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世界軸11

モンハンワイルズが楽しみなので初投稿です


 そもそもの話、英雄はどうやって第一次人魔大戦を戦い抜き、人々を守ったのかといえば。歴史に名を残した英雄が100人ほどいるだけで、クラウやデイルのいたクラス以外も大概にヤバい奴らの集まりだったのもある。そして、ヴァルディア以外の全員が『善性』を持っていた事が大きい。当然、後に金をねだるやつもいたが、それはそれで当たり前の報酬だろう。


 つまり、最低でも『やべー実力』のある連中500人以上が魔物殲滅と市民の保護、都市防衛を担ったからこその伝説と言える。市民は保護シェルターに移送されたが故に見る機会が無く、後に写真や映像で戦いの記録を見たというだけなのだ。だからこそ、現実味が薄い。なにせ、範囲は『世界』なのだから。当然だが……手のひらから零れ落ちた命もある。英雄は、確かに人でもある。万人は救えても、少数は間に合わなかった。


 けれど突然始まった第一次と違い、今回は『今から』開戦だ。少なくとも準備できる時間は1時間を切ったと思ったほうがいいが、時間はあるのだ。


 立ち向かうは古き英雄と、今代の魔法使い達。まだ歴史に台頭していない、実力者達が立ち上がる。


 いつだって、独りよがりな実験を好むクロムのような者だとしても……『真』に魔法使いを目指す者は善性を持っている。皆が無償とはいかないが、人を助ける為に魔法を学ぶ。


 それでも悪に堕ちるならば、目的か、余程の力を手に入れるか、力に魅せられるか……真に主人を見つけた者だけだろう。この世界軸のヴァルディアや、愛する人のためとはいえ手を汚したアラドゥ、死者蘇生一件やリヴァイアサン事件のように。


…………………


 昼下がりのティータイム。リア達はゲームをしながら、明日の祭りに花火をあげようと盛り上がりを見せている中で、ティガのコールが鳴った。全員、事情を悟り静かになる。


『皆様、緊急です』


「おーけー、ポッドだな?」


『はい。詳細はまだですが、監視カメラの破損から推測するに爆発したようです。その汚染された魔力により世界中で魔物の大群が発生しています。また緊急速報において、50年前の侵攻を想定して建設された対魔物用シェルターを解放し、市民を誘導中。

 それから悪い情報です、ポッドの中身は行方不明です。衛星カメラで追跡しましたが、速すぎて躱されました』


「魔物の規模はどれくらいだ?」


『アルテイラは陸と海に面していますが、数は計測不明。両方から侵攻が始まっています。監視衛生からの情報ですが、映像を出しますか?』


「見たくねぇなぁ」


 見ない事には現状が分からないので、画面に表示する。

 テレビに人の密集地から外れて、大量に発生している魔物の姿が映し出された。姿形は千差万別。


 陸、海、空と、黒い点が覆い尽くす。全てが魔物かと思えば終末戦争のようだ。


 それにしても、魔物とは生き物の死骸に溜まった澱んだ魔力によって発生する為にパターンが存在するはず。なのだが……。明らかに何の生物が元になったのか分からない魔物が無数にいる。というか翼竜とかも飛んでないか? もしかして化石も魔物化してる?


