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世界軸15


 ダルクとレーナはミスカトニック大学が提供している《特殊門》を使い、とにかく竜の石碑がある場所を探していた。その道中に同じミスカトニック大学の学生と出会い、彼等も途方に暮れている事を伝えられて苦笑いしつつも。何人かは日本にも向かったと知り、2人は早々に探索を終えると、メインの草薙剣を見に行く事にした。


 名を炎田神社。建造物の歴史は、遡れば300年と長い。


「炎田神社とーちゃく!!」


「やけに静かですね……」


 人魔大戦(仮)が起こっているとは思えない程の静けさが、そこにはあった。


「不気味さも感じねぇな。なんか神聖な雰囲気」


「神社って元々そういう場所ですしねぇ」


 会話しながら進むと、竜の石碑を見つけた。二対の石碑は3mほどの間隔が開いていて、中央に階段が伸びている。ダルクとレーナは階段の数を数えながら登っていき……。


「……52段の階段」


「本当にここかもしれません。ダルク、気をつけて行きましょう」


「だな」


 巨大な鳥居を潜ると広い境内に出る。真っ直ぐ参道が伸びており、その先に拝殿が見える。


 避難警報や指示のおかげか、境内に人は居らず。侵入し放題だ。


 そして、ここまで特に呪いらしい出会いは無い。雰囲気もずっと神聖で心が落ち着いていた。ただ拝殿に近づくにつれて『圧』のような足取りが重くなる感覚が酷くなっていく。


 やがて拝殿に辿り着いた。大きな参拝室があり、同時に参拝室を建てる事で本殿への道を閉ざしている。賽銭箱もある事から一般人が入れる限界がここまで。


 2人はさっさと拝殿を抜け……本殿を前にして。他の神社の本殿特有の建築物ではあるが、建てるためには人間の知恵が光っていた。木々が組まれ模様が彫られたり、色褪せ具合が数百年は長い年代を感じさせたり。とにかく、言葉に尽くし難い。

 そんな本殿の唯一の入り口。木製の扉は無残にも粉々に吹っ飛んでいる。神社の関係者が居ない事から、避難が行われた後に吹っ飛んだであろう事は想像できた。


 その中央には……少し眩い光が見える。


「当たりだな」


「ミスカトニック大学に連絡を入れてきます」


「じゃあダルクさんは先に見に行ってるね」


「いやいや!! 待っててください!! 危険です!!」


「いやぁ、ガチでやばい場合は……私の方が対処はし易い。それにあの光ってる奴が敵だった場合、レーナが逃げる時間を稼げるだろ? 合理的な判断って奴だ」


「ダルクだけが危険な目に遭うのは……」


「綺麗な言葉を並べたが。ぶっちゃけ好奇心が疼いて他の人に取られたくない。私が先に見に行きたいです!!」


「好奇心」


 レーナは、はぁと息を吐くと。


「お気をつけて」


「おうよ」


………………


 薄暗いはずの本殿は、奥にある謎の光る物体のおかげで仄かに明るい。ダルクは警戒全力で近づいていく。

 それが蹲っている人間だと気がついた。まるで何かを抱えるように。


 そして面影がどこかリア・リスティリアと重なった。つまり……あの封印物の中身の可能性が出てくる。しかし、禍々しさは感じず。けれども、人を従えさせるような強烈な圧を放っている。


 同時に、背中に草薙剣が突き刺さっている。アレ抜いたら確実にボス戦だなとダルクは思った。ゲーム脳である。


 あとめっちゃ心臓の鼓動のような音が聞こえるのと、草薙剣からは黒々とした瘴気のようなものが溢れてはリアに吸い込まれている。


 なので。


 どうするか勿論、もうお分かりですね?


 「ダルク、抜きまーす!!」


 一応、言い訳をさせてもらうなら。今草薙剣を飲み込まれると、たぶん全力で面倒な状況になりそうだと考えたからだ。あの瘴気のような靄が、八岐大蛇のモノなら。当然、復活するのは1000年以上前に日本を滅ぼしかけた化け物の可能性が高い。


 だが逆に武器にもなると考えた。この瘴気……と聞けば悪い印象しか抱かないのが普通だが、ダルク的には使えそうと思う感性があっての行動だ。これが呪力ならば……魔力しか操れない自分にとっては強力な手札にできるだろう。


 同時に、神力が何を求めるかも検討がついた。恐らく器だ。このリアは器を求めてここにいる。


 神力は強烈なプラスエネルギー。だからこそ意識がないなら分散し易いのだと思う。あとは、まぁ信仰か。


 ウカノの命が存在していられるのは、ウーラシールの人々の信仰があるからだ。信仰がプラスのエネルギーを自然に集めて形を成し神を創る。と、神話関連の世界に足を踏み入れた時に聞いた。


 恐らく、このリアは知らずのうちに異世界の人間から信仰されていたのだと思う。量子コンピューターを操り世界と未来を見据える存在を、人々は神のようだと考える筈だ。少なくともダルクは事情を知らなければそう考える。


 と、ごちゃごちゃ言い訳やら考察やらを並べたが、抜く事に変わりはない。草薙剣の持ち手を握ると僅かながら熱を感じた。


「よっこいしょ、おーっとぉー?」


 軽く力を入れるとすんなり抜けた。


 瞬間。目の前が真っ白になって「ドゴォ!!」と衝撃と共に身体が後方へぶっ飛ぶ。錐揉み回転しつつも、運良く入り口の方へぶっ飛んだ身体は、地面を転がり滑った後に止まる。完全武装のおかげで殆ど無傷だ。ヘルメットの重要性を実感した。


