表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/226

ウカノ様2


 ミヤノの管理するウカノの命を祀るために作られた宮は、それはもう荘厳だった。古風な作りに見せかけて、現代建築の技術をこれでもかと尽くされた外見は、複雑に絡み合うが確かに噛み合っている赤の柱と天井の梁、舐めらかで魔力により保護されている壁は……素材はなんだろうか? 漆喰……とは違うが、それに近い質感だ。


 そんな宮の外階段を数段登り、短い廊下を抜けると両開きの大きな障子扉が姿を表す。金細工で祈り言のような古風な文字が彫られた障子扉からは、神聖な『結界』に似た、ウカノと同じ魔力が漂っている。恐らく部外者除けの魔術が施されているのだろう。


 まさに、神様を祀る為の建造物といった印象だ。


 全員が重くのしかかるような荘厳な雰囲気に黙る中、ウカノだけがニコニコと歩みを進める。その様子は神様らしく、まるでリア達が付き人のようにも見える。見目麗しい神と乙女達、巫女服なのもポイントが高く、この場面を写真に収めればとてつもなく高い額で売れる事だろう。


 ウカノが障子扉を開き全員がくぐると、広い……いや広すぎだろうと言いたくなるような広間が姿を表す。最奥の中央にはハーディス先生の神社と同じように女神を模った銅像が恭しく鎮座しており、この街の人間のウカノ様への信仰がここに集っているのだと理解した。だが、ここが本体というわけでもなく。神様とは様々な特性を持つがいるが……ウカノは分類するならば『信仰』や『恐れ』により存在を保つ者。彼女の信仰は広く分社も多く世界中で知られている神様なので、仮にここを壊してもウカノが消えることはない。つまり逃げ場は無いし勝ち目もないという事だ。


「そう固くなるな、皆よ。私とて風情と情緒を大事にする。入って今すぐ脱げ、などと趣きの無い事は言わんよ。取り敢えず、皆並んで座りなさいな」


 ウカノが指パッチンをすると、中央に座布団が人数分並んで現れた。ウカノが銅像の前、皆が彼女に向かう形だ。皆がそれぞれ、目線を合わせて頷くと並んで座布団に正座する。ウカノは皆の前に座ると、パンっと手を叩く。


「神らしく清めの儀式でもしておくか!!」


 すると、皆の前に赤い盃が姿を表す。更に、とくとくと湧き上がるように透明な液体が注がれていく。ふわりと甘い香りが漂うが、同時にアルコールの匂いも感じられる。クロエは珍しそうに盃を持ち上げて液体の匂いを嗅ぐ。酒を見るのは初めてなので、やはり物珍しいのだろう。しかし……ここには未成年もいる。リアが「お酒ですか? でも俺やルナ、クロエは未成年でお酒はちょっと……」と進言する。


「この国では16歳から飲めるのでな。リアとルナは合法だよ。それにホムンクルスとして完成形のクロエには年齢は関係ないだろう」


「ウーラシールなら合法、と。まぁ……俺もお酒には興味無い訳じゃありませんし。んでも、クロエにはなぁ、教育上なぁ……」


「ん、リア姉、私飲んでみたい」


「でも……」


「神様からのお酒なんて滅多に飲めないだろうし……リア姉、これは良い人生経験になる」


「おぉ、クロエが俺にしっかりと自分の意思を。うん、なら今回だけだよ?」


 甘々な対応だが、ここは素直に酒には興味津々なリア。こうみえてチューハイにすら口をつけたことのないリアにとって、酒というのは初めてのもの。誰だって初めては興味深いものだ。クロエはこの世界で見聞きするもの全てが新鮮な為に、大人な飲み物というだけで興味は充分。

 ルナも「はぁ」とため息を吐き。


「神様からの贈り物を拒否するのも罰当たりですし」


「豊穣の神として、味は保証しよう。東方の島国により伝わる米を用いた酒だ。少々アルコールがキツイかもしれないが、情事の前の軽い酔いにはちょうど良いだろう」


「ほう、あの島の……」


 東方の酒と聞き、意外にもギルグリアも興味を示して溢さぬように右手で盃を持ち上げる。レーナは大人らしく両手で盃を持ち上げ、ミヤノも皆に合わせて盃を胸元まで持ち上げる。


 皆が盃を持ち上げたのを見ると、ウカノも盃を持ち上げて「乾杯ー!!」と言い、上品に飲み干していく。


 リアとルナは慣れないアルコール特有の風味と味、だが確かに感じる美味しい甘さにチビチビと飲み干していく。喉に通る度に胸がぽかぽかとして、心地よい。


 ギルグリアはゴクゴクと飲み干したが、最後に「美味いな……」と一言感想を溢した。長く生きてきたドラゴンにとっても、神からの酒というのは美味く感じるようだ。

 クロエも意外と美味しかったのかすぐに飲み干して「くはー、もう一杯ほしい」とご満悦。


 レーナは珍しい酒を味合うように舌で転がして。


 ミヤノは……この『神からの酒を飲む』という行為がどういう意味を持つのか理解しているので、ウカノに非難の目を向けならが飲み下した。ウカノはミヤノの視線にサムズアップする。