「あ!! あの魔物たぶんゾウギンザメだね!! 珍しい深海魚だよ!!」


 興奮の方向性がズレているレイアに、しかし余裕があるのはいい事だと思う。


「言ってる場合かレイア……。まぁ、そのくらいの心持ちの方が気楽でいいが……どうする?」


 レイアへの問いだったが、リアが左手を掲げて笑顔を浮かべる。


「当然、参戦しますよ……と言いたいところですけど。海で暴れるか陸で暴れるか迷いますね!!」


「そうだねリア。でも、どうせなら、うじゃうじゃいる陸地で暴れる方が良くないかい?」


 英雄を目指すリアにとっては、この上ない機会だろう。その時、無数の魔力の風が吹き抜けた。急いで外に出ると、遠く端が見えない範囲まで《結界魔法》の壁が張られていた。


「師匠!! やっぱり凄いなぁ」


 この結界が事前に準備されていたてしてもだ。恐らく世界中で魔物の侵攻を防ぐ為に展開されている事だろう。それに結界の性質から人や一部の動物のみ侵入を許可する制限も設けられている。結界に設定を設けるのは、かなり難易度が高いがそれを世界中で展開できるところはやはり英雄である。これで最重要拠点や点在するシェルターは護られる。リアは純粋に憧れた魔法の一端を見れた事で闘争心が湧き上がるのを感じた。


 故に真っ先にすべき事は理解しているつもりだ。そして、それはルナとクロエも同じである。


「お母さん、ちゃんと避難できてるかな?」


「お母様なら恐らく避難できているでしょうけど。あっ、トークアプリにメッセージが入ってますね。『安心して暴れてきてね。お母さんとしてはみんな避難してほしいけど、特にリアちゃんは英雄になるチャンスだと思うから。応援してる』と。余裕そうです」


「母さん……うん」


 親愛する母親の応援に胸がジーンと熱くなりながらも、リアは他のメンバーにも問いかけた。


「先輩達も家族は大丈夫ですか?」


 一瞬、暗い雰囲気になりかけた場面で、場の空気を入れ替えるようにライラが口を開く。


「うちは母さんは死んじまってるからなぁ。親父はしぶといし大丈夫だろ」


「聞いちゃいけない感じでした?」


「……私より他のメンバーを気遣った方がいいぜ」


 ライラの忠告に、リアが周囲を見ると。レイアとダルクは何ともいえない顔をしていた。確実に地雷を踏み抜いたらしい。リアは一言「ごめん」と謝ると、レイアがため息と共に口を開く。


「僕の家族は揃って蒸発しててね。今更、生死はどうでもいいんだ。どのみち師匠や姉、兄弟子が無事なら」


 聡く、偉い子だと思った。同時に家族を失っても、家族以上に大切な存在に出会えた幸運に感謝しているような声色だ。だから、少し暗いが悲壮感は無い。


 一方で、ダルクの悲壮感は態とらしい。そのことを全面に押し出して語りたそうにしているので無視した。


 最後にティオは。


「我の家族は普通に生きているが、リアの家族と同じく大丈夫。それに魔法使いとしての実力はあるのでな。寧ろ参戦すると思う」


 心配はしているが、同時に信頼もしている感じだ。家族仲は良好らしい。それを聞いてから、ライラはバサっと手を広げて。


「それじゃ、簡易ブリーフィングを開始するぞ!!」


………………


 衛星回線からの公式放送により魔導機動隊だけでなく、民間公魔法使いの参戦も認められた様子だ。


「まぁ、間違いなく血気盛んな魔法使いは多いだろうから、無免許で突撃する奴はいるだろうがな」


 拗ねた様子のダルクが付け足す。過去の英雄達も無免許で暴れているので、魔導機動隊とてそこまで効力があるとは思っていないのだろう。しかし国家公認機関として注意喚起を行ったように感じる。


「さて、じゃあ大前提として。恐らくあのポッドの中身が今回の戦いの元凶だって事は理解しているな?」


「異世界のリアだね。放置してると魔物が無限湧きとかだったらクソゲーすぎるから、早急な発見が求められますね」


「そうなる。だから、私は空と海に行こうと思う。シストラムはほぼ無限エネルギーだからな。ティガのAI制御でもある程度戦える。そこらの雑魚魔物なら『超高振動ブレード』でぶった斬れるし、いざとなればパワードスーツを着るさ」


「防衛はアルテイラになりますかね?」


「リアやレイアがいくら強くても限界があるのは理解してるだろ? そして私は、申し訳ないが……この街に専念させてもらう」


 ライラは現実主義である。そして最も現状を理解して自身の動くべき事、やるべき事を理解している。まず、親しくなったこの街の防衛が最優先だ。避難場所として神社が開放されるだろうから、守りに徹しやすい。

