

「母さん!? だが、何だこれは……」


 驚き戸惑いながら、ハーディスが彼女の体に手を伸ばす。すると少しだけ姿が乱れながら、手が透けた。そこに映し出されたハーディスの母の体には『実体』が無いのが分かった。


 立体映像を投影する魔法の一つか?

 それとも、信じてはいないが、幽霊的な存在を召喚する魔法か。


 正直なところ、この状況で魔力を流し続けるべきかダルクは判断に迷っていた。だが、その迷いの時間があったおかげだろう。


 沈黙していた彼女が、急に周囲を見渡した。動き始めたのだ。


 ただ、こちらの姿は見えていないらしく、彼女は首を揉みほぐす仕草をしながら口を開いた。


『あっ、あーあー。マイクテースト。よし……!!

 これより記録の再生を開始するぅ!!

 この映像は一方的に私が話すだけだー。それと一度でも再生されれば回路が焼き切れる設定にしてある。ま、老人の長話や思うて気長に聞いてくれや』


 驚く事に、突然話し始めた。しかも、とても聞き取りやすく、ハッキリとした声でだ。

 それが分かった瞬間、ダルクは癖で咄嗟に携帯端末に手を伸ばし、録音を開始する。


『まず、ここに私の娘がいるのなら謝らせてくれ。すまんなぁ、私は死んだと思う。

 いやまぁ、実を言うと半分くらい色々と侵食されてて、寿命的にはギリギリだったんだが。黙って去って本当にすまんなぁ』


 ハーディスの表情が、神妙なものへと変化した。


『そしてこの仕掛けを見抜いたのなら、まー、そこそこ優秀な魔法使いがいるって事やな。正義感がある奴なら嬉しいが。

 いや、アイツは入れないようにしたっけ? まぁ、どっちでもいいか。


 さて、何処から何を説明したものかね……。せめてカンペくらい用意してから、この映像を残すべきだったよ。時間が無いな……急がねば。魔力と条件限定で作動する特殊な魔法だしなぁ、再現無理だし早くしなきゃな。

 鍵をデカイ蛸……正確には誰かに契約された『御神体』なんだが、ソイツから受け取って、態々ここまで来た物好きよ。老人からのお使いやと思って一つ、長話ついでに頼み事したいんやが、付き合ってくれん?』


 そう言うと、立体映像の彼女は座り込み胡座をかいた。……なんとまぁ、呑気な態度だとダルクは思うも、ハーディスは違う。流石に色々と思うところも考えることもありごちゃ混ぜな感情をどうにか整理している、そんな表情をしている。


(映像とはいえ……母親自身から自分は死んだかもしれんなんて言われたら普通はそうなるか。先生の代わりに私がしっかり聞いとくしかねぇな)


 ダルクは一度逸れた目線を、元に戻す。


『さーてさて、何から話した事やら。

 まぁ、時間もないことやさかい簡潔な事を伝えた方がええか。


 まず、儀式が成功していれば、私の意識……正確には魂の半分くらい使って、あの蛸の御神体に『人間性』を与える事で、私の意思の元、活動できるようにした。魔力の流れから魔物と思われて討伐されねぇ事を祈りたいが、まぁ私だし大丈夫だろう。後はまぁ、グレイダーツに興味を向けさせて、魔力供給できりゃいいが……。これも賭けになるか。


 それから、そうだなぁ……あの蛸を簡単に言っちまえば『神様だったモノ』やね。細胞検査の結果から最低でも300年前の遺物で、どうして、どうやって生まれたのかは分からない。だが、まぁ今、そこはどうだってええ。

 大事なのはこの蛸が『神』……正確には信仰心や敬い、敬意、なんでもいいが真摯で清い願いを多数の人から向けられた存在だったいうことや。

 民俗学者の私の見解だが、そういう心の拠り所とする存在が神様となるんちゃうかなって思う。まー、つまり神なんざ、多数の人々から信仰を向けられれば、そこらに転がってる石ころだってなれるいうことや。


 そうして少しずつだが『純粋で清い魔力』が溜まっていくんだ。やがて、それが神秘を有る存在に昇華され『魔法のような奇跡』を齎す……まぁ、この土地の神様は、そういうシステムから生まれた存在だったんやろね。純度の高い魔力というのは、魔除けにもなるし。


 さて、ここで突然話しを変えて申し訳ない。だが大事な事なんだ……知ってるか? 綺麗な心から生まれた魔力があるのなら、必ず逆も存在するんや。

 魔物の動力源である、汚れた魔力がそれに該当するんやないかと。


 そして無駄に世界を回ってきて考えた結論なんやが……汚れた魔力なんて言われているが、意識ある者から生まれる魔力……つまりは『人の悪意から発生』する。昔の呪術とかは完全にこっちの魔力を生み出して用いたんやろうね。エジプトの壁画が良いヒントくれたわ。


 して、私はこれら人の悪意から生まれた魔力を『澱み』と呼ぶ事にした。


 それから……魔法が世界の礎の一つである世の中で『信仰』が失われなかった要因はたぶん、ここにあると私は考え……おっと、話が逸れた。ってか、あと残り時間半分くらい?


