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勇者になれるか?1


 リアは皆を宮に連れ、ウカノに「部活の仲間で大切な友達です」と先輩達、そしてレイアを紹介する。その頃にはルナ達も起き出しており、何やら魔法の実験をしていたので置いておき。一目見て見目麗しい少女達を気に入ったウカノではあったが、流石に昨日の情事を会ったばかりの4人にする訳にはいかずに、友達になるだけに留まった。


 だが、ここはリアやレイアとは別の意味で天才達の先輩方である。さっそくライラが《情報の保管庫》を展開して、ウカノの夢に入り込む魔法具を解析、ティオは薬学から連なる神話関連の話を、ダルクは今まで出会った魔法具や呪具、封印された文献などを持ち出し《情報の保管庫》で整理。解析を行う。


 結果、複製は可能。


 思ってもみない朗報にウカノは飛び上がって子供のように喜びまくった。それもそうだ、友人は多い方が楽しい。ただ作るには時間を要するようで、ミヤノのデザインした魔道具と極力同じものを用いて特殊な魔術を施し、オリジナルの魔道具の《門》を介して……要はネットワークを構築と……とてもややこしい。複雑なので頭が痛くなったリアは聞かなかった事にし、それから後のことはライラとダルクに任し、ウカノと薬物学について会話を始めてしまったティオを置いて、昨日の情事メンバーの元にレイアと向かう。


「神様かぁ」


 レイアがしみじみと呟く。驚きというよりも納得したといった感じだ。レイアも神様とやらについては『死者蘇生』の一件で関わっているので半信半疑だったのが確信に変わったようだ。面倒な天使という存在も認知している。なので、意外と常識人でびっくりといった様子。


「良い神様でしょ? ウカノ様がいなかったらたぶん、今頃この街は無いしね」


「昨日の巫女服状態かい? あれは確かに神々しかったよ」


 ボソリと「それに可愛かった」と呟いたが、その声がリアに届く事はなかった。


…………………………


 ルナとクロエは巫女服状態の感覚を呼び覚ましたいのか虚空に向かって魔力を放っている。『聖属性』という、カテゴリーに分類しにくい属性の魔法を使えるようになれば、それだけでグレイダーツ校にて単位2つは貰える程の偉業だ。


 だが、成功は難しいのか2人してうんうん唸っている。


 その様子を縁側で茶を啜り眺めるミヤノ、レーナ、ギルグリア。やけに大人しいギルグリアだが、リアの姿を見ると湯呑みを置いて近づく。そして普通に抱きつき涙を流した。


「おー、よしよし。辛かったなギルグリア」


「リアに母性を感じる……」


 かなり精神的に疲弊している様子だ。まさかの母性まで感じてしまっている。幾分か背中をポンポンしたあと離すと、ギルグリアはいつものキリッとした表情に戻った。


「こほん、リアは大丈夫か?」


「俺も疲れたけど、まぁウカノ様は満足そうだしいいかなって」


「何の話だい?」


 首を傾げるレイアに本当の事を言うのは憚られたので、昨日色々あったんだよと暗に聞かないでくれと誤魔化した。親友の意図を汲んでかレイアはそれ以上追及しないでくれた。それから皆して縁側へと向かう傍ら、レイアはギルグリアの手を取り引き留める。


「なんだ童」


「少し、ドラゴンの君に聞きたい事があってね」


 レイアは指をパチンと鳴らすと虚空からコロンと高そうな立方体が手のひらに転がる。その立方体には無数の札が貼ってあり剥がすのに一苦労しそうな程の厳重な封印がなされていた。だが、レイアは普通の炎で札を焼き払うと中から黒檀の小箱が現れた。ギルグリアの鋭い嗅覚が、中の物体に対して嫌悪感を滲ませる。


「……何が入っている? この血の香りは」


「流石に鋭いね」


 小箱を開けると、濁った赤い液体の入った注射器が一本、丁寧に丁重に納められていた。


「赤龍の血と肉で作った、液体状の……まぁ師匠のと同じ儀式で作られた『賢者の石』だよ」


「……」


 レイアに言い返そうとして、ギルグリアは押し黙った。


「……昨日のリアを見て、漸く決心がついた。彼女の隣に立っていたいって」


 俯き顔に陰がかかる。表情が見えない。言葉が酷く軽く感じた。


「これから先、リアは出会いと別れを繰り返す。その時に、寄りかかれる存在でいたいんだよ」


「だが……」


「さて、その資格が僕にはあるのか? でしょ?」


 遠くを見る。縁側でこちらのやり取りを眺めながら首を傾げるリアの姿が目に映る。それから視線を逸らしダルクの方に向けると、まるで今までの会話を聞いていたかのように、サムズアップが返ってきた。


「ここには『降霊』の英雄がいる。ひとつ、ギルグリア……赤龍に認めてもらう為にも、模擬戦をしてくれないかい」


 レイアの要求は分かった。それに若干の疲れはあるが、そこはドラゴンらしく体力も魔力も既にマックスだ。今から戦う事に問題はない。だが、目の前の少女はまだ16歳。8月には17歳になるのだろうが、ギルグリアにとってまだ幼子も同然だった。この感覚はリアも変わらないが、彼女の事は1人の女として認めているので例外だ。


 だから、最近になって性格の柔らかくなったギルグリアは別に模擬戦くらいならしてもいいと考えていた。ただ、この少女は不安定だと感じる。年相応で、リアのような『強い覚悟』、ダルクのような『既に50年は人災を経験していそうな達観、価値観と知識』、そういった『特別』なピースが欠けている。確かに、グレイダーツの弟子で魔法使いとしては一級……そうグレイダーツは?