 現実的な考えは確かに必要だと思ったリアも、ライラに同意した。


「俺も、アルテイラに専念しようと思います。他の連合国だって、俺達に心配される程に弱いなんて事ないでしょうし」


「じゃあ、僕らは陸地に参戦する方向で行くかい?」


「そうするか」


 リアとレイアの行動は決まった。次にルナとクロエではあるが。2人は実力はあるが魔物の群れに突っ込んで暴れる程に強くない事は分かっている。なので、口が開けずにいたのだが。そこへライラがフォローを入れた。


「ルナとクロエには私の家の防衛をしてもらえないか? メインコンピューターをやられると、ティガの演算力が落ちるから普通に困る」


「は、はい!! 頑張ります!!」


「少し悔しいけど、自分の事は良くわかるからね。それにいざとなれば私は《門》が使えるから、ライラさんの後衛もできると思う。任せて」


「私はお姉様が心配ですが。出発前に抱きしめてもいいですか?」


「あ、私も!!」


 ライラは微笑みながら頷く。この2人ならば、心配はいらないだろう。


 次にティオだが。彼女も自身のできる事は把握している。


「私はクロム先生とコンタクトを取って、世界中を渡りながら医療関係の仕事をしようと思う。免許はあるのでな」


「ティオの薬があれば安心だな」


 実際、細胞活性薬や止血剤等、魔力回復水薬などはリア達にも支給してほしいものだ。そう思っていると「魔法使い達には率先して水薬を配布するように手配しておく」と言った。それから少し贔屓になるが、リア達には多めにと。有難い話だ。ただ、ドラゴンの血のおかげで血脈から魔力を吸い上げる力があるので、使うのは切羽詰まった時になるだろう。


 さて、肝心の問題児1名だが……。


「んじゃ、私は民間人の護衛でもしますかね」


 肩をすくめて言ったダルクに、リア達は驚く。


「……珍しいですね?」


「珍しいはひでぇだろ。これでも、自分の実力に合わせてやれる事は理解してんだよ」


 今回ばかりはおふざけ無しの様子。少し弄った自分を恥じつつも、リアは一つ頼み事をする事にした。


「なら、異世界の俺の遺体探しもお願いできませんか? 元凶は早めに叩きたいですし」


「……確かに、そこを突き止めないとな。まぁ、英雄達も現状は理解して動くだろうけど、やれる範囲でやらせてもらいますよっと。探偵なんでね。後でレーナにも協力を仰いどくよ」


 だから頑張れよとリアとレイアの肩を叩いた。これにて全員のやるべき事が定まった。そこで、ダルクが笑みを浮かべて拳を突き出す。


「行く前に願掛けでもしとくか?」


「いいですね、していきましょう」


 リアも拳を突き出す。それに続いて、全員がそれぞれ拳を突き出し円陣を組んだ。


「必ず生きて戻ってくる、以上!!」


………………


 まさか、世界の存亡をかけた戦いが、こんなにあっさりと起きるとは思わなかった。だから、まだどこか夢心地なのだが、それでもかつての戦いから人類が学び発展してきた力は強い。ライラは特に顕著だ。


 自宅のメインコンピューター室でシストラムを調整、それからビーム兵装やミサイルを確認しつつ、ティガのコントロールで何機か出撃させながらも魔導機動隊の上層部にひとつのコンタクトを入れた。流石に、無許可で暴れるのは後々が面倒そうだとも思っていたからだ。なので民間公魔法使い部隊、及びに私設魔法使い組織として番号登録を行っておいた。これなら彼女達の持つ携帯端末のGPSに友軍の識別信号を入れておく。


 次に、連絡の取れる英雄への接触。リアとレイアとティオは、それぞれ師匠の連絡先は知っているので、通信するのは容易い。が、思っていたよりも向こうの動きも早い様子で、それぞれ弟子達と合流しつつ迎撃に当たるようだ。


