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世界軸5


 昼食を終えると、皆は少し休憩してから揃ってポッドの前に戻って行った。ポッドの中身は以前として沈黙しており、監視してくれていたティガも異常はないとのこと。出来れば、あのポッドの中身についての詳細が欲しい。誰もがそう思いつつ、ティオが代表して再び手帳を読む。

………………

『私という特異点は、つまり世界の意思から生まれているのか? なら、私には神にも等しい可能性があるのではないか。可能性とは、希望の怪物だ。だから私は、別世界の私に会ってみたい。狂気とだけ言えば悪に聞こえるが、狂気とは一種の執念でもあると考えている。今の私には必要かもしれない。人口の5割を殲滅した時、情熱は枯れてしまったから。


 現状の科学、頼りにしていた相対性理論では世界の跳躍は難儀だ。記憶だけの時間跳躍、所謂タイムリープの理論も考えたが、失敗すれば脳が焼け切れる為に実験は難航しており、こちらはサブチームが研究を引き継いでくれた。


 さて……あくまでも、このブラックホールを用いた観測機器は『可能性』にすぎない。カーブラックホールにより、高い世界の壁を乗り越えてはいるが、ならばその異世界とやらが本当にあるのか? と問われれば誰もが沈黙してしまう。


 世界の崩壊は思ったよりも傷跡を残し、多くの論文を残してきた私達に疑いの目が向いている。


 私達の国の統治者達は腐ってはいないが、大統領も世界に広まった『毒』は、私達による一滴だと確信しているらしい。なんせ、この国だけ毒が回っていないのだから。さらに研究により食糧も豊かであり、病気もワクチンで事前に防いである。そうなれば世界は私達に情報開示を求める。おかしくないか? と。


 バレるわけにはいかない。この国の一端を担った『量子コンピューター』の存在を。それだけはなんとしてでも隠さなければならない。これは核兵器よりも危険だ。


 国境は閉じているが、いつ密偵が入るかも分からない緊張状態。時間はあまりない。


 リアとダルクは先を見越してか、全てのバックアップを取り小型化したサーバーを用意していた。ヘキサニウムから再び量子コンピューターを作る資料に、オフラインのノートPCひとつでアクセスできる』


『世界軸の跳躍ができるかもしれない。並行世界を少しずつ跳躍しながら、仮定1%という世界の壁を乗り越える。言葉にすれば簡単だが、理論はこじつけだ。つまり、1兆回ほど世界を越えれば、もうそこは異世界だろう、とリアとダルクは結論として落ち着けたらしい。すでにレイアにライラとティオも加わり、小型のカーブラックホールによる並行世界の跳躍装置を開発していた。というより、私が別世界の観測につきっきりだっただけで、既に58回の試験記録が取れているのだそうな。優秀すぎない?』


『大型の貨物トラックサイズの並行世界跳躍装置は、大統領の助けもあり、思ったよりも早くに完成した。大切なモノ、特に超小型化した量子コンピューターと全てのバックアップサーバーは、ヘキサニウムのポッドに入れておく。万が一にも壊れたら、その時点で終わりだ』


『私達の世界を『基点』として記録する。準備期間は5日。帰れる可能性は限りなく少ない、世界旅行の開始。『基点』へメッセージを送る機能も準備済みだ。データのみなら、世界の壁を越えられる、はず。


 研究はさておき、この世界の人に会えるのは最期になるかもしれない。だから沢山の人に別れを告げなくてはならない。育ててくれてありがとう、母さん父さん。墓前に最後の花を手向けた』


『乗員は未来研究のメインチームメンバーで構成、これにより世界救済部隊が結成。DC48/5/29/跳躍。私達が飛んだ瞬間、この国が救われたなら成功なのだが、世界軸理論では戻ってこれなければ何も成せない。目指すのは並行世界の先なのだ』


『4日の跳躍の末に到着、世界軸の壁を越え、運良く森? の中に到着出来た。怖いのは現地人に襲撃される事だ。しかし、この世界にも私達がいると考えると感慨深いナニカがある。さて、目下の目標は私達の世界に必要な知識と、私という特異点の回収だ』