 時間がないから、簡潔に話す。いいかいな? ここ、ここからが大事や。


 この土地はあの蛸の魔物を基礎に、大きな厄災から遠ざける為の『境界線』が張られとる。

 たぶん今で言う魔物は遥か昔では、悪魔、妖怪、悪霊なんて呼ばれていたんと違うかねぇ。


 まぁ、要するに結界はこれらから人々を守る領域を作ったんや。でも、数が多いと結界にも限界がくる。


 そこで、古代の人々は神聖な領域である神社と共に『澱み』を『浄化』する為の神殿を建てた。過去の魔法の扱いはだいたい奇跡として扱われてきたから、的外れな推論でもないと思うよ。まぁ100年は正常に作動していたんだろうさ。


 しかし、この土地は少々特殊なようでねぇ。砂浜が広がると同時に、少しずつ海に沈んだんだ。驚く事に。地盤検査でそれが分かった。


 結果、海に沈んだ神殿はやがて人々から忘れ去られた。それはつまり約200年の間、浄化される事が無くなったって訳や。


 こうして約200年もの時間の中で溜まりに溜まった『澱み』は、当然ながら生まれる為の『器』を求める。しかし、そんじゃそこらの魔物とは格が違う。本当の意味で、世界最悪の魔物となる魔力の塊。


 そして魔物の原動力は基本的に『悪意』や。だから人を襲うんじゃないかなって私は思うよ。全く面白い世界のシステムや。人の汚れは人で綺麗にせいって事やて。


 まぁ、ここまで来れば言いたい事は分かるだろうさ。そう、神殿の『澱み』はこの場所の『御神体』を虎視眈々と狙ってやがった。しかも、器無き存在であっても強大な『悪意ある魔力』。


 奪われたら洒落にならない、最悪な魔物が生まれてしまう。


 そして『澱み』が弱まった境界線を越えた日に、私は決意した。『澱み』は、今後この世を脅かす存在になり得る。どにかして、倒さなければならない。


 ならどうすれば倒せる? ぶっちゃけ魔力の塊故に、魔法で作られた攻撃はほとんど吸収される。まぁ、例え魔法使いの精鋭が多数所属する魔導機動隊役に通報しようが……相手にされないやろうがね。いや、誰が聞いても与太話にしか思われないか。


 そうして1人で考えに考えた結果、一つだけ可能性を見出した。

 私が『御神体』を操る事にしたんや。御神体には無限の可能性があるからなぁ。それに世界旅して、無駄な知識ばっかり増やしてきた訳やないんよ。


 それでもなぁ……御神体に込められた純度の高い魔力をどう使えば良いのか分からなくてなぁ。まぁ最終的に爆弾にしようとしたんやが、下手に扱えば自爆するか『澱み』に御神体を乗っ取られるかもしれない。迂闊に扱えない。


 あとは時間がなかった。ここ10年は安定していたのに急に……境界線が弱まり始めた。それはつまり、神殿の澱みが動き出した証拠や。ついでに私の余命も結構ギリギリでな。


 だからこの決断をした、してしまった。誰かに相談する余裕もなかった。友達少なかったからな。


 こほん……『御神体』には『澱み』と真逆の『清い魔力』がある。その為に、肉体を活性化させて、長年かけて肉体組織を蘇生したのが役立った。本当は生物的サンプルを取る為だったんだが、結果オーライや。


 さて、ここからは『もしかしたら』の話。私がこの『御神体』を本当の意味で操れるかは分からない。そりゃそうやて、そこらの一般人を飛行機のコックピットにぶち込んで操れって言ってるようなもんやからな。


 だが、どちらにせよ放置しても、いつかは魔物に取って代わられる。だから、私は可能性に賭けた。私が中に入る事で、純度を保ちつつも、魔物にならないようにしよかと。


 お前何言ってんのかよくわかんねーってなったら私の書斎にでも訪れてくれ。もしも、もしも操る事が出来て……この土地に再び訪れる機会があれば、私は『澱み』と戦える可能性と覚悟のある魔法使い達に対して『鍵』を託すと思う。