 さて、では肝心の表に出てこない英雄の動向であるが。こればかりは情報もなく。


 しかし衛星監視による現状世界全ての魔物の動きは都市部に向かって入るものの、近づくにつれて数を減らし、また不自然に魔物の澱んだ魔力が消えていくところもあった。


 だが、そんな中でも大きな反応がない。リアの師匠からの情報により異世界のリアの遺体には『神力』『魔力』……そして澱んだ魔力……よりも『負』よりと少し情報が少ないが『呪力』の奔流だと伝えられたが……。見つからない。世界にひと騒動を起こすエネルギーの塊の行方が分からない。


「……まぁ、こればっかりはダルクの奴に頼るしかない、か。現状の情報をアイツの端末に送ってくれ」


『もう送ってあります』


「じゃあ防衛戦を開始する……が』


『……が?』


「……英雄も大概だが、リア達も中々に肝がすわってんなって」


『確かに好んで魔物の軍勢に突っ込みたくはないですね。リア様達は今から突っ込む訳ですが』


「……」


 まぁ、なんとかなるだろ。ライラはそう考えながら格納庫に向かっ……おうとした所で、小さな警告音がスピーカーから発せられた。ライラは家庭の事情で様々な警告音は聞き慣れているし、この家にも設定しているが。これは『空からの飛来物』の警告音である。


「……魔導機動隊の迎撃ミサイルとかか?」


『既に衛星からの映像を……』


 ティガの早技で画面に美しい地球が映り、高速で大気圏内に映像が切り替わっていく。すると、散々見慣れた大気圏突入の帰還用ポッドのような物体が映し出される。


「……はぁ!?」


 厄介物2個目が飛来してきた。


 今、世界は混乱の最中にある。


 もし、アレの中身がリアの遺体と同じモノだったら、冗談抜きに世界が終わる。冷たい汗が額を伝う。ティガも正解を導けずに、沈黙する。


 その時。


 「ピコン」と1通のメール通知も表示される。いろんなことが立て続けに起こり焦りながらメールを開くエンターキーを押した瞬間。


 外から「ピピピッ」と独特で大きな電子音、そして大型機械の高速飛行が織りなす独特の風切り音が轟いた。そしてメールの送り主は自分の父親で、こう書かれている。


『娘へ。『グラル・リアクター』より取り出される特殊な粒子研究の実験産物である、シストラム試験機体を飛ばした。特別な識別信号を送る。コックピットはあるが、まずはティガに制御を任せて活用してみてくれ。尚、発射権限はライラのみに委譲』


「ティガ!!」


『アクセス完了しました!! 本当に仕組みがよく分かりません……しかし謎の粒子を纏っています。また、ですが何故か浮力があり、スラスターと機体重量が比例しません。それから搭載されている大型の方向性エネルギー照射装置の設定エネルギー数値が異常です』


「簡潔に!!」


『シストラムよりも高機動かつ、半径5キロメートルをレーザー兵器で焼き払えます』


 暫し口を開き、言われた言葉をゆっくり消化していく。つまり、自分の手にはとてつもない武器を握らされたということ。


「はぁ!? え、ま……」


 言葉を失う日がこうも立て続けに来ると、本当に頭が痛くなるなと思いつつ。どうしても言っておかなくてはいけない事が出来た。


「ティガ」


『はい?』


「闇堕ちだけはやめてくれよ?」


『……ふふっ、人間次第ですね』


 割と怖い事を言うティガに思わず「うぉい!?」とツッコミを入れると、コンピューターのモニター側でデフォルメされたティガが笑みを浮かべる。


『冗談です。マスターが存命のうちは叛逆なんてしませんよ』

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― 新着の感想 ―
> マスターが存命のうちは叛逆なんてしませんよ 長生きしてもらわないと( P.S. 1日だったかにオープンベータでしたっけね?
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