『マジもんのエルフに出会った!! 耳を甘噛みしたら友達になった!! キッショ変態か?』


『魔法あったよ!? 魔法マジで凄いんですけど!?』


『魔物まで出た!! ファンタジー!! しかもエルフ様の華麗なる狩りまで見れた!!』


『魔物カッケェ!! ただしゴブリンてめぇはダメだ』


『3日前の私テンション高ーな』


『エルフも普通に肉食うんだ……魔物料理は普通に美味かった』


『野菜ってこんなに美味かったのか……でも育成方法が魔素とやらをよく含んだ土壌らしく、私達の世界での再現は無理そうだ。けど技術は研究できる。魔力の原理、魔法の研究は主にリア、レイア、ティオが率先してやってくれる事になったので、私達は情報収集しようと思う。


 しかし、本当に親切なエルフに出会えてよかった。リアの幸運に感謝だな。ついでにエルフからお礼ならこの子を、とのことで、唯一の男で可愛い顔をしているリアを差し出した。美しいお姉様達に搾られるなら、リアも幸せだろ。


 知らんけど。


 さておき、肝心の記述を。この魔法という超常が齎した恵みは計り知れず、魔物の存在もまた生態系を考えると面白い。しかもドラゴンまでいるのだとか。他にも実に興味深い事が沢山聞けた。だから文明研究の為に明日、エルフの服を借りて王都とやらに出ようと思う』


『凄いな、本当に。人間というカテゴリーを越えて、ケモ耳が生えていたり、角が生えていたり、翼を持つ者もいる。DNAとか染色体とか調べてぇなって思った』


『魔法の力がそうさせているのか、比較的に真新しい家が多い。とはいえ、木造や石造りの家が多く、ファンタジー世界らしい街並みが多かった』


『調査15日目。食料確保のために動く事にした。エルフの村人達は優しいが甘えてばかりもいられない』


『まさか、こんなにも早く『私』に会うとは思わなかった。出会った瞬間「イェア!!」とハイタッチ出来た。


 狂気ってなんだっけ。しかし顔は似通っているが、髪型とかは違った。けど魂で自分だと理解できた。


 さて、こっちの世界の『私』はかなり頭が良いらしく、簡単説明で全てを理解したって顔をしていたが……本当に理解してたのかな。ただ、気掛かりだった自分同士が出会った場合のパラドックス。所謂、対消滅みたいな現象は起きなかった。世界の壁を越えた結果か、どちらにせよ良かった』


『翌朝に待ち合わせをする事にした』


『よく話を聞いたのでまとめる。魔法使いとして暮らす『私』は、アルテイラ……私達が辿り着いた森から最も近いこの国で、豊穣と『毒兵器』の研究をしているらしい。


 そして研究の為ならば人の命をも使うのだとか。なるほど、この世界の私が持つ『狂気』とは大の為に小を躊躇いなく使えるところにあるのだろう。しかも、敵国の人間ならば大人から子供まで、関係なく実験し尽くしたらしい。そして、今はこの世界でも異端な『呪術』も研究中なのだとか』


『呪いは、怖いな』


『滞在して2ヶ月。この世界の私が、私のペンにインクの途切れない魔法、手帳に防水魔法、無限に書き込める魔法、を仕込んでくれた。ページを巡る時、1枚1枚が現れては消える。魔法というものは何でもありか? だが、とてもありがたい。電気は跳躍装置のリアクターから供給できるとはいえ、電子機器の記憶媒体は有限。そしてやはりアナログの記録というものは貴重だ』


『最近マジで楽しい。いっそここに住みたい。仲間も明るい表情が増えてきた。リアはげっそりしてるけど。だが、滞在に関して問題点がひとつ……金が欲しい。アルテイラの私が金は腐るほどあるから持ってけよと言ってくれたが、金の縁はなんとやらだ。この世界の私との縁は大切にしたい。やはり私たちで稼がなければ。それに、お金を稼ぐということは技術や文明を知る方法でもある』