「……グレイダーツはなんと言っていた?」


「私の昔話を聞いてもなお、人間を辞めたいなら勝手にしろ……だってさ」


「……」


 なるほど、グレイダーツは『認めた』。上で、これを試練としたのだろう。

 ギルグリアはひったくるように注射器を手に取ると、握り潰して砕いた。


 液体が零れ落ちる握り拳を見たレイアは眉根を下げる。


「そうかい、僕には……」


「まて、勘違いするな。模擬戦は行う。そして、結果次第で我の血を分けよう。童……レイア・ヨハン・フェルク」


「!? 僕の名前……」


「強者を覚えるのはドラゴンの人生においての楽しみの一つだからな。グレイダーツのおまけ、だがお前の名は覚えている」


「おまけか……」


 目に対抗するような明るい意思が宿った。が、ギルグリアは言葉にする事なくただ、この小さな意思が火種になってくれる事を祈る。彼女の魔力量も技量もグレイダーツに追いついている。足りないのは経験と覚悟。だから、人を辞めるという事への憧憬をリアに押し付けるのは違う。共に歩みたいと言うのなら示してみせろ。


「来い、レイア。広大な海原の上ならば我の技は下に撃てぬ。そのハンデをもって示してみせろ」


「……分かった。君に示して見せる。僕の『力』を」


…………………


 レイアは分かっていた。自分に人を辞めるという覚悟も準備も、意思も感情も足りていない事など。ライラとティオに協力してもらった、数日の魔力を抜いては溜めてを繰り返す修行の中、師であるグレイダーツの文献を読み耽り、新たな魔法を構築しつつ、リアのような『圧倒的な力』を求めて考え抜いた。故に辿り着いた一つの戦闘スタイル。それを持って……リア達の隣に立つ。立って見せる。


 要はただの劣等感だ。人を辞める事は、強さの渇望の上にある段階に過ぎない。リアやダルクのように、力を。この世界に名を刻み、夢である《召喚魔法》を広める為の時間を。当然、女として若さも欲しいには欲しい。自分の容姿には無頓着だが、師を見て老いの無い身体への憧れは昔からあった。そんな程度だ。崇高な目的がある訳でも、リアのように仕方なかった理由もない。


 だが、欲しい。そんな自分にも、親友の隣に立ちたい。その為に研磨してきた、技を魔法を。そして『同じ時を歩みたい』。



 同じ時を……そうか。僕は──。



…………………


 もう一度俯き、そして次に顔を上げたレイアの顔を、瞳を見てギルグリアは驚いた。底知れないプレッシャーが肩にのしかかるように押し寄せる。


(何が火種だ。コイツ……一瞬で燃え上がったな)


 思わず笑みを浮かべる。挑戦者へ対する態度を改めた。手を抜こうと考えた自分を叱咤する。この魔法使いには、本気で相手をするべきだ。


 ──漸く理解したのだろう、友と歩みたい本心を。言い訳で飾らない、ただ子供のように無邪気な本音を。


「撤回しよう、ハンデなど必要ないな。全力で相手をする」


……………………


 皆して話をやめて、海の遠くを眺める。デイルは帰ってしまったので、一応リアは海岸沿いに結界を張る。眠る前に催しの増えたウカノは楽しそうに遠くを映す鏡を取り出すと操り2人を映した。


 この街の逞しい報道陣も何事かと動き出そうとするが、事前に聞かされた。これはレイアの人生の岐路だと。だから、無粋な事はしないように誰も通さない。あの1匹と1人で、誰の記録にも残らない決闘をすべきだと思った。


「お姉様、レイアさんの気持ち、私は分かりますよ」


「私は……長く生きるってことがまだよく分からない」


 横に座るルナが寂しそうな顔で言った。クロエは産まれて一年も経っていないせいか、素直に分からないと言った。だが、寂しいという気持ちは分かったようだ。


「私も、お姉様と同じ時を歩きたい。少し、レイアさんが羨ましいですね」


「まだ間に合うよルナ姉、私と一緒に……強くなろう。ドラゴンと戦えるくらい」


 リアは思わず2人を抱き寄せる。どこかジーンとした感覚に襲われて思わずといった感じだ。そんな3人に向かって……。


「ぶっちゃけ老化遅延薬や若返りの薬くらい作れるぞ?」


「マジで言ってます?」


「うむ、特許取ったしな」


 ティオの発言に悲壮感は霧散した。これを聞いたらレイアはどう思うのだろう。まぁ、どちらにせよ戦っていたか。そう思い鏡に視線を向ける。レイアは《戦乙女》の技術を応用して自身に翼を生やし飛んでいる。空中戦はイーブン。なので、あとは実力勝負だ。


 鏡には食い入るようにルナとクロエも視線を向けている。きっと2人も薬に頼る手段があるとしても……力は欲しいのだろう。意思は変わらず、故に2人の向上心は賞賛に値する。


 ダルクは寝っ転がって眺め、ライラは壁に背を預け見物に入る。ミヤノは若い命が散らないか不安な様子だ。


「さぁ、始まるぞ!!」


 楽しそうなウカノの言葉を皮切りに、両者は海の上で決闘の誓約を交えると。ギルグリアはドラゴン形態に変身し、レイアは印を結び構えた。

Q、なぜ1ヶ月も空きが?

A、プロットが消滅して、仕事行きたくなくて、あっあっあ

Q、なぜレイアを人外に?

A、ライバルキャラにしては影薄すぎて、今後のインフレについていけないかなって

Q、レイアVSギルグリア終わったら?

A、何も考えてません……

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― 新着の感想 ―
[良い点] リアさんの母性 [一言] ルナもクロエも人外化するならまた違う方向で不老を得そう 続きは気長に待ってます
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