「いってぇ」


 どうにか草薙剣は手放さなかった。そしてレーナが面白い顔でこっちを見ている。


「なにをやったのですか……?」


 2人して本殿の中に目を向ける。黒と白の光が交差しながら膨れ上がり、8本の首らしき物体が屋根を突き破りどんどんと伸びる。


 そして伸びた首先から光が溢れて……神話のドラゴンのような厳つい顔を形成していく。ギルグリアやカラレアのおかげでドラゴンを見慣れたダルクですら、畏怖を感じさせた。


 ついでに本殿が崩壊を始めたので2人は猛ダッシュで距離を取る。


「なんか復活してるじゃあないですか!! 何やってるんですかダルク!!」


「これこれ」


「まさか草薙剣ですか?」


「吸収しようとしてたからさ、掴んで引っこ抜いてきたぜ」


「行動が軽い!!」


 ある程度の距離を取り見上げると、光は収縮し紫色へと変貌していく。完全に崩壊した本殿には巨大な……肥満体のドラゴンのような胴体がある。飛べなさそうな小さい羽が可愛らしい。


「あら可愛い」


「可愛くないですよ!! そんでもって、八つの首が全部こっち見てますよ!?」


「草薙剣を狙ってんねぇ」


 ギュンと音が鳴ると、草薙剣は擬似4次元空間へと吸い込まれていった。《鍵箱》に収納したのと同時にライラに頼んで作った特殊武装を取り出す。グラル・リアクターからほぼ無期限の電気を放てる槍である。リボルバーは……効かなさそう……。悲しいかな。少し補足するが、ダルクは《雷鳴讃歌》という雷魔法を使えるのだが、この物語では一度しか出てきていない。悲しいかな、今後も使う事は稀になりそうだ。


 話を戻して。知性があるのか無いのか分からない八岐大蛇は全部が大きく口を開けて、何か光の球を作り始めていた。


「滅びのバース○ストリームかな?」


「ミラフォ無いんですけど?」


 ボケでボケを返すレーナもなんだかんだ心には余裕がありそうだなと思ったダルクは、さてと迎撃しますかと準備していた……のだが。


 ……その時、背後から声がした。錫杖の流れるような軽やかな音色を鳴らし、いつから居たのか分からない男、ショウケイが歩いてくる。

 彼は苦い顔をして隣まで来ると。彼はダルク達の話を聞いていたのか控えめな声で言う。


「でも、ミラフォはだいたい発動しない定めだから」


「最近インフレしすぎなんよ。んでショウケイさんは何かご対策が?」


「真面目に迎撃するのは馬鹿らしいだろ。避けるぞ少女達」


 ある程度の状況予想をしていたショウケイは極めて冷静に。けれどとても面倒な事になっているなと考えつつも。


 八岐大蛇の巨大な口から激っていた光が迸る。光は参道全てを飲み込み、ついでにと街の向こうまで、まるでケーキを切り分けるように焼き払っていった。


………………


 空の上。不思議にもフワフワと浮かんで3人は見下ろしていた。八岐大蛇の一撃は凄まじく、レーザーの一本でここまでめちゃくちゃになる威力なのだと痛感した。あと攻撃受けて家壊された人可哀想とダルクは思った。


 それはそれとして、考えることは同じなようで、3人は同時に正方形の紙を取り出すと。


「これ名刺だ、俺の事務所の」


「私も探偵事務所の名刺」


「同じく探偵事務所の名刺です、よろしくお願いします」


 ぺこりとお礼をすると名刺交換を済ませた。

 さて、ここからどうするのかを話し合わなくてはいけない。ダルクは一連の流れをショウケイに説明する。すると彼は難しい表情で現状を分析した。


「さて……推測になるが、アレは純粋な神力の塊じゃねぇな。内側に呪力を内包してる」


「え、そうなんすか?」


「信仰されて神力を得たリアの遺体が、無意識にヴァルディアを押さえ込んでいるんだと思う。そんでヴァルディアの純粋な破壊衝動に耐えきれずに暴走してる感じだな」


「態々、草薙剣を求めたのも?」


「リアに無駄に神力を消費させて、脱出する為に……神として顕現させたと考えてる。だから俺達は中にいるヴァルディアを引き摺り出して、討伐しなくちゃあならないし……リアの遺体を利用しなくちゃならない。純粋な神力の塊だからな」


「すっげー面倒くせぇボス戦っすねぇ」


「マジでそれ。さて俺が分離を試みよう。2人は中立の『魔力』か『物理』で攻撃しつつ誘導……キツかったら逃げても構わない」


「一応、聞いておきますけど。神力と呪力が衝突して魔力になって自然消滅する可能性は?」


「俺の研究分野なんだが……推測は出来ても結論は出せてないんだ。研究者としては、とても興味深い状況だけども。観察してたら世界がヤバい」


「おーけー、ヤバいの了解。んで分からんことは専門家に任せる。レーナはどうする?」


「魔導書もってきてます。案外、私だって戦えるんですよ?」


「そか、なら行くかぁ」


 行動方針は決まった。さて上手く行くのだろうか。絶対にグダるだろうなとダルクは思った。そしてショウケイが始まる前にフラグじみた台詞を零す。


「他の神が触発されて出て来ないでください……。特に自我が無い系……」


 ダルクとレーナは即座に心の中でツッコんだ。口に出すからフラグになんだよ!! 心の中で留めとけ!!

テコ入れ頑張ってます

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