 それぞれが飲み終えて、皆揃えて盃を置いた。ところで。


「はーっはっはっは!! 皆美味かったか!?」


 高笑いしながら感想を問うウカノ。訝しげに思いながらも皆が頷く中で彼女は突如こんな話を始める。


「ところで皆、『よもつへぐい』という言葉を知っているか? 黄泉の国の物を食べると現世に戻れないという説から生まれた言葉だ」


 レーナは探偵としての勘と経験から即座に意味を理解し、本能が不味いと警鐘を鳴らし即座に立ち上がり脱兎の如く出口の障子扉に走りよる。


 だが、予想通り開かない。障子に拳をぶつけても紙であるはずなのに硬い。その様子を見て首を傾げるリア達とため息を吐くミヤノ。


 ウカノはレーナを感心しながら言葉をかける。


「レーナは経験豊富なようだな、若いなりに濃い時間を過ごしてきたか」


「はい、お褒めに預かり光栄です。して……なるほど、ここはウカノ様の領域。ウカノ様の世界。つまり《儀式:よもつへぐい》で完全に退路を断ちにきましたね?」


 魔法の世界において、儀式とは一定の過程を得れば発動するオカルト話として伝わっているが、本当に実在する事を一般人はほぼ知らない。だが、目の前にいるのは『神』。相手が探偵だろうがドラゴンだろうが、見目麗しい物達を逃す気はないようだ。今回の『よもつへぐい』の効果は、この宮内からの脱出不可能である。つまり、ウカノが許可するまで出られない。


「説明せずとも理解したようでなにより。して、そろそろ酒の効果が出始めた頃だろう」


 全員が、胸にぽかぽかとしたモノを感じ始めた。もう酔いが回ったのだろうか?

 「ふぅ」とリアが熱の籠った溜め息を吐き出す。頬が紅潮し、どこかふわりとした高揚感に満たされる。


 が、次の瞬間。


「ぐふっ!?」


 足元から抉り上げるような快楽が駆け抜けていきその場に崩れ落ちる。男の時とは大違いの暴力的な快楽に必死に酸素を取り込み頭を回転させながら周囲を見渡すと、ギルグリア以外は皆同じようにビクンビクンしている。


 ギルグリアは慌ててリアの元に駆け寄り、身体を起こす。しかし、その僅かな接触さえ甘い快感を生む。リアは蕩けた顔でギルグリアの瞳を見る。皆よりは余裕があるところを見るに、ドラゴンの血が酒に入れられた薬と対抗している事を証明していた。


「はぁ……リア……。ウカノ、貴様……聞いた事がある。龍の時代、神が宴に用いるとされる『媚薬』があると。なるほど、豊穣とはよく言ったものだ。この色情魔め……っく」


「ドラゴンであっても少しは効いているようだな。まぁ、酒に毒を仕込むのは古からの常套手段だよ」


「……皆を快楽漬けにしてどうするつもりだ?」


 魔力を激らせてウカノを見るギルグリアだったが、ウカノは唐突に「パンっ」と手を叩いた。瞬間、ギルグリアの魔力は霧散する。


「なっ!?」


「言っただろ、『よもつへぐい』にてこの空間は私の支配下にあると。何をするにしても自由!!」


 ウカノが指を鳴らすと、彼女の足元から金色にゆらめく蜃気楼のような触手が……ざっと50本は姿を現した。ゆらりとゆらめく触手は清潔感に満ちており不思議と不快感はない。そんな触手は、まずはレーナの元に5本ほど飛んでいき、彼女を拘束すると強引に引き寄せる。レーナは薄く目を開きながらも抵抗している。薬物に対する訓練が功を成したようで、レーナも余裕があったが触手を振り払おうとも、ふわふわとした頭と力の入らない手足では抵抗できない。


 ウカノがようやく動き出した所で、崩れ落ちはしなかったのと歳の功もありどうにか座った姿勢のまま耐えているミヤノが進言した。


「ウカノ様、壊さぬようにお願いしますね?」


「分かっておるよ。さて、大きなベッドを用意するとしよう。まずは巫女服を着たまま、全員と濃密なキスから始めるとするかな? あと着衣っくすというものをやってみたかったのだ。私に男根は無いが、無数の触手なら出せる」


 天井からドスンと音を立てて、キングサイズよりも更にでかいベッドが姿を現した。滑らかなシルクのカバーは、少女達の肌を情事の際に柔らかく保護するだろう。


 ウカノは浮かび上がるとベッドの中央に降り立つ。そして、全員を触手で拘束する。ギルグリアが若干の抵抗をするが無駄である。皆を引き寄せ、左右に寝かせる。


「ふははっ、いい、いいなハーレムは!! いつの時代も良い夢心地だ!!」


 左右に置いたリアとルナを抱き寄せると恍惚した表情で満足げに笑みを浮かべる。


 さて、ではまずリアにキスから始めよう。濃厚で濃密なやつを。そう思い、リアを見る。艶のある桃色の唇が色っぽく、上気した頬が扇情を燻らせた。


 神ですら思わずドキッとするイケメン美少女には似つかわしくない、たわわな胸を揉みしだきながら、唇を合わせようとした時である。「ブチィ!!」と拘束していた触手が千切れ飛ぶ音が背後からした。