 あの鍵は私の隠し部屋を開く鍵だ。和室の掛け軸を調べてくれ。


 おっと、あと1分か。


 そうやな、勝手な事だろう、すまん。こんなことを頼まれて困るやろうて。

 でも頼むわ。いざとなれば、どうにかしてグレイダーツって有名な魔法使いに私の名前を使って相談でもしてくれ。あいつは私の事なんざ覚えてないやろうけど。


 それと『澱み』の倒し方について……この後、私の身体を生贄にして儀式を行う予定や。成功してりゃ、不完全な身体を与え『魔物』へと『降格』させられる。海水という器に無理矢理ねじ込んでやるんや。要するにスライムみたいなものさね。成功すれば数年は、澱みが溢れる事はないやろ。


 器を与えたら倒し方はスライム同様や。ぶった切ったり炎で焼いたりするだけで、ある程度弱体化させられる……筈。流石に実験する事は無理やて。はっはっは、私死んどるさかい。


 それで弱らせた後『御神体』を神殿の近くに落としてくれりゃ、刻んだ魔法陣を使って殲滅魔法を発動させるわ。


 要約すればやべぇデカブツ倒す為にまず『御神体』……『器』を餌に神殿から誘い出し、出来るだけしばき倒した後で『御神体』を投げ込んでくれって事。


 かなり遠回りな事をしている自覚はある。だけどな、どうしても見つかってはいけない奴がいてなぁ。時間もねぇ、友達も少ねぇし巻き込むのも気がひける。家族に相談など以ての外やて。父さんには申し訳ない思うてる。


 だから、こんな面倒な魔法で伝言を残す羽目になっちまった。


 言いたい事はまだまだあるが……時間やねぇ。ま、これを見てる魔法使いの君ぃ。健闘を祈る。人類の為と思って頑張って戦ってくれや』


 ……激励の言葉と共に、映像は終了した。ハッキリ言おう、流石のダルクも脳の思考やら記憶領域やらが情報過多でオーバーし、こんがらがっていた。隣にいたハーディスも同様に、頭を片手で押さえて頭痛を堪えている様子だ。


「終わり? まって、意味分かんねぇってか、情報量多過ぎて頭痛い。録音しといてマジでよかった」

「何なんだこれは。私の母はいつからこんなことを?」


 各々、考える事が多過ぎて、2人はその場に座り込むと頭の中で情報を整理する。


「ちょーっとこれ……私の手に負えないんだけど」

「しかも、どうやら私の母さんは……死んだ、らしいな」

「言葉ですがあの、先生やけに冷静っすね? 貴方のお母様なんかやらかしまくって、お亡くなりになったかもしれないのに」

「……正直な、薄々は覚悟していたんだ。あの人はいつかどこかで、何かやらかして死ぬんだろうなって。それくらい自由奔放な人だと思っていたが、まさかこんな事を研究してたなんてな」

「掛ける言葉が思い浮かばないんで、取り敢えずお悔やみ申し上げます、と。あと失踪事件、これにて解決。鬱になりそう。ほんっと、色々と無視できない事押し付けられたなぁ。先生のお母様、ちと投げやり過ぎやしません?」

「喧しいから騒ぐな」

「先生は関係無いって顔すんな!!」


 この日ダルクは、本当に意味不明な状況と情報過多で混乱すると、自分は予想以上にテンパる事を知った。


 そんな中で、年の功……というには若いが精神年齢が無駄に高いハーディスは、悲しむのは後にして思考を走らせた。


「……海にヤベー奴がいる。私の母さんが自分を生贄にして、ヤベー奴を倒せるようにした。ついでに最終兵器『御神体』の中に入ってヤベー奴から逃亡中。ついでに御神体はなんか特殊な魔力渦巻く爆弾付き、と。ヤベー奴を適当にしばき倒して、最終兵器『御神体』を投げ込み吹っ飛ばす。こんなところか?」

「いやいやいやいや、要約されてもどうしろと……」

「簡単な事だ、ヤベー奴を倒せって」

「ヤベー奴『澱み』だっけ? あの黒い触手が仮に一部だったとして、英雄に助けを求めるくらいの相手だと仮定したら……私らは勝てんのか?」

「私は見た事がないからなんとも。しかしどちらにしても、私もお前も一度落ち着く必要があるな。情報を整理する為に一旦、私の家に戻るとしようか? 母さんの遺言ならば、私は無関係になるつもりはないのでね」

「……そうっすね、掛け軸に隠し部屋があるとかも言ってたし。リアっちが帰ってなけりゃいいが。もしかしたら掛け軸の仕掛けに勘付いて、勝手に入ってる可能性もあるか?」

「品行方正なリアが、勝手に人の部屋を漁るなんて事はしないと思うが」

「それがですねぇ、実は好奇心が私と同じくらい高いようなんですよー」

「……なるほど、模範的優等生だと思っていたが、やはり一癖くらいはあったか」


 そんな会話を交えながら、2人は早足で宮を離れる。

 2人の姿が過ぎ去ったのを見届けたかのように、宮の扉は緩やかな動作でゆっくりと閉まっていった。

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