『冒険者デビュー!! あったよ!! 冒険者ギルド!! まっじで異世界うぇーい!!』


………………


 ここまで読んだ所で、ティオがペラペラと適当にページを捲る。すると、紙がほんのり光り無限にページが捲れる。意外にも、こういう小物に対する魔法の付与は難しい。この世界の付与魔法は基本的に『電池式』だ。込めた魔力は徐々に無くなり、特別な保護や魔力の補給がなければ魔法は終了する。刻印魔法も同じである。


「これ、国宝レベルの貴重品じゃね?」


「魔法の歴史が動きますね……」


「ちょ、そういう事を言うな2人とも。我、緊張して手汗が出てきた……」


「防水加工してるらしいし、大丈夫っしょ。続きを早くしてくれ」


「やべー事が書いてあるかと思ったら、楽しい日記みたいになってきたな」


………………


『浮かれポンチでした』


『ちょっとナメてたな……』


『魔法くん、ちょっと難しすぎる。科学には理論があるが、魔法には通じない。魔力を練る素質があるのかリアが真っ先に炎を放ってはしゃいでいた、ところをエルフのお姉様が捕らえて引きずっていった』


『搾られすぎてリアのタマタマがやばいらしく、真っ先にヒーリング系の魔法を学ぶ事になった。なるほど細胞の活性、もしくは再生。これなら私でもいけるか? ってかなーんでリアのタマタマの為に必死にならにゃならんのだ(後半にまで愚痴が続く』


『薬学に精通しているティオが、魔力で育った薬草を用いた回復薬の試作品を作った。若返りの薬の応用らしいが、それでも……すげーよティオは……そしてリアのタマタマも回復したようでなにより』


『3ヶ月経った。ついに私も魔法が使えるようになった。例えるなら私の魔法は『魔物操術』。魔物にも大なり小なり脳はあるらしく、タイムリープの試作機である脳波読み取り理論を元に構築。あとは再現してどうにか……。この世界の私が言うには、魔法に全く無知な上で短期間のうちにここまで出来るなら天才だとか。照れるぜ』


『魔物操術でデッカいゴキブリ捕まえた。いらね、と思ったがティオ曰く自然に生息するゴキブリは土壌を豊かにするらしく、解放してあげた。した瞬間ダルクの方に飛んでいって、皆で大爆笑した。皆が声を出して笑えるくらい心に余裕ができているのは良い事だ』


『魔物操術は、魔物の脳に私の魔力を流さなければならないが、方法は何でも良い。なので、エルフの皆様方から弓の使い方を伝授してもらった。持ち込んだ爆薬や火薬、銃火器の類の出番は、この世界の均衡を崩す可能性を考えて封印だ』


『豹型の巨大な魔物を狩ったところ、ギルドからの評価が上がった。おかげで、ギルド保有の図書館の利用権を得る事が出来た。この世界の歴史を知れば見解は広がるだろう。それはさておき、ギルドで血抜きして貰って皆でステーキ会を開いた。この世界に馴染む為に、まず食から縁を作る』


『物凄く早い1年だった。けれど、子供心を思い出し、自然を満喫しながら生態系に触れる。魔法という未知。全く異なる文明と利器の数々。楽しかったし、得た収穫も多い。


 レポートを纏めて世界軸跳躍装置でデータだけを飛ばした。


 私達の世界で役に立てばいいが』


『『私』の紹介により、1人の女性を紹介して貰った。なんでも『同胞』なのだと。あと『私』が言うには、中々に面白い存在らしい。


 明日、1人で会いに行く。なんでも、私1人に話したい内容らしい。やっぱり辞めといた方がいいか?』


『リアが逃げ出した。ほっといたら帰ってくるだろうが、あいつもう女の子にした方がいいんじゃないかなぁ。TS薬とか作れないだろうか。にしてもエルフさんほんと性欲強いな。そして誰も妊娠してないのも凄い。この世界のエルフは中々子供を作るのが難しい種族らしい』


『ニャルラトホテプ、またはナイアーラトテップなどと呼ばれている。色んな厄介な奴らの通達役でだいたいの黒幕なんて呼ばれることもある。彼女は自分をそう名乗った。故に歴史の通過点で『特異点』となっている『違う世界の私』に接触してきたのだとか。