「ん、なにぃ!? 私の触手を……!!」


「私のお姉様だァ!!……最初のキスは私のものだッ!!」


「こやつ、酔うと暴走するタイプか!!」


 ルナは立ち上がった。ウカノにやられてばかりでは癪だと。霧散させられる前に《身体強化》の魔法を瞬発的に発動しつつ触手を薙ぎ払う。せめて、愛しの姉の最初のキスくらいは自分が奪い取る。そんな気概を見せた彼女にギルグリアは笑うと、同じように「ふんっ」と触手を引きちぎった。此度は紳士的に、家族として……それから1人の人間としてリアを愛し続けてきた彼女に譲ろうと思った。そしてリアの純潔を最初に破るのは自分だ。確かに今の自分にも男根はないが、触手くらいなら出せる。


 一方でウネウネと触手に捕まり撫でられているレーナとミヤノ。レーナは興味深げに身体を預け、ミヤノは完全にリラックスしていたが、2人ともリアの人気に生暖かい目を向けた。


 その時、また「ぶちぃ!!」と触手の千切れる音が響く。クロエだ。彼女は立ち上がったルナよりも早く、リアの身体の上を這い寄るとウカノの顔を押し除けてリアの唇に貪りついた。脱力しているリアはクロエの舌を拒む事なく受け入れる。舌と舌が絡み合い、唾液がいやらしく音を立てる。


「あーっ!? クロエちゃんッッ!!」


「思わぬ伏兵が……」


「ぬぅ……私が主役だぞお前達……」


 「ぷはぁ!!」と唇を離したクロエは見た目に似合わず色っぽく頬を上気させつつ、勝ち誇った笑みを浮かべると同時に倒れ込んだ。荒く息を吐き快楽に悶える。もう体力は限界の様子だ。相当無茶をしたのだろう。それほどまでに……彼女の執念にウカノは思わず感心してしまったが。


「戯れはここまでよ!! なーに安心したまえ、ルナ。君とリアもしっかりドッキング(意味不)させてやるからな」


「せめてキスを!! お姉様と情熱的な唾液の交換をぉお!!」


「ダメだ、次は私だ」


「俺の意思は?」


 クロエにがっつり接吻されたリアは、呼吸と甘い快楽を落ち着かせながら自身の意思を提示する。だが、次の瞬間にベッドのシーツの白を埋め尽くすが如く、細い、太い、長い、短い、関係なく様々な仄かに黄金色に輝く触手がうねりながら登ってくる。触手は立ち上がったルナとギルグリアを拘束すると空中に浮かべる。


「くっ、さっきより強靭度が上がってる!?」


「ぐぬっ、人間形態とはいえドラゴンの我が脱せないだと!?」


 レーナとミヤノは巻き込まれないように黙って触手にうねうねされている。


「ふははっ、やはり前菜とメインにはこの中で最もイヤらしい身体のリアをいただく」


 触手で手足を拘束されたリアの顎をクイっと上げる。それぞれの目線がぶつかり合う。ぱっと見はイケメン女子なリアと美の化身で病弱そうにも見えるウカノの2人が見つめ合う様はとても絵になっている。そんな中、リアの口が開く。


「ルナごめんなぁ、後で幾らでもキスくらいするからさ……。さて、今回はウカノ様に大変助けられました」


「うむ?」


「はぁ……なので、ウカノ様」


 カッと目を見開くとリアは覚悟を決めた顔で、自分からウカノの唇に自身の唇を合わせた。驚くウカノを他所に、下手くそだが頑張って口の中に舌を入れ絡め合い唾液を交換する。ウカノはルナとギルグリアの悔しそうな声が遠くに感じ、なんと愛い行動を起こして頑張って奉仕するリアにときめいた。巫女服の下を触手が入っていき、リアの身体を弄る。そしてびくんと震え力を落とすリアの頭を片手で支えて、今度はこちらのターンだとねちっこく舌を突き入れた。


 そうして始まった情事。ウカノの力によって水分補給と栄養補給もしっかり行われた、儀式という名の乱騒は、翌日の朝、全員が力無く沈み意識を失うまで続いた。

つ、次の話のネタの霊圧が……消えた?

マルチバース編

20年後編

魔王リア編

と、構想だけ練ってはいたのですが、どれもオチが思いつかず……

幾つか小話を書きつつ、考えていこうと思います

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] クロエ……強かな子( ˘ω˘ ) [一言] 一矢報いた(ただし負け確) 魔王リア編…… 手前に(夜の)とか付いたら今回の一件でリアさんが目覚めちゃった感じだな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