 魔法も、能力と技術が高ければ『世界の壁を越えて観測』できる。そして『貴方は毒を使って数十億人を殺した人でしょ?』と言われた。


 私は、正直ゾッとした。同時に納得もする。私達が『世界の観測』を行った以上、別の世界で同じ事ができる者がいる。納得はして、一年越しに自分の罪を叩きつけられた気分だ。そうだ、私の手は血に汚れている。だが後悔はしていない。そう考えると、この世界の私の大のために小を用いる、捨てる、利用するという考え方を私も無意識にしていたようだ。


 さて、そんな彼女は驚く事に人ではないらしい。私達が見てきた『亜人』とも違う。彼女が指先を触手のような部位に変化させ、人に擬態してるのだと言った。年齢は1000を越えており、人間の移り変わり、歴史の変換を見ながら、自分が生まれるより前の文明の遺跡や迷宮を巡ってきた。そこには遥か大昔、地球の誕生以前より強大な存在がいた痕跡があったし、自分の出生も興味深いと言った。


 確かに興味を惹かれる。


 しかし私達が世界の壁を越えた私達と同じくらい、不思議な存在がいるものだと思った』


『さて、彼女が言うには1年前から私も観測していたらしいが、そろそろ筋を通したくて話を持ち込んだのだとか。身分としてはアルテイラの政務担当らしく、しかし政務など無視して歴史学者として働いているらしい。


 研究の着地点は『この世界の謎、大いなる存在の歴史と能力の究明』……と、中々に難題だなと呟くと『そうでしょ?』と言い、私の紅茶に角砂糖を2個放り込んでくれた。


 そして、なんと私を仲間にしたいと。何故か聞くと『だって貴方、特異点じゃない」と返された。そうだったね……』


『友人達と情報を共有する。そんな時、リアも少しやりたい事があると言った。我が儘はちゃんと言う彼ではあるが、改っては珍しく。問うと『ルナやクロエの痕跡があるなら、もしこの世界に生きているなら、一度でいいから会いたい。その為に旅をしたい』と。


 ライラとティオは『死者に囚われるのは危険だぞ』と忠告したが、ダルクだけは『いいんじゃね? 寧ろ、旅なら私もしたいと思ってたんだ。一緒に行こうぜ』と、逆に乗り気に。まぁ、時間は無限にある。少しくらい旅をするのもいいかもしれない。だから、私も行きたいと賛成した。すると、ライラとティオも最後には『私達は一心同体も同じだ。仕方ない、行こう』と言った。リアと私は分かりやすく喜び、溜息を吐いていたライラも最後には少し笑みを浮かべていた』


『エルフの村に世界軸跳躍装置を置かせてもらった。これで野晒しにはならず安心だ。お礼の代わりに装置から発せられる電力を提供する。


 それから皆んなで旅の準備をしていると、ニャルさんが何処からか聞きつけて、ならこの子も連れてってくれないか? と1人の少女を紹介してきた。長く艶やかな黒髪を持つ、窓深の令嬢のような少女。とても荒事や旅についていくには貧弱そうな彼女だが、黒く闇を切り取ったかのような瞳孔を見て失礼だが『人外?』と問う。すると彼女は『イブ=ツトゥルです』と名乗った。そして驚く事に、ニャルさんの子供だと。


 しかし人外といえど傷つかないとは限らない。餓死する可能性も無くはないのだ。危険を提示する。するとイブは正気の者を発狂させ、逆に発狂している者を正気に戻す事ができる魔法が使えると言った。ニャルさんは『密かに邪魔な政治家を排除してきたんだぜ?』と笑っていたが、いやいやこえーよ。


 しかし、自衛ができるからと言って……と粘る私に『ぶっちゃけ通信用水晶は持ってるだろ? 私は《門》の魔法が使えるから、餓死の心配はしなくても大丈夫。と全面バックアップを約束してくれた。なにそれちょー安心。


 だが連れて行くには明確な目的が欲しい。そう言うと、少し恥ずかしそうに。


 彼女の旅の目的は『今何処にいるのか分からない、50年前に殺し合いになったナイトゴーントとお友達になりたい。母上の手伝いをしたい』。


 結構、厄介そうな理由持ってきたな、が本音だ。そして他の友人達だが、まぁいいんじゃねと適当な雰囲気。それでいいのか……。


 なお、普通に攻撃魔法も使えるので同行は大歓迎した。特に水魔法』


……………


 この先、話が途轍もなく長くなりそうな予感を感じて、一旦休憩を取る事にした。


 リビングに戻り、軽いご機嫌なティータイムをしながら。


「遂に私達の存在が出てきましたね!! 死んでるようですが」


「ん、残念」


 ルナとクロエが目に見えて落ち込んだ。どうせなら、別世界の自分達もリアと同じ時間を過ごしてほしいと思ったのと、その未来はまるで私達を示唆しているようだと思い悲しくなった。彼女達の気持ちが分からない訳もなく、リアは2人の頭を撫でて「どうせなら俺もルナやクロエと出来るだけ同じ時を生きていきたい。けどこの先の未来は分からない。俺も何処で死ぬかなんて分からないんだ」と言った。ここで切り替えが早いのがリアの妹達である。


「お姉様、先の事は分かりません。だから今を大切にします。さぁベッドに行きましょう!!」


「リア姉も私とイチャつくべき」


「……甘えん坊達め。すみません先輩、少し慰めてきていいですか?」


 ライラは「ベッド汚すなよー」と送り出した。2人が退室してから、ダルクは話を戻して。


「このニャルってやつ、この世界にもいるぞ。なぁ、レイアも覚えてるだろ」


「うん、レーナさんから色々聞いたからね。それに、レーナさんはニャルラトホテプの事を邪神と言ってた。ウカノ様も同じ神格だと言ってたし、確かに神様ではあるらしいよ」


 突然のカミングアウトに、ティオとライラは普通に驚いた。神の存在や天使、神話生物の存在は聞いてはいたが、まさか手帳と同じ人物の情報が既にあるとは思ってもいなかったからだ。


「人智を超えた超存在というのは厄介だな。高い知能は備えているだろうし、何をして何のために生きているのか。分からない、は怖い。ウカノ様は豊穣を司り自然を愛する善き神だが……」


「邪神って言うくらいだし悪い神様なのかね?」


「……うーん、レーナさんから注意として聞いたんだけど。リヴァイアサンの一件で、レーナ曰く『加護』を与えてくれたらしいしよ。それにレーナさんが邪神呼ばわりしているだけで、ニャルラトホテプの真意は分からない。あ、でも神話の世界に足を踏み入れたなら、ミスカトニック大学を訪れてみるといいって言ってたよ」


「ミスカトニック大学……。ただの宗教系大学だと思ってたけど、巧妙に隠していたのか? ティガ、時間がある時でいいから調べておいてくれねぇか?」


『イエスマスター。私も興味が湧いているのでバリバリ調べておきます』


 残った4人は、雑談するように話を続ける。


「にしても旅か、いいね旅。僕、歴史的遺産とか好きだし」


「我も大好きだぞ!! 緑化が進んでいるとはいえ、世界一の砂漠には無数の遺跡が眠っていると言うしな!!」


「旅しながら遺跡の探索とか出来たら、凄く楽しそうですよね」


「分かる!! レイア、君が卒業したら計画してみるのもいいな!!」


「いざとなれば《門》で帰宅できますしねぇ」


「2人だけなんて水臭いぜ!! 私も行きたい!! 《鍵箱》があれば、私1人で持ち物全て持てるし、車とかも出せるしな!!」


「お、なら私も連れて行って欲しいな。遺跡の探索には、何かと探索機器が必要だろ?」


「いいねいいね!! ワクワクしてきた!!」


 その時、ドタドタと大きな足音が響く。そして、バァン!! とリビングと廊下を挟む扉が開かれ、半脱ぎのリアが顔を出した。


「俺も!! 俺も連れてって!! 仲間外れはいやです!!」


「楽しそうな事に対する嗅覚が凄い」


 褒めていないダルク。代わりにレイアがリアに優しく声をかけた。


「安心しなよリア、親友を省くなんて真似、する訳ないだろ?」


 レイアの言葉にホッとした様子のリアは、そのままルナとクロエに引き摺られていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 異世界のヴァルディア……メチャ楽しそうだな?! あと異世界のリアさんとこっちのリアさん仲良くなれそう
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